太陽光投資家の義務である「O&M」とは?内容を具体的に解説

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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いざ太陽光投資を始めると、どこからか聞き慣れない言葉がいろいろと耳に入ってくるようになります。その中のひとつに「O&M(オーアンドエム)」というものがあります。なんだか業界用語っぽいので、素人には取っ付きにくい言葉ですよね。


しかし、この「O&M」をしっかりやらなければ、太陽光投資が水の泡になると言っても過言ではないほど非常に大事なことなのです。


ここでは太陽光投資に不可欠な「O&M」について、分かりやすくポイントに分けて解説しています。十分に理解していただき、有意義な太陽光投資ライフを送ってください。

「太陽光発電所のメンテナンス・運用経費は、どのくらいかかるのだろう?」という疑問は、シミュレーションシートを使えば一目で分かります。

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1.太陽光投資に不可欠な「O&M」とは?

「O&M」とはOperation(オペレーション)& Maintenance(メンテナンス)の略称で、機械設備などの運転の維持管理や、保守保全の業務を指した業界用語です。

代表的なものに、マンションなどのビルメンテ会社が請け負うO&M業務や、オフィス用の複合機のメーカーや販売会社によるO&M業務などがあります。このように、主に商業目的として扱われる機械設備の保守や、維持管理業務の呼称として覚えておくと良いでしょう。

比較

2.「O&M」の目的について

太陽光投資における「O&M」の目的は、大きく分けて2つあります。1つは「長期にわたり安定的な電力量を発電するため」。2つめは「機械トラブルや自然災害による二次災害を未然に防止するため」です。

(1)長期にわたり安定的な電力量を発電する

太陽光投資家にとって、日々どれほど発電しているかはとても気になるところですね。天候条件が良いにもかかわらず、想定をはるかに下回る発電しかされていなかったらどうでしょうか?

太陽光発電設備は、太陽光パネルをはじめパワーコンディショナなどの機械設備や配電線によって構成されています。何もせず放置した状態でこれらすべての設備が、日がな一日、年がら年中にわたり完璧に稼働する保証はどこにもありません。世の中のどんな機械設備にせよ、故障やトラブルなどの問題はいつも背中合わせです。

また、設備が正常でも台風や大雪による停電など、外的要因のせいで発電が停止する可能性も十分に考えられます。そのため、長期にわたって安定した発電量を確保するためには、定期的な保守点検や緊急対応が必要になるという訳なのです。

(2)機械トラブルや自然災害による2次災害を防止

もしも何らかの原因で、パワーコンディショナや配電線に漏電が起きて発火してしまったら…。発電の停止はもちろんのこと、近隣へ被害を与えてしまう恐れが十分に考えられるでしょう。また、台風などの強風によるパネルの吹き飛びや大雨による土砂の流出などによって、第三者に二次災害を及ぼすことも想定できます。

このような事態を未然に防止するためにも、O&Mの業務は大きな役割を果たします。O&Mには上記のように大きく2つの目的がありますが、いずれにせよ太陽光投資が投資家にとって本当に有益なものとなるため、O&Mはなくてはならない業務だといえるでしょう。

3.「Operation(オペレーション)」の具体的な内容とは

Operation(オペレーション)は直訳すると「操作」や「運転」を意味しますが、太陽光投資のO&Mにおけるオペレーションとは「運営・運転の管理業務」のことを言います。

一般的に太陽光投資のオペレーションには、以下のような2つの要素が含まれます。

オペレーション

(1)太陽光発電の監視・管理(日次・月次・年次)

オペレーションの基本的な内容は、日々の発電状況を監視・管理し月次や年次ベースで整理をすることです。

①太陽光発電所の異常をいち早く察知できる

発電の監視や管理はとても重要です。設備の外観や天候を見ているだけでは、あなたが投資した太陽光発電設備が想定通りに電力を生産しているかどうかは分かりません。パネルやパワーコンディショナに何ら問題が見当たらなくても、設備のどこかに支障があれば「生産されるべき十分な電力」が得られないという事態が起こってくるのです。

一方、正常に発電している時の発電量を把握しておけば、異常をいち早く察知して損失を最小限にとどめることができます。

②太陽光発電所の発電率低下の証拠データとなる

また、太陽光パネルの品質が悪かったことが原因で著しく発電量が低下した場合、メーカーの「出力保証」を適用して無償交換を請求することができます。

しかし、その場合にはパネルに欠陥があることを証明するために、現在と過去の出力データを比較検討する資料を準備しなければなりません。とはいっても、日々の発電量の確認や異常検知のために、人を現地に常駐させて監視するわけにはいきませんよね?

③太陽光発電所の監視・管理には遠隔監視システムが最適

そこで、このような発電量のデータ確認や管理には通常、「遠隔監視システム」と呼ばれる監視通信システムを活用します。パワーコンディショナ内に設置された「計測装置」が、1時間毎の総発電量を計測し「遠隔監視装置」という通信装置を通すことで、発電所のオーナーやO&M会社によって監視・管理ができるシステムです。

また、ほとんどの「遠隔監視システム」には、計測装置が何かしらの異常を検知した際に、登録したメールアドレスやデバイスに通知する機能が備えられているので、もしもの時も即時に対応できるようになっています。

この「遠隔監視システム」の機能はメーカーによって様々ですが、基本的なデータ管理や通知機能についてはどのメーカーのシステムにも対応しています。

(2)発電に障害があった際の緊急対応

「遠隔監視システム」からの通知や、それ以外の手段によって発電設備の異常が分かれば、損失を最小限に食い止めるための対応や対策を講じなければなりません。

もちろん、異常に気付かない状態で放置しておけば、損失は毎秒ごとに増大していくことになります。原因が何であれ、またどんな事象であれ、素早く対応し現状復旧することもオペレーションとしての重要な役割となるのです。

例:遠隔監視システムから分かりづらい積雪による発電量低下

分かりやすい例として「積雪による発電量の低下」があります。深夜から朝方にかけて降った雪が太陽光パネルに積もってしまい、電力を生産しきれない事態が発生すること。これは十分に想定できる事態です。パネルやパワーコンディショナなどの設備は正常なので、当然「計測装置」は異常として検知せず、「遠隔監視システム」からは異常通報がされません。

降雪が終わり、日光が差し出したにもかかわらず、パネル一面に雪が堆積した状態を放置したままでは、雪が溶けて発電が再開するまでかなりの日数がかかってしまいます。しかし、適時に発電量を確認し管理がされていれば、このような事態にも即時に対応することができ、損失を最小限に抑えられます。

このようにオペレーションの役割とは、発電量のデータ管理を通して長期にわたり安定した運用ができるようサポートすることなのです。

4.「Maintenance(メンテナンス)」の具体的な内容とは

「メンテナンス」という言葉はよく耳にするので、イメージができる方も多いでしょう。ここでは、太陽光投資に焦点をあてた具体的なメンテナンスについて解説していきます。

メンテナンスもオペレーションと同様に、大きく分けて2つの要素があります。1つは「設備の定期点検と修繕」、もうひとつは「用地の点検と改善」です。

メンテナンス

(1)太陽光発電所の設備の定期点検と修繕

太陽光投資とは、太陽光パネルをはじめとする機械設備に、すべての生産工程を託した「無人ビジネス」です。

20年間の買い取り期間を有効に活かし、安定した高い収益を得るためには、これらの機械設備が常に健康な状態でなければなりません。そのためにも、機械設備が少しずつ病に侵されていないか、定期的な健康診断が必要になってきます。

メンテナンス業務でもっとも大切なことは、太陽光発電の機械設備を定期的に点検することです。人間の定期健診や自動車の車検と同じです。O&M会社では通常、半年もしくは1年に1度の割合で点検を実施し、オーナーに報告書を提出します。

点検の内容はO&M会社によって様々ですが、一般的には下記のような項目を点検します。

①太陽光パネルの状態

太陽光パネルのチェックリスト
パネル表面や枠にひび割れが起きていないか
パネル表面に著しい汚れや飛散物が落ちていないか
パネルと架台はしっかり固定されているか

②パワーコンディショナなどの機械の状態

パワーコンディショナなどのチェックリスト
異常運転の有無
外部からの衝撃による損傷がないか
防水処理などに不備が発生していないか
フィルタの目詰まり

③配電線の状態

配電線のチェックポイント
ケーブルや端子の損傷や劣化状況

④電気的な点検

電気的な箇所のチェックリスト
電流が正常な電圧で流れているか
漏電が発生していないか、アースは正常にとられているか
パネルは正常に発電しているか

⑤架台や支柱などの状態

架台や支柱などのチェックリスト
固定用のボルトやネジに緩みがないか
外部からの衝撃などによる損傷がないか

点検の結果によっては、修繕や交換が必要だとO&M会社が判断する場合があり、オーナーに内容を説明し、決断を仰ぐこともあります。

人間も年をとるにつれて体にガタが出てくるのと同じ様に、機械設備もガタが出てきます。これは避けられない事実です。

しかし、定期点検や適切な修繕を行うことでトラブルの発生を防ぐことができ、大きな損失を被るリスクがなくなります。

(2)太陽光用地の点検と改善

発電に支障をきたす要因は、何も機械設備のトラブルだけとは限りません。

夏や秋口になると、発電施設の敷地内には雑草が生い茂るようになってきます。これら雑草の影がパネルにかかってしまうと発電の障害になってしまいます。

①影を放置すれば1枚のパネルから連鎖的に影響を与える

太陽光発電は設計の構成上、1枚のパネルに影がかかることで、そのパネルと連係している数枚のパネルにも影響を与えてしまうことになります。「パネル1枚分だけだから大丈夫」では済まされないのです。そのため、安定した発電量を生産させるために雑草の除去は、用地メンテナンスとしてとても大切な業務のひとつとなります。

②大雨から盗難まで幅広いメンテナンスが必要

また、近年多発しているゲリラ豪雨などの大雨によって、敷地内の土砂が流出してしまうことも想定されます。近隣とのトラブルに発展する恐れがあるため、このような事態が起きないように整備しておくこと。また、もしも起きてしまった場合には即時に適切な対応をすることも重要なメンテナンスです。

さらに、敷地内に関係者以外の者が侵入しないように、フェンスや看板が適切に設置されているかのチェック。不法投棄やイタズラなどによる被害を未然に防止する対策も、O&Mのメンテナンスに含まれます。

5.O&Mを怠ると太陽光発電所の認定が取り消される

長期間に渡り安定して電力を生産させるという意味で、O&Mの必要性は分かっていただけたと思いますが、他にもO&Mが必要である理由があります。

それは、経済産業省が太陽光発電事業者(発電設備の所有者)に対して、O&Mを義務付けているという理由です。この義務を怠ると、最悪の場合「固定買取制度(FIT)の認定が取り消されてしまう」といった深刻な事態になりますので、しっかりとその内容について理解しておきましょう。

(1)経済産業省が太陽光発電事業者へのO&Mを義務化

電力の固定買取制度(FIT)を管轄する経済産業省が太陽光発電事業者に向けて、制度認定に関する法律を改定しました。俗に、『改正FIT法』と呼ばれています。

2017年4月1日から履行されたこの『改正FIT法』はこれまでのFIT法とは異なり、太陽光発電における事業計画書をガイドラインに従って作成し、申請しなければFIT認定が受けられないようになったのです。そのガイドラインには「企画・立案」「設計・施工」「運用・管理」「撤去・処分」の項目があり、この「運用・管理」の部分がO&Mにあたるという訳なのです。

(2)O&Mを実施して経済産業省に年1回の報告が必要

発電事業者はこの計画に沿って「運用・管理」を行っていることを年に1回、経済産業省に報告しなければなりません。報告は50kW未満の低圧物件であれば電子申請画面に入力することで済むので、さほど難しいものではありませんが、この報告を怠ると経済産業省から督促されます。なお、報告しないままだと最悪の場合、FITの認定が取り消されてしまいます。

いつまでに、どのように報告をするべきなのかを契約しているO&M会社に相談し、後に慌てないように準備しておくと安心ですね。

6.太陽光発電の一般的なO&M会社のサービス内容

O&M会社によって取り扱うサービスは様々ありますが、ここでは一般的に取り扱われているサービス内容や価格の相場について、また優良なO&M会社を見分けるポイントなどについて触れていきます。

(1)O&Mサービスのメニューについて

通常、O&M会社が取り扱うサービスは先述したように、基本的なオペレーション業務とメンテナンス業務がセットされた内容となっています。

オペレーション業務は、「遠隔監視システム」を活用した発電量データの管理と、緊急時の駆け付け対応です。メンテナンス業務は半年もしくは年1回毎の定期点検と修繕業務です。修繕業務は部品の交換などが必要になる場合、別途費用がかかります。

草刈り作業や雪下し作業、パネルの洗浄作業などは、基本のサービスメニューに含まれていないことが多く、オプションメニューとして準備されています。

(2)O&Mの価格相場について

各O&M会社のサービス価格を見てみると、契約期間によって変動しますが、概ねkWあたり1,500円前後が相場のようです。50kWの発電所であれば、年間で約75,000円前後です。

O&Mに費やす予算は、年間の売上額のおよそ3%~5%が適切と言われています。売電単価が36円の50kW発電所で、年間約240万円の売り上げであれば、年間7万円~12万円の範囲で予算を組んでも良いということになります。

しかし、当然ながら売電単価が低くなると年間の売上額も低くなりますので、O&M会社から見積りを取った際は必ず、年間の売上見込み額と照らすようにしましょう。

(3)優良なO&M会社を見つけるためのポイント

いざO&M会社を探そうとすると、数多くの会社が独自のサービスをPRしており、どの会社が良い会社なのか見分けがつかず迷ってしまいます。

そこで最初のステップとして、発電所を施工した会社がO&M業務を行っていないか確認してみましょう。施工した会社であれば設計図はもちろん、発電所のあらゆる部分まで熟知しているので安心して任せられます。また、不良箇所が発見された場合に「施工責任がたらい回しにされない」というメリットもあります。

もし、施工会社がO&M業務を請け負っていない場合は、以下のポイントを参考に選びましょう。

ポイント

これらのような要素を持つO&M会社であれば安心して依頼することができ、また太陽光発電に関する様々な疑問点にも正しい回答が得られ、今後の展開のヒントにもなることでしょう。

7.太陽光発電のO&Mを依頼する時の注意点

初めてO&M会社と契約する際、いくつか注意しておきたい点があります。

(1)O&Mの契約期間は短めに設定する

まず1点は、契約期間です。固定買取期間は20年間ありますが、O&M会社と初めから20年間の契約を結んでしまうことはなるべく避けるようにしましょう。

なぜなら、仮にその会社の業務内容が満足できない内容だった場合、身動きが取れず困ってしまうからです。即、契約を解除して別のO&M会社と契約できれば良いのですが、場合によっては契約解除するための違約金が発生することもあります。

可能ならばO&M会社との契約は、1年毎の自動更新で依頼するようにしましょう。

(2)安価で低品質なサービスでないか見極めが必要

2点目は価格です。相場よりも安価であることを強調するO&M会社もあります。

基本的に、安価であることは好材料なのですが、「安かろう悪かろう」では本来のO&Mの目的に沿うことができず、安定した収益を損なう結果を招いてしまいます。

もちろん、利回りを圧迫するほどの高い価格では投資の意味がありませんので、会社選びはしっかり吟味することが大切です。

関連記事:太陽光投資の利回りの罠!失敗しないために押さえる7つのこと

8.太陽光発電所を安全に運用するならO&Mは必須

太陽光投資においてO&Mがいかに重要なことであるか、十分に理解していただけたと思います。経産省への年次報告は簡単にできるので、人によってはO&Mの業務自体を軽んじている方もいますが、その考えはとても危険です。

長く安定した収益を生み有意義な投資物件にするためにも、優良なO&M会社としっかり連携し健全な運営を目指していきましょう。

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