太陽光発電所が台風に被災したときの対策とは?正しい処置と保証をまとめて解説

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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災害大国といわれる日本において、自然災害といえば地震に次いで台風が連想されるのではないでしょうか。


屋外に設置される太陽光発電所も、もちろん台風被害の可能性があります。台風はその強烈な風雨によって、太陽光パネルの飛散・破損から発電所への浸水・冠水、土砂崩れなどを引き起こします。


もし太陽光発電所が台風に被災したときに、あなたは焦らずに対処する準備はできているでしょうか。


本記事では、台風被災時の安全かつ適切な処置と適用される保証など対応方法をまとめて解説していきます。

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1.太陽光発電所が台風に被災したときの最初の3アクション

台風

台風によって太陽光発電所が被災した可能性があるときに、最初に取るべきアクションは次の3つあります。

  • 太陽光発電所に近づかない
  • 太陽光発電所の電源を止める
  • 被害状況を確認する

どれも自分と周辺住民の身の安全を確保し、後々損をしないために押さえおきたいポイントです。

(1)台風が収まっても不用意に太陽光発電所に近づかない

なんといっても、まずは身の安全を確保することが最優先です。

台風が収まって外に出られるようになっても、不用意に太陽光発電所に近づかないようにしましょう。被害がないか確認するため現場を見たい気持ちはわかりますが、台風の被災状況によっては自らを危険にさらしてしまう可能性があります。

①ガラス片や金属片による怪我は特に注意

たとえば、散乱している太陽光パネルの割れたガラス片や破損した架台の金属片に接触して怪我をするといった状況が考えられます。

また、台風で太陽光発電所の敷地内が浸水・冠水していた場合は感電の恐れ、そして現場確認中に台風による影響が遅れて出て架台の倒壊等に巻き込まれる可能性も否定できません。注意していたとしても、生い茂った雑草や雨天で視界が悪ければ、そのような危険物を見逃してしまうこともあり得ます。

②遠隔監視システム等を活用して状況把握をすべき

まずは、発電量モニターや監視システム等で発電状況を確認し、太陽光発電設備に異常がないかを確認しましょう。もし設備に異常の疑いがあれば、危険にならない程度の距離から目視で確認、もしくは販売店や専門業者へ依頼するなど、なるべく安全に配慮した行動を心がけてください。

関連記事:太陽光の遠隔監視システムを「安いから」で選んではダメ!

(2)台風で被害を受けたら太陽光発電所の電源を止める

太陽光発電所が台風で被災していた場合、太陽光パネルの飛散や架台の破損だけでなく、配線ケーブルの断線といった被害もあります。そのような状態で放置していると、漏電による火災や近寄った周辺住民の方が感電してしまうなど、2次災害に繋がる可能性が出てきます。

そういった被害状況が明らかであれば、2次災害を防ぐために太陽光発電所の電源を止めるのが賢明です。低圧の太陽光発電所の場合、電源は以下の順番で落とします。

電源を止める順番
1.主幹ブレーカー
2.パワーコンディショナ
3.集電箱
4.接続箱
5.アレイ

電源を落とす順番を間違えてしまうと、住宅内の家電製品の故障や火災に繋がる可能性もあるため、注意しましょう。アレイに関しては、太陽光パネルが発電しないようにダンボールやブルーシートなどで発電面を覆う、太陽光パネル同士のコネクタを抜くといった対応が必要になります。

このような電源停止の作業も、基本的には販売店や専門業者、場合によって消防などに依頼するのが安心です。

ただし、もし自分で作業をしなければならない場合は、感電防止のためにゴム製など絶縁性の手袋や長靴、肌を露出しないなど、装備を整えて作業をするようにしましょう。

(3)太陽光発電設備の台風による被害状況を確認する

発電設備の安全を確保できた段階で、発電モニターでの発電状況と併せて被害状況を目視で確認しましょう。

もちろん、上記で述べたような怪我や感電防止対策を行なったうえで、安全に十分配慮して行います。できれば、なにか起こったときのために一人ではなく複数人で行くようにするのがおすすめです。

①状況把握後は早急に保険会社へ報告を

被害状況をおおよそ把握できたら、状況に応じて加入している保険会社へ電話などで報告を行いましょう。

被害状況を確認する際には、被害状況がわかるような写真を撮影しつつ、保険会社の調査が入るため危険がない限りは撤去等の作業はまだ依頼しないようにしましょう。撤去してしまうと、補償されるはずだったものが問題なしと判断されて適用外と見なされる可能性もあります。

いずれにせよ、保険会社に報告した際に撤去についても併せて相談しておくのが無難です。

また、周辺住民の方に2次被害が及ばないように、進入禁止の張り紙などで警告を促すのも忘れずに実施しておきたいところです。

2.台風で損害を受けた太陽光発電所に適用される保証

パネル

太陽光発電に関する保証サービスは、多岐に渡ります。

ただし、台風で損害を受けたときに補償が適用されるものは限られています。また、損害の種類によっても適用される保証サービスが変わる場合があるため注意が必要です。

損をしないように、それぞれの保証の特徴と適用範囲を正確に把握していきましょう。

(1)台風損害は太陽光発電メーカー保証の対象外

太陽光発電には、無償の太陽光発電メーカー保証が備わっていることが多いです。

メーカー保証は、主に次の4つがあります。

保証サービス 提供会社 保証内容
システム保証 太陽光発電メーカー

太陽光パネル、パワーコンディショナ、接続箱、架台などシステム一体での保証。

保証期間は、10年もしくは15年が一般的で、15年は有償のメーカーもある。

製品保証 太陽光発電メーカー

太陽光パネルやパワーコンディショナ等の製品個別の保証。

保証期間は、製品ごとに異なるが、10〜15年程度が一般的。

出力保証 パネルメーカー

太陽光パネルの出力を、最大公称出力に対する既定割合まで一定年数、担保する保証。(10年90%、20年80%など)

保証期間は、20年もしくは25年画一般的で25年は有償のメーカーもある。

施工保証 施工会社

漏電や太陽光パネルの落下、住宅用なら雨漏りなど施工不良が起因となった損害の保証。

保証期間は、10〜15年が一般的。

基本的にどの保証も瑕疵保証であり、メーカーの定める基準内で通常利用している中で不具合や故障が発生した場合に、無償で製品の修理・交換等をしてくれます。

一方で、損害起因が製品や施工自体の問題でなければ、補償は適用されません。つまり、台風など自然災害による損害補償は免責で対象外となっています。

ただし例外として、架台の強度不足などメーカー設計ミスや施工会社の施工不良等によって台風で被害を受けた場合は補償対象となります。

とはいえ何が起因で被害を受けているかを公平に判断することは、技術的にも立場的にも難しいため、保険会社など第三者に判断してもらう形にしましょう。

(2)台風損害の補償なら「自然災害保険」一択

台風などの自然災害による損害に備えるのであれば、自然災害保険が最も適した選択です。

自然災害保険は、太陽光発電メーカーや保険会社で用意されている有償の保険サービスで、台風を含めた自然災害による損害補償をしてくれます。太陽光パネル、パワーコンディショナ、架台など主要な設備は基本的に保証対象となっています。

①太陽光パネルの飛散や破損以外の損失もカバー

台風であれば、強風による太陽光パネルの飛散や架台の破損、外部からの飛来物による破壊や倒壊、水災などの損害を補填してくれるでしょう。さらに台風以外にも、ひょう災や落雷、竜巻などの自然災害もカバーしているものなど、サービスによって補償範囲はさまざまです。

自然災害保険の保証期間は、メーカーのシステム保証と同様に10〜15年が一般的となっています。

②自然災害保険に申請する際のおおまかな流れ

台風による損害発生後の、自然災害保険の申請の流れはおおむね次のとおりです。

自然災害保険の申請手順(会社により違いはあるため注意)
1.被害状況を保険会社に報告
2.保険会社の現地調査もしくは写真等による被害状況の確認
3.修理費用を立て替えて設備修理を実施
4.請求書や事故報告書等、必要書類を提出
5.保険会社による審査
6.審査通過で、立て替え費用が補填

(3)太陽光発電ならではの休業補償保険もある

自然災害保険があれば、台風によって損害を受けても修理等で原状復帰にかかる費用補償をしてくれるため安心です。しかしながら、台風で太陽光発電所が被災して稼働が止まっている間に得られるはずだった売電収入の損失分までは補填してくれません。

そういった場合に役立つのが、休業補償保険です。休業補償保険は、その売電収入の逸失利益を補填してくれる保険で、売電収入補償特約という形で自然災害保証にオプションとして付けられるタイプもあります。

ただし、自然災害保証と同様に月額費用が発生するため、加入に関しては費用対効果をよく検討してからにしましょう。

(4)太陽光発電設備が台風で対物・対人事故を起こしたら

台風被害の中で、自然災害保険と休業補償保険でも補償が適用されないものがあります。それが、太陽光発電設備の機器が第三者の身体、もしくは所有物へ被害を与えてしまった場合です。

わかりやすい例でいえば、台風の強風で飛散した太陽光パネルが、周辺住民や近隣の住宅、自動車などに衝突して怪我や破壊してしまった場合は、保証対象外となります。

このような状況を保証してくれるのが、賠償責任保険です。賠償責任保険の保証年数や賠償限度額などは、サービスによって異なります。

上記で紹介した保険サービスをまとめると、以下のようになります。

保険サービス 保証対象 保険内容
自然災害保険

太陽光パネル

パワーコンディショナ

接続箱等の太陽光発電の設備機器

故障・破損等の損害を受けた設備機器を、原状回復するために必要な修理・交換・工事にかかる費用を補填する。

休業補償保険 太陽光発電の売電収入

太陽光発電が故障・破損したことによって売電できない状態に陥った場合に、本来は売電にて得られたはずの逸失利益分を補填する。

賠償責任保険 第三者の身体および所有物

太陽光発電の設備機器が原因で、第三者の身体および所有物へ被害を与えた場合に、その損失について補償する。

この3つの保険サービスへ加入していれば、台風によって被災をしてもかなりのケースで損害をカバーできて安心です。

また、このような保険サービスはソーラーローンやO&Mなどメンテナンスサービスに付帯できる場合もあります。

3.台風被災後の太陽光発電設備の対応

パネル

台風によって太陽光発電設備が被災したときの最初のアクションと、保険会社への対応がわかりました。

最後に、被災後にどのような後処理が必要となるのかを確認していきましょう。

(1)破損部材の撤去回収と設備の修理・再設置

保険会社への報告が無事に終了すれば、台風で被害を受けた太陽光パネルや架台などの破損部材を業者に依頼して撤去回収してもらいましょう。破損した部材をそのまま放置しておくと、前述したように怪我や感電など重大な事故に繋がる可能性があります。

①修理や再設置は当初依頼をした施工業者がおすすめ

撤去回収が終わって作業できる環境が整ったら、太陽光発電設備の修理や再設置を施工業者に依頼します。このとき、依頼する施行業者は最初に設備を設置した施工業者の方が、都合の良い場合が多いです。

別の施工業者へ変更すると、最初の施工業者の施工保証が適用されなくなったり、メーカーの施行IDを保有しておらずシステム保証の適用外になったりする恐れがあります。加えて、施工業者が撤去回収も併せて実施してくれる場合もありますので、いずれにせよ購入した販売店や施工業者へ一度相談するのがおすすめです。

②撤去した部材の処分時は廃棄方法を要確認

また、撤去回収された部材の処分にも注意が必要です。太陽光パネルは種類にもよりますが、鉛やセレン、カドミウムといった有害物質が含まている場合もあります。そのため、適切な方法で処分・廃棄しなけばなりません。

ただ、太陽光発電はまだ廃棄実績が少ないため、廃棄業者に正しい処分方法が情報連携されていないことが多いのが実情です。

また、以前は技術的に難しかったのですが、太陽光パネルのリサイクルが可能になっています。太陽光発電協会が、「適正処理(リサイクル)の可能な産業廃棄物中間処理業者名 一覧表」という表で、リサイクル可能な業者をエリア別にまとめて公開していますので、参考にしてみてください。

4.太陽光発電所の台風被害対応は安全への配慮と心構えから

台風による太陽光発電所の被災は、いつ発生するか想定することが難しい問題の1つです。

被災状況によっては、自分はもちろん周辺住民など第三者に被害を与えてしまう可能性がありますし、適用される保険サービスも変わります。被災後には安全に十分配慮した行動が求められますが、そのためには被害発生前から被災を想定した心構えが必要です。

普段から定期点検などメンテナンスで被災リスクを抑えながら、正しい知識をつけて被災にあっても安全かつ適切な行動を行えるよう準備を行っておきましょう。

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