2019.03.29 Mar
更新日時:2020.02.26 Wed
太陽光発電の困った現象「ホットスポット」とは?原理や対策法を解説!
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太陽光発電で気を付けるべき現象に「ホットスポット」というものがあります。何らかの原因でパネルの一部が熱を持つ現象のことを指し、発電量の低下や火災のリスクに繋がります。
本記事ではホットスポットの原理やその原因、有効な対策についてくわしく解説していきます。
スマエネではその他にも、太陽光投資に関するお問合せを受け付けています。投資の検討や運用についてのご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問合せください。
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目次
1.太陽光パネルが局所的に発熱する「ホットスポット」。そのリスクとは?
「ホットスポット」とは、太陽光パネルが”局所的に発熱して高温になる不具合”、またはその”発熱した部分”を指します。
太陽光パネルが発電しているときの温度は、通常時で約50℃〜70℃程度、真夏の30℃を超えるようなときでは70℃〜80℃です。
80℃でも十分に高温に思えるかもしれませんが、例えば東芝の太陽光パネルの動作温度は-40℃〜85℃となっており、十分作動可能な範囲内です。
出所:東芝HP
ところが、「ホットスポット」の温度は100℃以上にもなります。
メーカーの定める動作温度から外れており、主に以下のような問題を引き起こします。
(1)発電量の低下を招く
ホットスポットは、何らかの理由で電気抵抗が大きくなり、電流が流れにくくなった場所に発生します。
つまり、ホットスポットとなっている部分は、何らかの原因で電流がロスしていることを意味します。その時点で、すでに通常より発電量が低下している状態です。
さらに、ホットスポットが深刻化すると太陽光パネルは故障して、発電機能を失ってしまいます。そうなるとそのパネル1枚だけの問題ではなくなり、ホットスポットが発生したパネルのある回路ごと発電不良に陥ってしまいます。
下のイラストを見てください。
このように太陽光パネルは、発電した電気を流すために1枚1枚ケーブルを繋いでパワーコンディショナーや接続箱に電気を集めています。
この1経路のことを、回路と言います。このシステムでは、①〜③の3回路があるということになります。回路を分けないほうがシンプルでわかりやすいですが、1つのシステムで複数回路あることが一般的です。
これは、1回路に入れられるパネル枚数に上限があることと、パネル枚数をバランスよくしたほうが電気的効率が良くなるためです。
では、ホットスポットが発生したときの電気の流れを見てみましょう。
ホットスポットが深刻化して発電機能を失ったパネルは、電流を流すこと(通電)ができません。そのため、そこまで発電した電気をせき止めることになります。そうなると、ホットスポットが発生した③回路は3枚分の発電量を損失してしまうのです。
(2)火災の原因になる
ホットスポットが招く問題は、発電量の低下だけではありません。最悪の場合、火災を引き起こすこともあります。
太陽光パネルがホットスポットで発熱して100℃を超える高温になれば、パネル自体が発火したり焼損してしまいます。実際にホットスポットが原因で、太陽光パネルが焦げたり燃えて穴が空いてしまった事例が報告されています。
出所:消費者庁「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書」
出所:NPO法人太陽光発電所ネットワーク「太陽光発電はメンテナンスフリーでない」
太陽光パネルは、燃えにくい難燃素材を使用したり構造上の工夫されているため、パネルの一部が燃えたとしてもパネル全体に燃え広がらないような対策がなされています。
しかしながら、太陽光発電設備が設置されている周囲環境によっては、発電設備自体が火災してしまうこともあります。
例えば、パネル上に落ちた落ち葉や溜まったゴミ、伸びた雑草などの燃えやすいものが火災の原因となります。燃えやすいものと高温なホットスポット部分が接触した状態で長時間放置されると、そこから発火し火災が発生、太陽光発電設備に火が移り燃え広がります。
また、木造住宅に太陽光発電設備が設置されている場合は、パネルの発火が原因で屋根材を燃焼して火災になる見解が消費者庁の資料で示されています。
火災になると太陽光発電設備を失うだけでなく、近隣の建物や土地に延焼することで損害賠償請求される可能性すらあり得ます。
このように、ホットスポットは発電量低下だけでなく、火災という事故にも繋がる危険性のある不具合なのです。
2.なぜホットスポットが起きてしまうの?
ホットスポットがどのようにして発生するのか、そのメカニズムと要因を解説していきます。
(1)ホットスポットのメカニズム
ホットスポットは、次のようなメカニズムで発生します。
①ある要因でセルの電気抵抗が大きくなる
②そのセルに他のセルの発電した電流が流れようとする
③抵抗を受けた電気の一部が熱エネルギーに変わる
イラストで説明していきましょう。
太陽光パネルは、小さな太陽電池セルの集合体です。
ひとつひとつのセルは、太陽光を受けると帯電し、繋がれた配線に電流を流します。
セル同士はちょうど一筆書きのように一本の配線で繋がれており、それぞれのセルが電流を隣のセルに次々と受け渡していくような流れとなっています。
さらに、パネルどうしも1本のケーブルで接続されています。
あるパネルから流れてきた電流は、次のパネルの最初のセルに受け渡され、すべてのセルをぐるっと経由して、まだ出口のケーブルから次のパネルへと流れていきます。
くねくねと曲がりながら1本の川が流れているようなイメージです。
このとき、なんらかの原因で電流が流れにくくなったセルがあると、全体の電流がその部分でせき止められてしまいます。
そして、無理やり流れようとする電流の一部は、熱エネルギーに変換されます。
こうしてホットスポットが生み出されるのです。
セルに電流が流れにくくなる原因には、外的要因と内的要因の2つがあります。
太陽光パネル以外に起因するものが外的要因、太陽光パネル自体が起因となるものが内的要因です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
(1)ホットスポットの「外的要因」…鳥のフンや落ち葉など
外的要因によるホットスポットは、主に影や付着した汚れがセルを覆うことで発生します。
これは屋外に設置される太陽光発電が、周囲環境の影響を受けやすいことに他なりません。たとえば、木や雑草などの植物、電柱やテレビアンテナなどの物体が遮蔽物となり、太陽光パネルに影を落とします。
また、カラスなどの鳥のフンや、木の落ち葉などが付着することもあります。雨で流れ落ちることがほとんどですが、場合によっては付着したまま残ってパネルの汚れとなります。
このような外的要因で覆われたセルは、太陽光が照射されないため発電できなくなります。そうすると、そのセルの電気抵抗が非常に大きくなり、結果的にホットスポットが生み出されます。
外的要因は、このように太陽光発電設備を設置した周囲環境に大きく左右されます。
(2)ホットスポットの「内的要因」…配線不良やクラック(ひび割れ)など
内的要因は、主に製造時の初期不良や経年劣化によるパネル内部の不良が原因です。
製造時の初期不良は、主にはんだ付け接続に問題があるために断線状態となり、電気の流れを止めてしまいます。メーカーも品質管理に最善を尽くしているとは言え、年間何百万、何千万枚と製造される中ではごく稀にそのような不良も発生してしまいます。
また、経年劣化でセル自体にヒビや割れが発生することでも、電気の流れをせき止めることもあります。経年劣化とは、長期間使用しているうちに徐々に進む劣化のことです。
太陽光パネルは、風や地震での揺れによるきしみやねじれ、湿気や温度変化による負荷などの影響を長期間受け続けるため、パネルの内部にクラックという小さなヒビや割れが発生するのです。
目には見えないマイクロクラックというヒビなので、気づかないことが多いですが、こういった小さなダメージの蓄積からもホットスポットは発生します。
3.ホットスポットによる事故を防ぐ方法は?
ホットスポットは肉眼で発見することが非常に難しいため、発生に気づきにくい不具合の1つです。そのため、なんの処置も施さないまま長期間放置されることが多いです。そうして徐々に症状が進行、結果としてパネルの焼損や火災などの事故を引き起こします。
では、発見の難しいホットスポットを防ぐためには、どのような方法があるでしょうか。
(1)電流の迂回ルートを作る「バイパスダイオード」
まず大前提として、太陽光パネル自体にもホットスポット対策の構造が組み込まれています。それが「バイパスダイオード」です。
バイパスダイオードは、電流の迂回ルートをあらかじめ作っておくことで、1つのセルが電流の流れを止めてしまっても、他のセルへの影響が出ないようにする構造です。
次のイラストを見てください。拡大部分の左側、セル同士の配線を飛び越えて接続されている回路がバイパスダイオードです。
【通常時】
黄色い矢印は、電流の流れを表しています。
特に異常がない場合セルからセルへ順番に電流が流れていくのは、通常と変わりません。
では、ホットスポットが発生し、ひとつのセルに流れる電流がせき止められた場合を見てみましょう。
【ホットスポットが発生したとき】
このように、電流がホットスポットを迂回(バイパス)し、正常なセルに合流することで、他のセルに影響をおよぼすことなく発電することができます。
自動車で例えると、一方通行の道で渋滞が起きた際に、横道を抜けて目的地に向かうイメージです。
このように、太陽光パネルメーカーもホットスポットによる発電効率低下や不具合への対策に取り組んでいます。
しかしながら、複数個所にホットスポットが発生した場合など、バイパスダイオードの許容できる電流の量を超えてしまう可能性もあり、万能とは言い切れません。
リスクを抑えるには、やはり定期的なチェックやメンテナンスが不可欠。
以降、自分でも実践できる方法を紹介していきたいと思います。
(2)毎日の発電量のチェック
最も簡単なのは、毎日の発電量を発電量モニターや遠隔監視システムでチェックすることです。
ホットスポットが発生すると、発電量が低下することは説明しました。
発電状況を把握することで、ホットスポットによる発電量の低下を察知できます。
ただし、小さなホットスポットによる発電量低下はそこまで大きくないため、天候の影響と見分けがつきにくいことがほとんど。
ホットスポットの発生というよりも、太陽光発電になにか異常がないか、全体的にチェックする意味合いが強くなります。
関連記事:太陽光の遠隔監視システムを「安いから」で選んではダメ!
(2)雑草処理や清掃をこまめに行う
ホットスポットの発生要因に、雑草による影や落ち葉、ゴミなどパネルに付着した汚れなどの外的要因がありました。
これらはホットスポットだけでなく、火災の要因にもなります。
特に冬場は空気も乾燥し、枯れ草も多くなるので要注意。
伸びた雑草は雑草刈りや除草剤の散布で手入れをし、パネルに蓄積した汚れはパネル洗浄を行うなど、こまめな対処を行いましょう。
(3)赤外線サーモグラフィーで発熱部分を探す
ホットスポットを肉眼で発見することは難しいですが、専用の機器を使えば発熱部分を探すことができます。その専用の機器が「赤外線サーモグラフィー」です。
「赤外線サーモグラフィ」を使うと、次の写真のように温度によって色が変わります。
出所:新栄電子計測器 株式会社「赤外線サーモグラフィの特長」
温度が低い部分は青く、高くなると徐々に緑から黄色に、そして高温部は赤く色が付きます。発熱部分がひと目でわかりますので、異常があるかを瞬時に判断、不良部分を早期発見することができます。
次の資源エネルギー庁のWEBサイトにある「太陽光発電チャンネル」では、赤外線サーモグラフィを使ったホットスポットの点検方法の動画をアップしていますので、興味のある方はチェックしてみてください。
(4)大規模設備はソコデスやソラメンテなど点検装置でチェック
赤外線サーモグラフィは便利ですが、大規模設備となると、1枚1枚チェックするのには大きな手間がかかります。
そういった場合に便利なのが、「ソコデス」や「ソラメンテ」などの点検装置です。
発電設備と接続することで発電不良や故障を発見することができるため、手間がかかりません。
ただし、費用がかかりますので、利用する際は収益への影響を十分に考慮しましょう。
(5)ドローンによるホットスポット検査も実用化へ
近年、話題になっているドローンも太陽光発電のメンテナンスに活用されています。赤外線カメラを搭載したドローンで太陽光発電パネルを撮影し、ホットスポットになった箇所を特定するのです。
通常、点検を行う際は太陽光発電設備の稼働を止めて行うことが一般的。そのため、点検中は発電・売電ができない状態になります。
しかし「ドローンで太陽電池を守る、空からホットスポットを検知し即日共有」の記事に書かれているように、ドローンで自動撮影することで、①太陽光発電設備を稼働したまま②赤外線サーモグラフィよりもずっと短時間で、検査を完了することができます。
4.太陽光パネルのホットスポット対策は定期メンテナンスから
ホットスポットは、太陽光パネルが局所的に発熱する現象で、発電量の低下に繋がる不具合です。さらにホットスポットが深刻化すると、最悪の場合は火災などの大きな事故に繋がる危険性があります。
安定した発電と安全な運用を続けるためには、やはり日々の発電量チェックや設備点検、定期的なメンテナンスなど、設備の維持管理は欠かせません。手間がかかるため敬遠しがちですが、長期的な運用だからこそ上手に付き合っていきましょう。
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