太陽光発電投資の「2019年問題」とは?売電価格など今後の動向を解説

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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太陽光発電は、FIT制度(Feed-in tarriff: 固定価格買取制度)によって安定した収入のある投資商品として注目されてきました。しかしながら、1km/hあたりの電力価格は年々下落しているため、売電収入は減少傾向です。さらに、2019年を境に固定買取期間が終了する「2019年問題」と呼ばれる問題も懸念されています。


そのような状況下で、2019年でも太陽光投資をして儲けを出せるのか、投資商品としてまだまだ検討の余地があるのか気になるところでしょう。関連情報が多く出てきているため、情報の取捨選択、そして整理をしたうえで正しい知識を把握しておきたいところです。


そこで本記事では、太陽光発電が2019年現在置かれる環境と収益性、そして2019年度以降の動向について詳しく解説していきます。

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1.太陽光発電の「2019年問題」とは?

パネル

まず、「2019年問題」とはどんなものなのか、その概要をこの章で解説していきます。

(1)2019年以降、電力の固定買取期間が順次終了していく

家庭用太陽光発電によって生産された電力は、FIT制度により売電価格を10年間保証される制度です。

FIT制度が始まったのは2009年。そのため、10年が経った2019年から、この保証期限を過ぎる家庭が初めて現れることになります。その後の売電価格等が不透明であることから、この問題は「2019年問題」と呼ばれているのです。ただし、売電価格の保証がなくなったとはいえ、買取り自体が直ちにゼロになるわけではありません。固定買取価格よりも低くなるとは予想されるものの、契約する電力会社が設定した価格で売電を行うことになります。

(2)買取りが終わった後はどうなるの?

FIT制度の保証期間を過ぎた後に、どのような制度が導入されるのか、まだ正式には決定されていません。

しかし、2019年9月に産経新聞が報じた「経産省、大規模再生エネ促進 固定買い取り→市場価格上乗せ」という記事によると、FIT制度が終了した後の後継制度として、FIP(Feed-in premium)制度を軸とした制度設計が進められるとされています。

FIP制度とは、再生可能エネルギーの発電事業者が売電を行う際、「電力卸市場価格にプレミアム分として割増価格を上乗せして販売できる」という買取方式です。このFIP制度では、売電量や市場価格によって上乗せされる金額が変わってくるという特徴があります。そのため、FIT制度の固定価格が保証される期間を過ぎた後は、FIP制度によって契約する電力会社へ売電を行うか、電力を自家消費することが見込まれます。

関連記事:FIT制度の終了後どうなる?太陽光発電投資と制度の今後を解説!

2. 売電価格は下落傾向…2019年の太陽光投資の動向

一方で、家庭用でない、いわゆる産業用・投資用の太陽光発電においても、2019年を節目として変化が生まれようとしています。その動向を本章で簡単に解説していきましょう。

(1)FIT価格は14円台に。下落は続く見込み

産業用太陽光発電のFIT価格は、FIT制度がスタートした2012年度に設定されていた40円から毎年段階的に引き下げられ、2018年度では18円まで下落していました。

そして、2019年度のFIT価格はそこからさらに4円安くなって、14円という設定となっています。この1年での下落率は、約22%です。

2017年度が約13%、2018年度は約14%なので、これまでの下落傾向と比べてみても2018年度から2019年度の下落率は、かなり大きくなっていることがわかります。

年度 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
FIT価格 40円 36円 32円 29円

27円

24円 21円 18円 14円

このように、FIT価格が大幅に下落となった背景として経済産業省が示した理由は、「増加する再エネ賦課金による国民負担の低減」や「世界と比べるとシステム費用が高いこと」、そして「既に10円/kWh未満で事業を行っている事業者が存在すること」を挙げています。

(2)入札制度の範囲も拡大

2019年度におけるFIT制度の変更点は、実はFIT価格だけではありません。入札制度の対象となる、「システム容量の適用範囲」も変更となりました。

2018年度までは、入札制度の対象はシステム容量が2,000kW以上の太陽光発電となっていました。ところが、2019年度からはシステム容量が500kW以上の太陽光発電に関して入札制度が対象となるように適用範囲が拡大しています。

このように適用範囲が拡大された背景には、そもそも入札制度を導入した理由である競争原理が、2018年度では上手く働かなかったと判断されたからでしょう。2018年度に入札制度が実施されたのは、上期に2回、下期に1回でした。上期に行われた2回にいたっては、入札されたシステム容量が募集していたシステム容量を下回っていたのです。

また、上記で挙げた「第5次エネルギー基本計画」で示されたように、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーは日本のエネルギーミックスの主力電源となる必要があります。そのためにもさらなるコスト低減が求められることになるため、適用範囲は今後も拡大される見通しが高いと言えます。。

(3)さらに2020年度以降はFIT終了の可能性も?

FIT制度がスタートした際、時限付き制度であるとともに2020年度末までに抜本的な見直しを行う旨が明示されていました。その方針のとおり、経済産業省が2021年以降の制度設計について現在議論が進めています。

実際に、産業用太陽光発電でのFIT制度運用は終了する方針である旨が、2019年6月に報道されました。

FIT制度の主たる終了理由は、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーの急速な普及に伴った再エネ賦課金の国民負担の増加、そして出力抑制等の系統制約のためとされています。

もちろん既に売電をスタートしている、もしくはFIT認定を取得済の太陽光発電は、FIT制度が終了してもそのまま契約時のFIT価格・買取期間で、売電を継続できるので安心してください。

3. 買取価格が下がっても、太陽光発電はまだ儲かる!

このような条件下で、太陽光発電投資は2019年から始めたとしても、これまでと同様に利益を出すことはできるのでしょうか。

実際に売電収益のシミュレーションをしつつ、確かめてみましょう。

(1)太陽光発電の設置費用は年々安くなっている

これまで説明してきたように、近年FIT価格は急速に安くなっています。その背景として、調達価格等算定委員会が2019年1月に明確化した「中長期価格目標の見直し」の存在を無視することはできません。委員会では世界の急速なコストダウンの実績や日本の将来のコスト低減を見通し、そしてトップランナーの事業実施の現状を踏まえ、目標の見直しが議論されました。

結果として、2030年までの価格目標として発電コストを7円と設定されていたところを、5年前倒し他2025年までに目指すことが明確化されています。発電コスト7円というのは、買取価格に換算すると8.5円相当となります。

図

出所:経済産業省 資源エネルギー庁「平成30年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2019)

FIT価格が年々安くなっている最中、太陽光発電投資がこれまで継続してきたのはなぜでしょうか。

それは、太陽光発電の設置費用自体も年々安くなっており、事業を始めるのに必要な投資額が抑えられているためです。

以下のグラフは、産業用太陽光発電のシステム費用の推移を表しています。

図

出所:調達価格等算定委員会「平成31年度以降の調達価格等に関する意見

産業用太陽光発電全体で見ると、2012年度の設置費用の平均は42.1万円/kWhでしたが、2018年度には28.6万円/kWhと、7年間でおよそ32%も設置費用が安くなっています

これほどまでにコスト低減が進んでいる理由のひとつとして、太陽光発電が急速に普及したことによるスケールメリットがあります。また、そもそもFIT価格が想定の設置費用をもとに決定されている点も大きいポイントでしょう。

FIT価格は、調達価格等算定委員会で議論されて決定されていますが、その年度までの設置費用を調査したうえで、翌年度に想定される設置費用を算出。投資回収が可能で事業が成り立つようなFIT価格を設定しているのです。

①2019年度の設置費用はどのくらい?

2019年度の太陽光発電の設置費用の市場相場は、調達価格等算定委員会で以下のとおり示されています。

図

出所:調達価格等算定委員会「平成31年度以降の調達価格等に関する意見

ここでいうシステム費用には、太陽光発電の機器および工事にかかる費用が含まれています。そして、土地造成費は土地の整地にかかる費用、接続費は電力会社の系統接続時の負担金を指しています。

また、運転維持費は定期的な点検や修繕等にかかる費用で、毎年費用が発生すると想定されています。

以上をまとめると、

「18.2万円/kW+0.4万円/kW+1.35万円/kW=19.95万円/kW」が2019年度に想定される初期費用であり、以降継続して年間0.5万円/kWの費用がかかっていくことになります。

②太陽光発電の設置費用の内訳

太陽光発電の設置にかかる費用としては、具体的に大きく以下の3種類があります。

費用項目 内容
太陽光発電の機器費用 太陽光パネル、パワーコンディショナ、配線ケーブル、架台など太陽光発電システムの構成部材を購入する費用
太陽光発電の工事費用 上記機器の組立て・設置・工事にかかる費用
申請や手続き代行費用 各種制度の申請や手続きを販売業者等に代行してもらう際にかかる費用

太陽光発電の設置費用と聞くと、太陽光発電の機器費用のみだと思いがちですが、実際には工事費用や各種制度の申請、手続き代行費用も発生するので注意が必要です。

また、工事費用は、単純に太陽光発電を組み立て設置する費用だけではありません。土地の凹凸やレベルを合わせるための整地や、コンクリートや杭を使った基礎工事など、設置する土地や周辺環境に応じてそのような工事も必要となります。

申請や手続き代行費用に関しては、事業計画認定や電力会社との電力需給契約、公的機関などの補助金制度の申請や手続きが主たるものです。

もちろん、ご自身で申請や手続きを進める場合は代行費用は発生しません。ただ、申請を進めていくためには、書類も多く内容も複雑で専門的なものがほとんどです。

基本的には、販売業者に代行してもらうのをおすすめします。またこのような代行費用は、販売業者によって設置費用に含まれている場合と含まれていない場合があります。

各費用の内訳を明確にしたうえで、契約へ進むようにしましょう。

(2)実際の売電収入はどのくらい? 2019年度設置の収益をシミュレート!

2019年度の太陽光発電投資を始めるために必要な投資額がわかったところで、実際に収益シミュレーションに入っていきます。

①2019年度の売電収入シミュレーション

収益シミュレーションに入るためには、まず売電収入のシミュレーションの算出が必要です。

以下のような太陽光発電を例に進めます。

項目 数値
システム容量 72kW
太陽光パネル総出力 96kW
過積載率 133%
FIT価格(2019年度) 14円/kWh
FIT期間 20年間

年間発電量を詳細に算出するためには、NEDOの日射量データベースを用いて設置エリアをもとに年間日射量を算出する必要があります。ただ、ここでは簡単な目安として、システム容量を1200倍した数値を基準とします。

今回の場合は72kWを1,200倍した86400kWhが、年間発電量の大まかな数値となります。

つまり、この物件の年間売電収入は86400kWh✕14円/kWh=120.96万円。20年間の総収入は120.96×20=2419.2万円と概算できます。

ただし、こちらの金額はあくまで概算値ですので、実際にシミュレーションする際は、上記を踏まえつつ、さらに細かく計算するようにしてください。

関連記事:日射量から発電量を計算!太陽光発電のセルフシミュレーション法

②2019年度の収益シミュレーション

さて、次に設置費用を算出し、収益と利回りについて確認していきましょう。

前章で、2019年度における設置費用は、1kWあたり19.95万円が目安となっていました。

それを元にシステム容量72kWの設置費用を計算すると、72kW✕19.95万円/kW=1436.4万円という金額が計算できます。

ただ、今回の例では、システムの容量よりも太陽光発電パネルを多く積んだ、いわゆる過積載の形をとっていますので、追加となる96kWー72kW=24kW分の太陽光パネルの費用も考えなければなりません。

調達価格等算定委員会の「平成31年度以降の調達価格等に関する意見」によれば、2018年のシステム費用の内訳は下記の通りとされています。

図

上図から、太陽光パネルの価格をシステム費用の約40%と仮定しましょう。

2019年度の想定システム費用18.2万円/kW×40%=7.28万円が、太陽光パネル1kWあたりにかかる費用だと概算できます。

そこから過積載分の太陽光パネル24kWぶんの費用を算出すると、7.28✕24=174.72万円。

さきほどのシステム容量72KWの設置費用と合算すると、初期投資費用は1436.4万円+174.72万円=1,611.12万円となりました。

 

さて、表面利回りは、「収入総額(売電収入)÷投資額(初期費用)÷投資年数×100」という式で計算できます。

20年間での売電収入は2,419.2万円、初期費用は1,611.12万円でしたので、表面利回りは

2,419.2÷1,611.12÷20×100=およそ7.5%となります。

 

次に、ランニングコストを含めた実質利回りを見ていきましょう。

前章で説明した通り、ランニングコストの想定は年間0.5万円/kWでしたから、20年運用した場合のコスト合計は、0.5×72kW×20=720万円となります。このコストを収益から差し引いて考えると、実質利回りは5.27%と算出できます。

実際には、工事費の値引きや消費税還付等があるため、実質利回りはもう少し高くなります。2018年以前の売電権利付きの物件であれば、実質利回りは8~9%までのぼることも。

スマエネでは、投資物件の表面利回り・実質利回りを記載したうえで、多くの物件を数多く紹介していますので、あわせてご参考ください。

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(3)FIT制度の終了後の太陽光発電投資、どう行動すべき?

FIT制度終了後の後継制度がどうなろうとも、買取価格が現状のFIT価格には遠く及ばないという事実はゆるぎません。つまり、これまで投資商品として機能してきた産業用太陽光発電は、売電収入という最大のメリットが縮小してしまう可能性があります。

もちろん、上記で述べたように太陽光発電の設置費用も並行して安くなり投資額が抑えられるため、単純に太陽光発電投資が成り立たなくなるわけではありません。ただ、今後は太陽光発電投資で収益性を確保するために、投資額の見極めや事業モデルの見直しがこれまで以上にシビアに求められるようになるでしょう。

太陽光発電市場全体として、発電した電気は売電せずになるべく自家消費するような形へ変わっていきます。では、具体的に2019年以降での太陽光発電投資にメリットを見出すための活路には、どういったものがあるのでしょうか。

大きくは、次の4つの方策があります。

概要 詳細
電力消費先があるなら自家消費を中心にする 産業用太陽光発電でも、工場やオフィス、倉庫など電力消費の用途がある場所へ設置する場合は、なるべく売電せずに自家消費をして節電による電気代削減から経済メリットを生む
過積載の発電ロスを蓄電池で夜間売電 過積載したときに発生するピークカットによる発電ロスを蓄電池へ充電しておき、発電量が落ち着いた夜間に売電して売電量を増やす
FIT認定を取得した3年猶予物件を狙う FIT認定を取得してから3年間だけ与えられる売電までの猶予期間を利用すれば、2020年にFIT認定を取得した物件は2023年まで購入が可能
セカンダリー市場での中古物件の調達 太陽光発電の現オーナーが、まとまったキャッシュが必要になる等の利用で手放す物件を取引するセカンダリー市場で、発電実績のある中古物件を吟味して購入する

このように、これから投資目的で産業用太陽光発電を設置しようと思っている方も、販売されている太陽光発電物件を購入したい方にも、十分にメリットを享受できる環境は依然としてあります。

また、後継となるFIP制度の設計によっては、新電力会社などがより経済メリットの大きい買取料金プランなどを用意してくる可能性も十分にあります。見逃さないように、アンテナを張って最大限のメリットを得られるように最新情報を把握しておきましょう。

4.2019~2020年がラストチャンス! 好条件の物件は早めに確保を

FIT価格は毎年下落を続けていますが、設置費用も同様に安くなっているため、2019年度でも太陽光発電投資は十分に収益を見込めます。

とはいえ、FIP制度設計や今後の動向によっては、よりシビアな条件になる可能性も否定できません。そんな場合におすすめなのが、すでに売電権利を取得済みの土地に投資することです。

売電価格が14円以上の土地を確保できるため、より高い利回りでの投資が可能。2020年以降を見すえ、すでに好条件の土地から投資が進んでいます。ぜひご検討ください。

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