太陽光投資における「架台」の役割を解説!傾斜角度や高度による違いとは?

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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太陽光投資において、物件をチェックするうえで押さえておきたいポイントにパネルを支える「架台」があります。


「架台」にはさまざまな種類があるため、用地の形状や地質・パネルの設置枚数や固定方法などを考慮して、最適なものを選定しなければなりません。


ここでは、失敗しない太陽光投資のための知識として「架台」にスポットを当て、分かりやすく解説していきます。

1.太陽光発電所のパネルを支える「架台」とは?

パネル

「架台」とは、画像のように太陽光パネルを載せる台のことです。

主に

・基礎

・支柱およびレール

の2つのパーツからなり、それぞれの工法・種類によって、適した用途が異なります。

実際には施工業者が最適なものを提案してくれるケースがほとんどですが、基本的な知識をおさえておくことで、「なぜその工法なのか」を理解しやすくなります。以下、解説していきましょう。

(1)太陽光発電所の架台を支える「基礎」の種類

太陽光発電設備も家屋の建築と同様、地上に建造物を設置するため「基礎工事」はとても重要です。

一般的な太陽光パネル1枚分の重さはおよそ13kg前後なので、パネルだけならそれほど負荷を心配する必要はありません。

しかし、積雪による荷重や強風にあおられるリスクがある場合、それ相応の「基礎工事」が必要になってきます。

ここでは代表的な「コンクリート基礎」「杭基礎」の2種類を紹介します。

①ブロックの足場を設置する「コンクリート基礎」

ブロックの足場を設置する、コンクリート基礎の種類は以下の3パターンです。

コンクリート基礎の種類

置き基礎

四角いブロックを地中に埋め、基礎の重量と摩擦力で架台を固定する方法

布基礎

長い一列のブロックを埋め、置き基礎より安定性・強度を高める方法

ベタ基礎

架台を設置する範囲一帯にブロックを埋め、安定性・強度を最大化する方法

置き基礎が最も低コストで、布基礎、ベタ基礎と安定性・強度が高まるほど費用は高くなります。

②杭基礎

杭を地面に差し込み架台を支える、杭基礎の種類は以下の3パターンです。

杭基礎の種類

単管杭

地面に差し込んだパイプで架台を支える基礎。耐久性が弱く減少傾向

スクリュー杭

スクリュー状の杭を地面に差す、野立ての発電設備に多用される手法

C型杭

C型に成形された形鋼を地面に差し込む杭。施工性に優れており安価

なお、上記のうち単管杭は引っ張り強度に問題があり、強風により損壊する懸念があるため現在はほとんど採用されていません。

(2)太陽光発電所の架台における「支柱」と「レール」

架台本体は、柱の部分にあたる「支柱」と、パネルを設置する「レール」、それらを固定するボルトやナット、荷重による歪みを防ぐ筋交いといったパーツからなります。

架台の素材には、以下の3つがあります。

・スチール

・アルミ

・ステンレス

それぞれの素材の違いと利用用途について解説していきましょう。

①スチール製のメリット・デメリット

メリット

デメリット

材料費がアルミ製より安価

施工費が高い

強度が大きいので負荷がかかっても損傷しにくい

設置に要する工期が長い

レールに穴が開いているので雨水が溜まりにくい

錆びやすい(メッキ処理で対応可)

②アルミ製のメリット・デメリット

メリット

デメリット

運搬・加工がしやすいので施工費が安い

材料費がスチール製より高価

短い工期で施工できる

大きな負荷がかかると損傷する恐れがある

錆びづらい

レールの内部に雨水が入ると溜まりやすい

③ステンレス製のメリット・デメリット

メリット

デメリット

強度が大きいので負荷がかかっても損傷しにくい

施工費が高い

錆びづらく塩害地域に向いている

ほかの素材より高価

近年は、電力会社による電力の買取単価が下がっていることや、施工会社が施工の要領を得たことが手伝って、各素材の材料費や施工費の差がかなり縮まっています。

従って、決して価格の高低で素材を選ばず、用地の環境に最適な架台を選ぶようにしましょう。

(3)その他、太陽光発電所に使われる特殊な架台

太陽光パネルを支える「架台」には、特殊な形状をしたものやシステムを備えたものもあります。一般的に採用されるものではないので材料費や施工費は割高ですが、建設地の用途や高い費用対効果が得られる場合にのみ採用される特殊な架台です。

①営農型パネル架台

畑などの農地で耕作をしながら太陽光発電で副収入を得る「ソーラーシェアリング」。農水省が推奨する農業従事者向けの太陽光投資ですが、一般的な太陽光投資に比べて普及率が低かったため、これまで架台の開発が進みませんでした。

しかし、近年の大手農業法人による積極的な投資が進んだこともあり、架台メーカーの開発に拍車がかかっています。

営農型パネル架台の大きな特徴は、スチール製の長くて細い支柱と可倒式のレール。

レールは低い位置でも地上から2m以上もあり、細い支柱の強度を確保するためには基礎杭をより深く打ち込む必要があります。

また、耕作する作物に十分な日光と雨水が提供できるように、パネルが固定されたレールを90度まで起こせるようになっています。

②発電量が40%アップする「追尾式架台」

電柱ほどの太さがある支柱に、太陽光パネル24枚を1組とするレール枠を設置した独立型の架台があります。

レールの頂上部と側面に取り付けられた光センサーが、常に太陽光を追尾しレールが可動する「追尾式架台」と呼ばれる特殊架台です。

向日葵の花のように日の出から日没まで常にパネルが太陽に向くため、固定式の架台に比べ1.2~1.4倍以上もの発電量アップが実証されています。

そのため固定買取価格が低い物件でも、生産性が上がれば十分な利回りが確保できるということで近年、注目されているハイテク架台です。

3.架台設置にかかる費用の相場

当然ですが、発電量が50kW/h未満の低圧物件とメガクラスの高圧物件とでは、架台設置にかかる費用に大きな差が生じます。ここでは低圧物件の費用相場についてお話ししたいと思います。

先述の解説では基礎工事に使用する「杭基礎」と「架台」を区別しましたが、多くの施工会社では「杭基礎」と「架台」を合わせ「杭・架台工事」として見積もられます。

スタンダードなサイズのスクリュー杭と架台で見た場合、材料費の相場は1kW/hあたり約13,000~16,000円。その施工費は建設重機の諸経費も含め1kW/hあたり約6,000~8,000円程度です。

50kW/hの太陽光発電設備を例にすると、杭・架台工事にかかる費用は材料費が65~80万円、施工費が30~40万円が概ねの相場となります。ただし、この相場は2019年現在のものであり、電力の固定買取価格が36円や32円など高い単価の時期では今の1.5倍以上の費用で取り引きされていました。

これからも固定買取価格の下落が見込まれる中で、材料費や施工費の相場もさらに下がることが予想されます。

4.発電量を左右する「架台の傾斜角度」の設定

一般的に、電力生産がいちばん高いパネル架台の傾斜角度は30度といわれています。しかし、この「30度最善説」が当てはまらない地域もあるのです。

経産省が管轄する「独立行政法人NEDO」のホームページでは、全国837地点30年分の日射量データベースをもとに各地点の年間を通じた最適な角度を調べることができます。

その中の都道府県別データを見ると、群馬県(35.8度)・栃木県(35.6度)・北海道(34.8度)が他県よりも急な角度で最大日射量が得られると結果が出ています。

逆に、島根県(24.2度)・新潟県(25度)・鳥取県(25.1度)では他県よりも緩い傾斜が最善の角度となっています。

もちろん、日射量と発電量は比例するのでNEDOのデータ結果を参考にした架台の傾斜角度は理想的です。しかし、角度の決定には日射量以外にもいくつか考慮すべきポイントがあり、設計会社はこれらのポイントと日射量を加味したうえで最終的に傾斜角度を決定します。

資料

(1)太陽光発電の用地を有効活用できる

南側に向けているパネル架台の傾斜角度を仮に30度で設置した場合、日が昇り始めると同時に北側に影が長く伸びてしまいます。

そのため、後部のパネルに影がかからないようにするためには、架台と架台の間隔を十分に確保しなければなりません。

限られたスペースで少しでも発電量を稼ぐには、なるべく多くのパネルを設置したほうが効果を得られるため、影の影響を避けた角度で用地いっぱいにパネルを設置するよう設計されます。

(2)パネル表面の異物を落下させる

影の影響を避けるためとはいえ、架台の角度が小さ過ぎると積雪による過重量でパネルや架台が損傷する恐れがあります。また砂埃や落葉などがパネル表面から落下せず、覆ったままの状態が続けば発電ロスの原因になることも考えられます。

(3)パネルがうける風の影響

架台の角度が大きくなるほど、当然、パネルがうける風の影響が強くなります。空に飛ばす「大凧」をイメージすると分かりやすいでしょう。

架台のレール部分にしっかり固定されていれば、パネル本体が引き飛ぶことはありません。

しかし、強力な揚力によって、架台の支柱や基礎の部分に大きな負荷がかかってしまいます。

そのため架台の傾斜角度を大きく取る場合は、風圧に耐えるだけの補強や素材の選定が必要になり、コストが割高になるためシミュレーションによる分析が必要となるでしょう。

設置する地域や用地の環境によって最適な架台の傾斜角度はさまざまですが、これらのポイントを踏まえ、設計会社では一般的に15~20度を選択することが多いようです。

5.「架台の高度」による太陽光発電所の運用への影響とは?

パネル

太陽光発電設備を運用するうえでは、架台の傾斜角度に加え「架台の高度(高さ)」も大切な要素となります。そこで、架台の高度が運用にどのように影響するのかを見てみましょう。

(1)太陽光発電所の周辺における除草作業の頻度

架台の高度が低過ぎてしまうと、さほど背丈が伸びていない雑草でも最下段のパネルに影を落としてしまい、年に何度も除草作業をしなければなりません。できれば除草作業は1年に2回程度で済ませたいものです。

年間を通して効率よく除草作業をするなら、雑草が60~80cm程度に成長した段階での刈り取りがベスト。それを踏まえると、最下段のレールは地上から80cm以上は確保したいところです。そうすれば、影の心配はほとんどなくなります。

関連記事:草刈りを怠ると発生する6つの問題!どう対処すべき?

(2)太陽光発電所のパネル点検(目視)の容易さ

O&M会社による定期点検では、パネル表面に損傷やひどい汚れがないかをチェックします。そのうえで、架台があまりにも高すぎると目視による点検が困難になってしまい、点検ミスに繋がりかねません。

また、パネルの清掃作業も困難です。メンテナンスのミスを防ぐためにも、高度の最高地点が2.5~3m程度の範囲が理想といえるでしょう。

(3)最下段パネルの雪による埋没

架台角度の解説で積雪について触れましたが、積雪した雪は架台角度を利用して下に滑り落ちるように設計されていなければなりません。

しかし、最下段の架台の高度が低いと滑り落ちた雪に埋もれてしまい、日光を遮ってしまいます。地域によって異なりますが、予想される積雪量から計算して十分な高度を確保しておく必要があります。

6.架台の知識は太陽光投資の成功・失敗を分けるカギ!

太陽光発電設備では、どうしても太陽光パネルやパワーコンディショナの内容に気が取られがちです。

しかし、架台の種類やその性質、設計や施工が正しくされなければ、どれほど優れた太陽光パネルやパワーコンディショナを用いても、その能力を発揮させることが出来ません。

そればかりか、発電ロスや架台の損傷を招いてしまうのです。粗悪物件を購入しないためにも今回の解説で得た知識を頭の片隅に置き、是非、物件チェックの際に役立てください。

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