【2020年版】産業用太陽光発電とは?仕組み・費用・メリットなどを一挙解説

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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FIT制度により、安定利益が期待できる産業用の太陽光発電は、投資対象として非常に魅力的です。その安定感は、多くの投資家から「空室のない不動産投資」と呼ばれるほどです。


しかし、浅い理解のまま産業用の太陽光発電を始めても、成功する可能性は高くありません。そこで今回は、投資家が事前に覚えておくべき、産業用太陽光発電の基礎知識についてご説明します。

スマエネの「物件を探す」に掲載している物件情報では、運用にかかる具体的なコスト・収入をシミュレーションシートにまとめて、どれほど利益を得られるのか解説しています。

希望する価格・利回り・立地を入力するだけで、理想に近い物件をピックアップできるので、本記事とあわせてご参照ください。

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1.産業用太陽光発電とは?

パネル

産業用太陽光発電は、「10kW以上の太陽光発電所」をもちいた発電事業を指す言葉。住居の屋根に取り付けるタイプではなく、野立て・工場の屋上などに取り付けるタイプの発電設備が、産業用の太陽光発電所です。

ここでは、産業用太陽光発電の概要について説明していきます。

(1)産業用太陽光発電の初期費用はどれくらい?

まずは、産業用太陽光発電の初期投資にかかる費用の額や内訳、実際の物件の相場を確認していきましょう。

①産業用太陽光発電の初期費用はおよそ1,500〜2,000万円

産業用太陽光発電を始めるためには、1,500〜2,000万円ほどの費用が必要となります。これは、太陽光パネルのほか、架台やパワーコンディショナなどの諸設備に多額のコストがかかるからです。

住宅用の太陽光発電所に比べてスケールが大きいため、初期費用はどうしても高くなりますが、後述するFIT制度との兼合いから「投資目的であれば産業用太陽光発電」ほぼ一択となります。実際にスマエネで掲載している物件をもとに、初期費用の内訳を確認してみましょう。

②スマエネに掲載されている物件を紹介

それでは、実際にスマエネに掲載されている物件をご紹介します。ここでは、新築物件のうち「システム容量が50kW未満」の低圧物件を選びました。

理由としては、個人投資家が産業用の太陽光発電所に投資する場合、投資コストと投資利益のバランスに優れている低圧物件に投資するケースが多いからです。

なお、システム容量は「太陽光パネルの容量」と「パワーコンディショナの容量」のうち、小さい方の数値が採用されます。50kW以上の太陽光パネルを持っている紹介物件が、いずれも低圧物件に分類されているのは、パワーコンディショナの容量が50kW未満であるためです。

まずは、熊本県芦北郡に建設される低圧の太陽光発電所です。

熊本県芦北郡の低圧物件
設備価格 1,584万2,592円
消費税(10%) 158万4,259円
土地金額 59万円
販売価格(税込) 1,801万6,851円
表面利回り 9.5%
太陽光パネルの容量 98.9kW

次に、静岡県浜松市にある太陽光発電所施設を確認していきましょう。

静岡県浜松市の低圧物件
設備価格 1,336万3,636円
消費税(10%) 133万6,364円
土地金額 200万円
販売価格(税込) 1,670万円
表面利回り 10.5%
太陽光パネルの容量 89.3kW

先ほどの物件も、こちらの物件も、最初に土地を購入する形態となっていますが、なかには土地を借りるケースもあります。全ての場合において、土地金額を一括で負担するわけではなく、分割で支払うケースもある点に留意してください。

このように、産業用の太陽光発電所は、低圧の案件であっても初期費用が1,500〜2,000万円ほど必要です。

(2)住宅用太陽光発電との違い

産業用太陽光発電と住宅用太陽光発電の違いは、主に以下の通りです。

産業用太陽光発電 住宅用太陽光発電
容量(出力) 10kw以上 10kw未満
設置場所 遊休地やビルの屋上など 住宅の屋根
FIT制度の適用年数 20年 10年
売電方法 全量買取と余剰買取を選択可能 余剰買取

投資対象として比較したとき、大きな違いとなるのは「FIT制度の適用年数」です。FIT制度(固定価格買取制度)とは、発電した電気の買取価格を保証する制度。

産業用の太陽光発電であれば、FIT制度は住宅用の2倍にあたる20年のあいだ適用されます。また、住宅用太陽光発電は、発電した電力のうち「自家消費したあとの余剰電力」を買い取ってもらう余剰買取しか選べません。

一方、産業用太陽光発電の場合は、発電した電力を全て買い取ってもらえる全量買取と、余剰買取の選択が可能です。こうした違いから、自家消費をメインにするなら住宅用、長期的に投資目的で売電を行うなら産業用の太陽光発電が選択されます。

2.産業用太陽光発電に投資するメリット

メリット

産業用太陽光発電に投資をするメリットは、主に2つ。

産業用太陽光発電に投資する2つのメリット
FIT制度により20年間の安定利益を得られる
自家消費により有効活用が可能

それぞれ、順番に確認していきましょう。

(1)FIT制度により20年間の安定利益を得られる

前述した通り、住宅用におけるFIT制度の適用期間は10年であり、電力を全て売却できる全量売電を選べないことから、経済的なメリットは産業用の太陽光発電に軍配が挙がります。

また、20年のあいだ安定利益を確保できる点は、株式投資や不動産投資にはない強みです。実際、株式投資や不動産投資は、常に以下のようなリスクにさらされています。

株式投資のリスク
景気動向、企業業績の悪化により株価が変動する。
不動産投資のリスク
空室リスク、家賃滞納による賃料収入の低下が懸念される。

一方、産業用太陽光発電は、FIT制度によって売電時の価格が一定に保たれており、取引先は電力会社であるため支払いの滞納リスクも低いです。

(2)投資だけでなく自家消費による設備の有効活用が可能

産業用の太陽光発電所で発電した電力は、自家消費としても活用できます。実際に、自社のオフィスや倉庫、工場などの電力として利用されるケースも増えてきました。

また、発電した電気を自家消費することで、以下のようなメリットがあります。

自家消費によるメリット
電気料金そのものが削減できる
災害時の非常用電源として利用できる
税の優遇制度を利用できる

自社に利用する電力を自家消費で補うことで、電力会社から購入する総電力量が減り、電気料金を節約できます。年々、電気料金は上昇傾向にあるため、近年では売電より自家消費の方が経済的メリットを得やすいケースもあるようです。

また、自家消費用の発電施設があれば、災害時に停電が起こったとしても、自家発電で事業継続を行える可能性が高まります。

そして、中小企業や個人事業主が自家消費の発電施設を設置し、所定の条件を満たした場合は「中小企業経営強化税制」を利用することで、法人税や所得税などの負担の軽減が可能です。このように、発電した電気の自家消費には、多くのメリットがあるのです。

3.産業用太陽光発電に投資するデメリット

デメリット

次に、産業用太陽光発電のデメリットについて解説していきます。主なデメリットは2つ。

産業用太陽光発電に投資する2つのデメリット
初期費用が大きくローンの利用がほぼ必須
FIT価格の低下・FIT制度の終了が懸念される

産業用太陽光発電を始めるときは、メリットだけでなくデメリットを理解したうえで始めましょう。

(1)初期費用が大きくローンの利用がほぼ必須

産業用太陽光発電は、初期費用が高額となるため多くの方がローンを組んで始めています。ローンを利用するには、金融機関による審査に通過しなければなりません。

ただし、すでに多くの借入をしている場合、返済や何らかの支払いを滞納していた場合は、借入を断られる可能性があります。また、金融機関にローンの審査を申し込むときは「事業計画」の提出が必要となり、借入金を問題なく返済できるのだと金融機関にアピールしなければなりません。

ローンの利用により「少ない自己資金でスケールの大きな投資ができる」という側面はあるものの、入念な返済計画を立てる必要がある点に注意しましょう。

(2)FIT価格の低下・FIT制度の終了が懸念される

もともと、FIT制度は日本のエネルギー問題を解決するために発案されたもの。FIT制度による売電価格の保証は、国民から「再生エネルギー発電賦課金」を徴収することで成り立っているため、ある意味では国民全体の負担になっているのです。

こうした背景により、増え続ける国民負担を食い止めるため、FIT制度の終了はかねてより検討されていました。そして、制度を「FIP制度」へ切り替えるとともに、FIT制度を廃止することが検討されてきたのです。

なお、FIT制度の認定を受けた投資案件は、FIP制度に切り替わったあとも認定年度のFIT価格が適用されます。つまり、2019年時点で掲載されている物件は、FIP制度の影響を受けることなく20年のあいだ固定価格で売電できるため、安定利益を狙う投資家は早々に物件探しを進めてください。

FIP制度の詳細は、スマエネの記事「太陽光発電のFIT制度が終わる!?2020年には関連法が改正される見込み」にて解説しています。

4.産業用太陽光発電はどのような投資家におすすめ?

投資家

ここまで説明してきた点をまとめると、産業用太陽光発電は、これからご紹介するような投資家におすすめです。

(1)リスクを抑えて資産運用をしたい人

産業用太陽光発電は、FIT制度によって20年間の安定利益を確保できるため、できる限りリスクを抑えた資産運用を希望する方におすすめです。

すでに一通りの失敗パターンは洗い出されており、投資効率を高める「過積載」のようなノウハウが確率されているため、限りなく低リスクで資産運用を始められます。

(2)少ない自己資金でレバレッジをかけて投資したい人

デメリットとして挙げたローンの必要性は、見方を変えれば「自己資金を使わず投資ができる」のだと捉えられます。

投資の世界では、このように少ない自己資金で投資を行い、リターンを最大化する手法を「レバレッジ」と呼びます。そして、金融機関からローンを借りられる投資は、太陽光投資と不動産投資に限られるのです。

つまり、自己資金が少ない状況下で、スケールの大きい投資をスタートさせるなら、太陽光投資は数少ない有力な選択肢だといえます。

(3)土地を所有している人

すでに保有している土地を活用すれば、土地探しの手間が省略できるほか、必要に応じて自力でメンテナンスができます。さらには、土地金額の負担軽減にもつながり、投資面でのメリットは数知れず。

このように、土地を保有している場合は太陽光発電所の導入・維持のハードルが下がるため、投資を始めるうえで最適な環境下にあるといえます。

5.長期投資を考えるなら産業用太陽光投資は有力

産業用太陽光発電は、住宅用太陽光発電と比較してFIT制度の適用期間が長く、安定した収益を長期間に渡って得られます。全量買取と余剰買取の2種類から、自分にとってよりメリットの大きい方を選べる点も魅力的です。

一方で、産業用太陽光発電は初期費用が高額になるため、ローンの利用がほぼ必須。FIT価格が年々低下しており、制度自体が終了する可能性がある点にも注意が必要です。

これらのメリットとデメリットをよく理解したうえで、ぜひ産業用太陽光発電にチャレンジしてみてください。

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