太陽光発電スタートまでの手続き2つをステップバイステップで解説

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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太陽光発電は、土地を用意できたらすぐ設置できるわけではありません。設置をして売電するためには認可が必要になるため、踏まなければならないステップがあるのです。


手続きというと、どうしても面倒くさいイメージがあるかもしれません。しかしながら、手続きを疎かにしてしまうと、狙っていた買取価格に間に合わないという事態にもなりえます。


本記事では、このステップでつまずかないように、太陽光発電スタートまでの手続きの流れを解説していきます。

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1.太陽光発電の設置に必要な手続きは大きく2つ

手続き

太陽光発電を設置するためには、多くの手続きを要するといった印象を持つ方もいるかと思います。しかし、太陽光発電で必要な手続きは、実は2つしかありません。

それが、「電力需給契約申請」と「事業計画認定申請」です。それぞれ、別々の申請先に申請を行う必要があります。

1つずつ、その内容とどのような書類が必要なのかを見ていきましょう。

(1)太陽光発電における「電力受給契約申請」とは

「電力受給契約」は、太陽光発電で発電した電気を買い取ってもらうために電力会社と結ぶ契約です。もう少し具体的にいうと、電力会社が所有する電柱や電線などの送配電網と太陽光発電設備を接続し、発電した電気を電柱や電線に電気へ逆潮流するための契約です。

もちろん、申請先は管轄の電力会社になります。逆潮流とは、売電をするために通常の買電とは逆側に電気を流し込む必要があるために、そう呼びます。

①どうして電力需給契約申請をするの?

通常、電気の流れは送配電網➞家という一方向しかできません。そのため電力受給契約を結んで、太陽光発電➞送配電網と逆潮流ができるよう電力会社に設定してもらうのです。

電柱や電線などの送配電網のことを総称して系統というので、「電力受給契約申請」のことを「系統連系申請」ともいいます。

②電力受給契約申請に必要な書類

電力受給契約の申請に必要な書類の種類や書式は、電力会社ごとに異なります。

東京電力を例に挙げると、以下の6種類の書類が必要となります。

電力受給契約申請に必要な書類
系統連系協議依頼票

主にパワーコンディショナの機器仕様を記入する書類。工事内容について周囲環境の状況や設備の設置概要を確認するために提出する。

単線結線図 太陽光発電システムの各機器の配線関係がわかるように、簡易的な図で表す書類。
付近図、構内図 太陽光発電設備がどのような場所に設置されるのか、電柱との位置関係はどうなっているのかを示す図を記載した書類。
ELB仕様の分かる資料 ELBは、漏電ブレーカー(漏電遮断器ともいう)のこと。そのELBの機器仕様を記入する書類。
認証証明書の写し パワーコンディショナの安全性を示す書類で、いわゆるJET証明書のこと。すべてのパワーコンディショナは、このJET(電気安全環境研究所)にて認証を得なければならない。
保護機能の整定範囲及び制定値一覧表 パワーコンディショナのより詳細な機器仕様を示す書類。こちらもJET認証書と同様に、メーカーHPで公開されている。

(2)太陽光発電における「事業計画認定申請」とは

申請書

「事業計画認定申請」は、国に太陽光発電の事業を行うことの認可をしてもらうための申請です。申請先は、経済産業省の資源エネルギー庁です。

2017年にFITが改正される前までは、「設備認定申請」という名称で運用されていました。名称が変わったのは、審査する対象が太陽光発電の「設備」から「事業」という観点に変わったためです。FIT制度の導入によって太陽光発電が急激に普及した反面、再生可能エネルギー賦課金の負担の増加や認定済太陽光発電の未稼働という問題が浮き彫りになってきました。

そのため、ただ単に設備を設置するのではなく、維持メンテナンスや廃棄に至るまでの一貫した事業として、計画性のある太陽光発電へ認可を出す方針となったのです。「事業計画認定申請」となったことで、このような名称や制度に対する考え方だけではなく、申請時に必要な書類も変更になっています。

①事業計画認定申請に必要な書類

事業計画認定の申請で必要な書類は、以下の10種類です。設備認定申請で必要だった書類とは異なりますので、注意しましょう。

事業計画認定申請に必要な書類
戸籍謄本もしくは住民票 太陽光発電の設置をする事業者自身を証明する、戸籍謄本か住民票の提出が必要。
申請者の印鑑証明 事業計画認定の申請者の印鑑証明が必要。
土地の取得を証する書類 自己所有であれば登記謄本、他者所有であれば登記謄本と権利者の印鑑証明に加えて、賃貸借契約書・地上権設定契約書・権利者の証明書のいずれかが必要。
建物所有者の同意書類 自己所有の場合は、建物の登記謄本・建築確認済証と売買契約書もしくは請負契約書・土地の登記謄本のいずれかが必要。他社所有の場合は、建物の登記謄本・建築確認済証のいずれかと、建物所有者の同意書と印鑑証明が必要。
野立ての太陽光発電は、屋根上の設置ではないので必要ない。
構造図 太陽光発電の設備がどのような機器で構成され、どういった形で系統へ接続されているかを図示する書類。
配線図 太陽光発電の設備が、どのような配線で接続されているかを図示する書類。
接続の同意を証する書類の写し 管轄の電力会社に、太陽光発電を接続して良いと許可されたことを証明する書類。
事業実施体制図 太陽光発電事業を実施する、事業者名から保守点検責任者といった事業体制を明記した書類。
関係法令手続状況報告書 事業の実施に際して、主に土地や環境面で抵触する可能性のある関係法令の手続き状況を示す書類。
委任状 業者の方に代行申請してもらう場合に必要。

登記謄本など公的な書類は、原則として発行した3ヶ月以内である必要があるため、取得時期には注意が必要です。

関連記事:太陽光発電における土地探しのポイント&売電開始までの5ステップ!

(2)2018年12月から太陽光発電所の運用ルールが変更に!

ルール

2017年4月にFIT法が改正されスタートした「事業計画認定申請」ですが、2018年9月に資源エネルギー庁より運用ルールの変更が発表されました。

これによって、10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電は、2018年12月1日より運用ルールが変更になっています。大きく変わったのは、以下の2点です。

  • 申請時に接続同意書の提出が義務化
  • 認定までの審査の目安期間が1ヶ月延長

いずれも以前よりも認定までの期間が長くなり、申請不備等による影響が大きくなります。それぞれの具体的な変更点を、確認していきましょう。

(1)申請時に接続同意書の提出が義務化

接続同意書とは、電力需給契約申請をして太陽光発電と系統の接続許可を認められた場合に電力会社から提示される書類です。接続同意書の提出が事業計画認定申請時に必要ということは、電力受給契約申請が完了してからでなければ事業計画認定申請へ進むことができないということです。

以前は、電力受給契約申請と事業計画認定申請は並行して進めることができました。すると、事業計画認定の審査を途中まで進ませておいた状態で、電力受給契約申請の審査が完了した段階で接続同意書を提出できます。そのため、事業計画認定申請の審査時間を節約ができました。

しかしながら、この運用ルール変更でいままで節約できていた事業計画認定申請の審査期間がまるまる必要になってしまいました。そのため、最終的な認定取得までの期間が長くなります。

ただでさえ審査に時間のかかっている事業計画認定申請ですので、電力受給契約申請が通らない案件にまで時間を掛ける余裕が無いためでしょう。

(2)太陽光発電所の認定まで審査の目安期間が1ヶ月延長

たいていの行政機関への申請には、審査が終わり認定や許可が得られるまでの目安期間が設定されています。この目安期間を「標準処理期間」といいます。

あくまで目安なので、行政機関は「標準処理期間」までに回答を提示する義務はありません。

しかし太陽光発電の事業計画認定申請は、標準処理期間を超えるような状況が1年以上に渡って続いていました。標準処理期間は1〜2ヶ月と示されているにもかかわらず、3ヶ月から長ければ6ヶ月もかかるような事例もありました。

このような実態との乖離を解消するため、標準処理期間を3ヶ月と変更したのです。つまり、実態としてかかる審査期間は大きくは変わっていません。

3.太陽光発電スタートまでの手続きをイラストで解説

電力受給契約申請と事業計画認定申請それぞれの内容が明らかになったところで、手続き全体の流れを把握していきましょう。

2018年12月の運用ルール変更を踏まえると、以下のような流れになります。

図

まずは、電力受給契約の申請からスタートします。そこで接続契約を締結できれば電力会社より接続同意書を取得でき、その接続同意書をもって、事業計画認定の申請を行います。

そして、事業計画認定が認定された時点で、晴れて売電価格が決定するのです。事業計画認定が認定されたことを知らせる認定通知書に記載されている日付が、売電価格の適用される日付となります。

事業計画認定申請が認可された後も、売電が実際にスタートするまで電力会社との手続きは続くので注意が必要です。

事業計画認定後に行う特定契約は、売電に関する正式契約です。接続契約はあくまで、太陽光発電と系統を接続することを約束するもので、売電の仮契約のような状態です。

そして、太陽光発電の設置工事が完了した段階で、系統連系を行います。系統連系は、電力会社、事業者、施工者の3者が立ち会いのもと設備に問題がないかをチェックします。

ここまで完了してはじめて、売電をスタートさせることができるのです。

①中小企業かつ自家消費型であれば「中小企業経営強化税制」も要検討

また、この他の手続きとして「中小企業経営強化税制」があります。太陽光発電を設置・売電するために必須な手続きではないものの、「中小企業経営強化税制」に申し込むことで税額控除や即時償却など税制上の優遇を受けることができます。

中小企業かつ自家消費型であることが条件ですが、当てはまる方は検討してみるのも良いでしょう。

関連記事:自家消費型太陽光発電を検討する企業が増加中!どんなメリットがあるの?

4.スムーズな手続きでいち早く売電をスタートしよう

太陽光発電を始めるために必要な手続きは、設置の認可として経産省に申請する「事業計画認定申請」、そして売電の認可として管轄の電力会社に申請する「電力受給契約申請」の2つがありました。

2018年の12月より運用ルールが変更され、電力受給契約申請の認可が下りてからでなければ事業計画認定の申請を行えないという点には注意が必要です。いずれの手続きも、滞りなく審査が進んだとしても数ヶ月単位の時間がかかります。

狙った年度の売電価格を確保するためにも、入念な事前準備でスムーズに手続きを行い、可能な限り早いタイミングで売電をスタートしましょう。

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