2019.06.30 Jun
更新日時:2019.12.22 Sun
太陽光発電のFIT制度が終わる!?2020年には関連法が改正される見込み
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太陽光発電投資は、FIT制度により長期的に安定した利益が得られる投資です。
しかし今、このFIT制度が終了する見込みであることがニュースで報じられています。FIT制度がなくなってしまったら、太陽光発電投資はどう変わってしまうのでしょうか?
今回は、FIT制度終了後の新制度や、それによって太陽光発電投資がどう変わるのかについて説明していきます。
目次
1.経済産業省が太陽光発電のFIT制度終了を検討
2019年6月12日、日本経済新聞の「太陽光発電の買い取り終了へ 入札制度で価格競争促す」の記事で、太陽光発電のFIT制度が終了することが報じられました。これは太陽光発電設備が増えたことにより、消費者の負担も増加していることが原因です。
今後、新たに認定を受ける10~50kWの太陽光発電所は、全量売電が終了して余剰売電に切り替わり、50~100kWの太陽光発電所は新しい制度が導入される運びとなりました。
ここでは、FIT制度の終了に伴う変更内容について説明していきます。
(1)FIT制度の終了により買取価格はどう変わる?
これまで全量売電の対象であった10~50kWの太陽光発電所は、電力を自家消費したのちに余剰分を売電する「余剰売電」に変更。2019年度までに認定された投資案件のみ、従来通り全量売電が継続されることになりました。
出所:経済産業省「中間取りまとめ(案)補足事項」
住宅用太陽光発電と同様に、認定時に「自家消費計画」の提出を求められるほか、災害時に「外部電源を使わず稼働再開できる構造」が前提条件として盛り込まれる見込みです。
こういった変更により、全量売電を新規で始める場合の選択肢は、2019年度までに認定を受けている新築・中古案件に限られてしまいます。
なお、すでに全量売電で認定を受けている施設が、全量売電を強制終了されるわけではない点にご留意ください。
(2)50kW以上の買取価格は検討中!入札制になる可能性もあり
50kW未満の対応は検討が固まっている一方、50kW以上に関して2019年12月時点では未定のまま検討中です。
しかし、経済産業省の資料に以下のような文言があることから、従来は500kW以上にのみ適用されていた「入札制度」の導入も検討されていると伺えます。
出所:経済産業省「地域活用電源に係る制度のあり方 」
入札制度のうち有力な変更内容の候補は、発電した電気の販売先を自社で見つけるか、電力卸市場で売電するというもの。
後述する「FIP(フィード・イン・プレミアム)制度」を踏襲した制度になることが予想されています。
出所:日本経済新聞「太陽光発電の買い取り終了へ 入札制度で価格競争促す」
販売先を自社で見つけて売る場合、売電価格は購入する企業との交渉によって決まります。電力卸市場で販売する場合は、その時々の市場の状況によって価格が変化します。
市場価格が高いときは良いのですが、安いときは太陽光発電事業者に損失が出てしまうでしょう。そこで、電力卸市場での売電価格が基準価格を下回った場合は、国が太陽光発電事業者に不足分を補填する形がとられるようです。
出所:日本経済新聞「太陽光発電の買い取り終了へ 入札制度で価格競争促す」
ただし、この補填は全ての太陽光発電事業者が受けられるわけではありません。各事業者が基準価格の入札をし、落札した事業者だけが補填を受けられるのです。
太陽光発電事業者たちは、自社設備の発電コストを考慮して、基準価格の候補を出します。経済産業省は、提示された基準価格が安い方から順に、一定数の事業者を認定します。
認定を受けた事業者たちは、国から市場価格と基準価格の差額が補填される仕組みです。この入札は、数ヶ月おきに定期的に実施されるようです。
2.太陽光発電における海外の先例はどうだったのか
日本より早くFIT制度を取り入れた諸外国では、すでに再生可能エネルギーの市場統合を目的とした「FIP制度」に移行しています。
複数種類あるFIP制度は、いずれも電気を電力卸市場などに販売した場合、国が「プレミアム(割増価格)」を上乗せするという方式の制度です。
FIT制度の終了とともにFIP制度を導入すれば、太陽光発電事業者が電気を電力小売事業者、または電力卸市場に売却することを引き続き促せます。
(1)海外で採用されているFIP制度の種類
FIP制度には、以下3つの方式があります。
- プレミアム固定型FIP
- プレミアム固定型FIP(上限・下限付)
- プレミアム変動型FIP
出所:日経XTECH「FIT抜本見直し、市場ベースの「FIP」軸に議論へ」
各方式によって、それぞれ上乗せされるプレミアムの額や、太陽光発電事業者が最終的にもらえる額が異なります。ここでは、それぞれの方式について、一つずつ説明していきます。
①プレミアム固定型FIP
「プレミアム固定型FIP」では、プレミアムの額が固定されています。市場価格が高いか安いかにかかわらず、同じ額のプレミアムが上乗せされます。
②プレミアム固定型FIP(上限・下限付)
「プレミアム固定型FIP(上限・下限付)」も、通常のプレミアム固定型FIP同様、プレミアムの額は固定です。ただし、上限・下限付の方式では、市場価格にプレミアムを足した額の上限と下限が決められています。
市場価格にプレミアムを足した額が、規定された上限額を超えた場合、超えた部分はカットされ、太陽光発電事業者には上限額が支払われます。一方で、市場価格にプレミアムを足した額が規定の下限を下回った場合、不足分が補填され、太陽光発電事業者には下限額が支払われる仕組みです。
③プレミアム変動型FIP
「プレミアム変動型FIP」は、プレミアムの額が市場価格に応じて変動する方式のFIPです。
プレミアム変動型FIPでは、市場価格とプレミアムの合計額が規定されています。市場価格が規定の額に届かない場合、規定額から市場価格を引いた額がプレミアムとして支払われます。市場価格が規定の額を超えた場合は、プレミアムは支払われません。
(2)日本でも、今後FIPの採用が検討されている
日経XTECHの「FIT抜本見直し、市場ベースの「FIP」軸に議論へ」の記事によれば、経済産業省が「IEA(国際エネルギー機関)」からプレミアム固定型FIP(上限・下限付)の採用を提言されたことが報じられています。
そのため、今後の日本でのFIP制度の導入は、プレミアム固定型FIP(上限・下限付)で検討される確率が高そうです。
3.従来のFIT制度はどのようなものだったのか
ここで、従来のFIT制度がどのようなものかについても説明していきましょう。
FIT制度とは、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定期間、固定価格で買い取るという制度です。産業用太陽光発電の場合、買取期間は20年間です。
1kWhあたりの売電価格は、売電権を得た年によって異なります。FIT制度が始まった2012年の1kWhあたりの売電価格は、40円でした。
以降は以下のように、年々売電価格が安くなっています。
- 2012年…40円
- 2013年…36円
- 2014年…32円
- 2015年…29円
- 2016年…24円
- 2017年…21円
- 2018年…18円
- 2019年…14円
※太陽光発電設備の容量が10~500kWの場合
FIT制度では、売電権を得た年の買取価格がずっと適用されます。つまり、2012年に売電権を得た場合は1kWhあたり40円で、2019年に売電権を得た場合は14円で20年間電気を買い取ってもらえるのです。
これまでFIT制度が抱えていた課題点
FIT制度の最大の問題点は、太陽光発電設備が増えることで、国民の負担も増えていくという点です。なぜなら、FIT制度によって電力会社が再生可能エネルギーの発電事業者に支払う費用は、電気の使用者である国民から集められているからです。
電気の使用者が支払う電気料金には、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ発電賦課金)」という項目があります。これは、各電力会社が発電事業者から電気を買い取るために徴収しているお金に他なりません。
FIT制度が始まってから、太陽光発電投資を始める事業者の数は、どんどん増えていきました。その結果、電気の総買取費用が高くなり、国民の負担額も増えているのです。
讀賣新聞オンラインの「太陽光発電の買い取り終了へ…「市場取引」導入検討」の記事によれば、2019年度の再エネ発電賦課金の総額は2兆4,000億円にのぼる見通しとなっているようです。これでは、国民から不満の声があがるのも当然だといえるでしょう。
電力市場との隔離も問題に
先ほども説明したとおり、FIT制度では、太陽光発電事業者は電力会社から固定価格で電気を買い取ってもらい、そのお金は主に国民によって賄われています。この関係の間に市場原理が働いていないことも、FIT制度の問題点です。
本来であれば、発電事業者と電気の小売事業者が直接電気の売買をするのが自然な形のはず。この形なら、電気の使用者である国民が、再生可能エネルギーを買い取るためのお金を支払う必要はありません。
現に、太陽光発電の先進国では、先ほど紹介したような入札制度を採り入れて、国民が負担するコストの低減を図っています。
4.全ての太陽光発電所がFIT制度終了になるわけではない
FIT制度の最大のメリットは、買取価格と買取先が決まっていることから、安定した収益が得られるという点にありました。
一方、先ほどのような入札制度が正式に採用された場合、オーナー自身で電力の販売先を見つけたり、入札に参加したりする必要性があります。
つまり、これまでと違って、良い取引先を見つけるための経営努力や、同業他社との競争が必要になってくるのです。そのため、太陽光発電投資を検討している方のなかには、「FIT制度が終了するなら、投資を始めるのはやめておこう」と思った方もいるかもしれません。
しかし、FIT制度が終了する前に太陽光発電投資を始めるのなら、その心配はいりません。なぜなら、FIT制度が終了しても、それまでに太陽光発電投資を始めていた事業者たちは、変わらずFIT制度のもと売電できるからです。
先ほども説明したとおり、FIT制度は固定価格で、一定期間電気を買い取ってもらえる制度です。FIT制度が終了したからといって、それまで固定価格で売電していた事業者にまで新制度が強制されるわけではありません。
そのため、なるべく手間をかけずに太陽光発電投資をしたいという方は、2019年のうちに始めるのがおすすめです。
5.まだ太陽光発電への投資に魅力はあるの?
ここまで説明してきたとおり、太陽光発電投資は2012年にFIT制度が始まって以降、大きな変化を遂げてきています。FIT単価は年々下落し、とうとうFIT制度も終了しようとしています。
このような状況において、太陽光発電投資をすることに果たして旨味があるのかと、疑問に思っている方もいるかもしれません。そこで、FIT制度の終了前と終了後、それぞれのケースにおいて、これから太陽光発電投資を始めることの魅力について説明していきます。
(1)FIT制度終了前の太陽光発電投資の魅力
先ほども説明したとおり、FIT単価は年々下がってきており、2019年に太陽光発電投資を始めても、1kWhあたりの売電価格は14円にしかなりません。しかし、今から始めたからといって、売電価格が高かった頃に比べて損をするわけではありません。
なぜなら、売電価格が高かった頃は、太陽光発電の物件の価格ももっと高かったからです。売上額が高くても、設備の購入費用が高ければ、利益は少なくなってしまいます。
現在はFIT単価も安いのですが、物件の価格も以前よりグッと安くなっています。そのため、FIT単価が安いからといって、数年前に購入した人より損をすることはありません。
太陽光発電投資を始めるうえでは、どうしてもFIT単価に目が行きがちですが、重要なのは投資額に対する利益の割合である「利回り」です。多くの太陽光発電の物件では、年間の利回りは10%前後となっています。
これは、安定して利益を上げられる投資としては、かなり良い数字です。年間の利回りが10%なら、初期費用は10年で回収でき、残り10年の売電価格から運用経費を引いた額が利益になる計算です。
FIT制度の終了前であれば、太陽光発電投資はまだまだ魅力的な投資だといえるでしょう。
(2)FIT制度終了後の太陽光発電投資の魅力
2020年は、FIT制度の終了が見込まれているとともに、システム費用のコスト低減が予想されています。
2019年11月に公表された「太陽光発電・風力発電について」によれば、コストの目安は出力1kWにつき13.5万~15.4万円になる見通しです。
これは前年度より最大2万円/kWほど安価な水準です。そのため、コストを抑えつつ太陽光発電設備を導入したい場合は、FIT制度の終了後にもチャンスがあるといえます。
6.太陽光発電を投資目的で始めるなら「いま」がベスト
太陽光発電投資の要ともいえる、FIT制度の終了がいよいよ現実味を帯びてきました。経済産業省では、2020年にFIT制度を終了し、新たな入札制度の関連法を改正する方針のようです。
FIT制度は、太陽光発電事業者にとってメリットが大きくなるように作られた法律だといっても過言ではありません。そのFIT制度が終了になれば、太陽光発電事業者にとってのダメージは計り知れません。
とはいえ、FIT制度が終了しても、それまでに設備認定を受けていた太陽光発電事業者は、これまで通り固定価格で電気を買い取ってもらえます。これから始める事業者も、FIT制度が終了する前に設備認定を受ければ同様です。
そのため、太陽光発電投資を始めようと思っている方は、2019年のうちに始めるのがベストだといえるでしょう。
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