2019.03.29 Mar
更新日時:2019.11.26 Tue
「農地転用」で農地を太陽光用地に変える!どんなことに注意すべき?
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一般的に太陽光発電事業を始める場所といえば、日当たりが良く地盤が強固な山の斜面や障害物のない平地ですが、好立地な土地は既に購入されていることがほとんど。
そこで農地転用手続きを用いて、太陽光発電設備を設置したいと考えている方もいるのではないでしょうか?
ここでは農地転用を前提とした太陽光発電事業を検討している方へ、メリットと注意点、手続きの流れについて分かりやすくご説明しています。農地転用の難しさとメリットを理解した上で、改めて太陽光発電投資を検討してみてください。
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目次
1.農地を太陽光用地に変えられる「農地転用」とは?
「農地転用」とは、文字通り農地専用の土地を、農地以外の用途に用いるための手続きです。
農地は法律によって、耕作(農作物を育てること)以外の用途へ活用することが禁止されています。そのため太陽光発電設備や建物の建設などができず、農地として活用していない土地の中には、他の用途へ転用せず「耕作放棄地」として放棄されているケースも珍しくありません。
そこで農地転用が許可されれば、太陽光発電を稼働できるようになるため、近年では太陽光発電設備の需要増加と共に転用件数も増加傾向となっています。
以下は、農林水産省が公開している農地転用件数に関する資料です。
出所:農林水産省:「農地に太陽光パネルを設置するための農地転用許可実績について」
太陽光発電の導入コストは年々下がっており、事業としても収益が見込めるので、農地転用手続きが増えています。
しかし、農地転用手続きを完了させるためには、様々な条件と審査が必要となるので、簡単に済ませられる手続きではないことを理解しておきましょう。
2.農地転用で太陽光発電を始めるメリット
太陽光発電投資用に売り出されている土地は多数ありますが、どれも好立地という訳ではありません。日当たりが悪かったり、利回りに対して土地価格が高かったりとメリットが少ない土地もあります。
また、先に好立地な土地を購入されてしまうこともあるため、好立地な土地を購入することは容易ではありません。
一方農地は、これまで手が付けられていない耕作放棄地も多い一方で、日当たりが良く障害物もない好立地の土地が多く、農地ならではのメリットがあります。
それでは、農地転用で太陽光発電を始めるメリットをいくつかご紹介します。
(1)使用しない農地を資産運用のために活かせる
農地転用で太陽光発電を始めるメリットの1つは、現在使用していない農地を資産運用として活かすことができる点でしょう。
農業を再開すればいいのではないか、と思う方もいるかもしれませんが現在の日本は少子高齢化社会で、尚且つ農業の人材・後継者不足が深刻です。そのため農業を始めようと考えても、簡単に始められない事情があるのです。
一方、農地転用で太陽光発電を始めると、基本的に無人状態で売電収入を得られます。また、農業は売上の維持に工夫が必要ですが、太陽光発電は日光を効率よく取り込むことができれば、それだけで収入を維持しやすいのが特徴です。
(2)日照条件が好ましい場所で太陽光発電を行える
農地は元々農作物を育てるための土地です。そのため、日当たりなど日照条件が良く、太陽光発電に転用しやすい特徴を持っています。
太陽光発電設備は、設置すれば自動的に収益が発生する訳ではなく、日当たりと向き、気候条件などが発電効率と利回りに影響を与えます。また、売電収入を増やすためには、太陽光パネルの枚数を増やすことが必要です。
その点、農地の多くは一定の土地面積を確保しているので、太陽光パネルを複数設置できる環境ができあがっています。
(3)耕作放棄地はすぐに農業を再開できないため太陽光発電が役立つ
農業は、種を撒いて水やりすれば、作物が育つような簡単な作業ではありません。また農地の中には耕作放棄地があり、これは手入れが施されている土地と違い、農作物が育つように整地作業から始める必要があります。
そのため、1度耕作放棄地となった土地で農業を再開することは容易ではなく、農地転用で太陽光発電を始める方が時間とコスト面でメリットを得られます。
また、農地転用によって太陽光発電を始める場合は、地盤強化のために造成工事が必要になるものの、初年度から一定の売電収益を得られるので、収益化の体制を早く整えることが可能です。
関連記事:土地付き太陽光発電とは?投資額を最短で回収するためのメソッドを解説
3.農地転用で太陽光発電を始めるときの注意点
農地転用の申請をすれば、すぐ太陽光発電を始められる訳ではありません。また、農地転用には、いくつかの規則と罰則が設けられているため事前の確認が必須でもあります。
特に太陽光発電事業を始めるために、農地転用目的で農地や耕作放棄地を購入しようと考えている方は注意が必要です。
それでは農地転用で、太陽光発電を始めるときの注意点をご紹介します。
(1)太陽光用地にするため造成工事が必要
農地として活用していた土地を、太陽光用地として活用するには造成工事が必須です。
農地は畑や水田になっているため、どれも建築物や設備を設置するには地盤が弱く、土の入れ替えや整地、地盤改良などを含めた工事を行い、土地を整備します。
そして造成工事は自身で行える小規模な工事ではありませんので、専門業者に発注する必要があり、数十万~数百万円程度の費用が掛かると考えておきましょう。
また、土地面積や地盤の状態によっても工事内容と工期が異なるので、相見積もりを行い、なるべく造成工事費用を抑えられるようにすることがポイントです。
(2)必ずしも農地転用を行えるわけではない
農地転用手続きを行ったからといって、必ず転用できる訳ではない点についても注意が必要です。
日本は戦後、土地活用の中でも農地を重要視していました。高度経済成長期に差し掛かり、経済成長を優先するあまり農地を都市計画に含め、農地転用し過ぎた結果、現在は農地不足あるいは耕作放棄地が増加しました。
そのため、農地を別の用途へ転用する農地転用手続きは、農地不足を加速させる側面もあり、原則不許可の方針で厳しい審査を行っています。
また、農地は5種類に分かれており、農地転用の許可が下りない種類が多いです。また、5種類に区分されている農地のうち、原則許可されるのは第3種農地になります。
この第3種農地とは、農地のある場所が市街地や市街地化が進んでいる地域、もしくは駅から300m以内にあるケースを指します。こういった規則から、いかに農地転用手続きが難しいかが分かるでしょう。
(3)近隣の住宅・農地に影響を及ぼさないか要チェック
農地転用では、手続きの審査やコスト面だけでなく、近隣の住宅と農地などに影響を及ぼさないか、事前にチェックすることが必要です。
1つは光害になります。太陽光パネルや周辺機器から反射した強い光が、近隣の農作物へ当たることで、生育環境に悪影響を与える可能性があります。また、農作物だけでなく、近所の住宅や通行人に強い光が当たる可能性もあり、問題になるリスクもあるでしょう。
①太陽光パネルが作る影にも要注意
もう1つの問題は、太陽光パネルなどが作る影です。強い光は生育環境に悪影響を与えますが、影になり光が差し込まない環境も成長を遮ってしまいます。
太陽光パネルの高さと、他の農地との距離によっても影がかかるリスクは変わりますが、事前にチェックしなければ、設置後に気付いてもすぐには改善できません。
太陽光パネルは、多くのメーカーが約1.6m×約0.8mで製造しています。単体では特別大きい訳ではありませんが、10枚や20枚と並べると結果的に大きな影を作るのです。農地転用手続きの前に、太陽光パネルを設置した場合の光と影の角度や範囲について、太陽光発電業者へ確認してみましょう。
(4)農地転用の許可を得なければペナルティの対象になる
農地転用手続き及び許可を受けない状態で、勝手に造成工事と太陽光発電設備の設置を行うと、罰則を受けます。
農業委員会からのチェックにて、農地法の違反が確認された段階で行政代執行が下されます。具体的には、造成工事前の土地に戻す、設備の解体など厳しい内容です。工事の中止と農地への回復作業で余計な費用が掛かるため、必ず農地転用手続きを行い、審査を通過した後に造成工事や設置工事を発注しましょう。
また、農地転用を前提とした農地の購入も、農地法に従って手続きを行う必要があります。具体的には農地4ha(ヘクタール)を超える土地で、都道府県知事もしくは農林水産大事の許可を受けなければいけません。
4.3ステップで分かる!農地転用はどのように行うの?
農地転用の手続きは手間と準備が掛かります。そのため、手続きの流れをいくつかに分けて覚えると分かりやすいです。
ここでは、農地転用手続きを3ステップに分けてご説明します。農地転用を前提とした活用を検討している方は、必ず覚えておきましょう。
(1)まずは農地の種類を確認する
まずは、購入予定の農地もしくは保有している農地が、どのような区分をされているか確認します。
農地の種類 | |
甲種農地 | 農地転用は原則不許可 |
第1種農地 | 農地転用は原則不許可 |
第2種農地 | 農地外の土地や第3種農地に活用出来ない場合は許可 |
第3種農地 | 農地転用可能 |
農用地区域内農地 | 農地転用は原則不許可 |
続いて、それぞれの農地の主な特徴を分かりやすく解説します。
各農地の特徴 | |
甲種農地 | 市街化調整区域内で、土地改良事業等の対象農地など |
第1種農地 | 10ha以上の農地、良好な営農条件を備えている農地など |
第2種農地 | 鉄道の駅から500m以内にある、生産性の低い農地など |
第3種農地 | 鉄道の駅から300m以内にある、市街化区域や傾向のある農地 |
農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画*¹で、農用地区域*²とされた区域内の農地甲種農地: |
つまり、甲種農地と第1種農地、農用地区域内農地に関しては、農地転用が原則許可されないため、3項目のどれかに該当している場合は太陽光発電を始めることが極めて難しいです。
農地転用するのであれば、基本的に第3種農地に区分されている土地でなければいけません。もしくは第2種農地で周辺の土地を活用できない場合に限り、許可されることもあります。
*¹ 農業振興地域整備計画:特に農業を行うことが必要と考えられる地域。無許可で農地転用できない。
*² 農用地区域:生産性の高い農地のこと。農地としての価値が他の農地よりも高いため農地転用が難しい。
(2)必要書類を用意する
第3種農地、もしくは第2種農地に該当しているが、周辺の土地に太陽光発電設備を設置できないのであれば許可を受けられる可能性があります。
そして次に作業を行うのが、申請に必要な書類作成と準備です。
出所:農林水産省「農地転用許可制度」
上記を確認すると分かりますが、農地転用の申請は、図面、証明書、同意書、権利関係の書類など複数の書類が必要です。
ですので、農地転用ができる土地と判断できた段階で、準備可能な作業から進めることをおすすめします。
(3)必要書類を農業委員会へ提出する
農地転用の申請準備ができたら、農業委員会へ必要書類を提出します。
提出方法は主に以下の3種類があり、それぞれ提出したあとのプロセスが異なるのが特徴です。
①転用する農地が30アール(0.3ヘクタール)以下の場合
出所:農林水産省「農地転用許可制度」
②転用する農地が30アール(0.3ヘクタール)を超える場合
出所:農林水産省「農地転用許可制度」
③市街化区域内農地を転用する場合
参考:農林水産省「農地転用許可制度」をもとに作成
5.発電・農業を両立する「ソーラーシェアリング」という選択
農地を活用した太陽光発電に関しては、農地転用手続きを行わず始められる方法があります。ソーラーシェアリングと呼ばれる方法を用いると、農地転用無しで太陽光発電を始めることができるのです。
方法は、まずソーラーシェアリング専用の太陽光発電設備を用意し、農地に支柱を差し込みます。そして、農地に差し込んだ支柱に架台や太陽光パネルを設置することで、空中で太陽光発電を稼働させます。
そうすると農地で農業を続けながら、太陽光発電ができるので農地を転用することなく、尚且つ両立することが可能です。
ただし、ソーラーシェアリング専用の設備が必要となるため、設備や工事費用が通常の太陽光発電設備よりも高い傾向になります。
6.農地転用で太陽光発電を始めるときは入念なリサーチを
農地転用による太陽光発電を始めるためには、農地の種類と必要書類の作成など準備と確認が必要なことを理解いただけたかと思います。
太陽光発電を始める際は、何も確認せず土地を購入してはいけません。農地転用の許可が下りない土地であれば、損失だけが残ります。
農地を太陽光用地に変えて太陽光発電を始めるためにも、農地区分の確認と手続きの流れを丁寧に確認しながら準備を進めていきましょう。
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