太陽光発電の売電が止まる「出力抑制(出力制御)」とは?

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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「出力抑制」もしくは「出力制御」という言葉を耳に入れたことはあるでしょうか。新聞やTV報道でも何度か話題に上がったこともある言葉で、太陽光発電に関する制度のことです。この「出力抑制」を知らないまま、太陽光投資を始めるのは非常に危険です。


この記事では、出力抑制とはなにか、そして投資に与える影響について解説していきます。

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1.太陽光発電の売電が止まる「出力抑制(出力制御)」とは?

バランス

「出力抑制」は、電力の需要に合わせて供給量を調節することで、需要と供給のバランスを保つための制度です。電力の需要とは、家庭や企業などで必要とされる電力量のことで、使われる電気の量のことを指します。

電力会社は、発電所を稼働させてその需要にマッチした電力量を供給します。この需要と供給のバランスのことを「需給バランス」というのです。

「出力抑制」は発電所の発電量、つまり出力を抑制することで電力の供給を調節します。もう少し具体的にいうと、電力の需要が少ないときに供給過多にならないよう、一部の太陽光発電の発電出力を抑制・セーブさせるのです。

(1)太陽光発電所はどうして出力抑制が行われるの?

では、なぜ出力抑制で需給バランスを調節する必要があるのでしょうか。結論からいうと、「需給バランスが崩れると停電を引き起こすため」です。

普通に考えると、需要が供給よりも多いとき、つまり使う量のほうが多くなると電力が不足して停電に陥ってしまうのはイメージしやすいでしょう。東日本大震災の直後、原子力発電所の稼働が止まったことで電力不足に陥り、首都圏でも計画停電が実施されました。一方で、需要よりも供給が多いときは電力が余ります。

電力不足と比べると、ただ電気が余るだけなので、一見すると問題ないように思いますよね。しかし、電力不足だけでなく電力過多の場合でも、停電を引き起こしてしまうのです。

①需給バランス崩壊により停電が起こる理由を「お風呂の水」に例えると?

なぜ需給バランスが崩れると、停電が起こるのでしょうか?

それは、電力の品質とも言われる周波数が関係しているのです。電力における周波数は、交流電流が1秒間に正負の入れ替えを繰り返した回数です。

東日本では50Hz、西日本では60Hzの周波数を維持しています。需給バランスが崩れると周波数の維持が困難となり、周波数に乱れが発生した不安定な電気になるのです。

周波数の考え方は少しテクニカルなので、例として栓の開いているお風呂に水を入れることを考えてみましょう。

電気に関する項目 お風呂の水に例えた場合
発電した電気(供給) 蛇口から入る水
消費される電気(需要) 栓から抜けていく水
周波数 水の重量

例え

蛇口から入る水と栓から抜けていく水が同量の場合は、需給のバランスが保たれた状態です。この状態での貯まっている水の重さを、50Hzだとします。

水の抜けていく量が多い、つまり需要が多いと水量は減って軽くなります。(49.4Hz)。逆に水の入る量が多い、つまり供給が多いと水量は増えて重くなっていきます。(50.4Hz)

バランス

いずれの場合も、50Hzから増減して水量は安定しない=周波数が乱れることがわかります。

このように、周波数が乱れると電化製品が正常に動かなくなります。

②周波数が乱れると工場を安定稼働させられない

海外旅行で、電化製品を使うときのことを思い出してみてください。日本のドライヤーを海外で使おうと思っても、動かなかったり風が強くなりすぎたりしますよね。これは、日本と海外で周波数(と電圧)が異なるためです。

同様に、家庭で使う電化製品はもちろん、工場などで使う工業製品も周波数が異なると、安定した稼働ができなくなってしまいます。そのため、需給バランスがくれずれて周波数が規定値よりも乱れる可能性があると、発電所の発電機は強制的に停止するように設計されているのです。

発電機は一度停止すると、再稼働するまでに時間がかかります。その間に、電力不足になってしまうため供給が追いつかずに、大規模停電を引き起こすことになります。

需給のバランスの崩れによって停電が発生するまでの流れは、以下のとおりです。

需給バランス崩壊~停電までの流れ
1.需給バランスの崩れ(電力過多・電力不足)
2.周波数の乱れ
3.発電機の停止
4.電力不足
5.停電

一度、大規模な停電が発生すると復旧までに時間もかかるため、多大な損害が発生します。

2018年9月の北海道胆振東部地震を発端に発生した北海道全域のブラックアウトでは、完全復旧まで1週間以上を要しました。経済的損失は5,000億円ともいわれており、非常に大きなインパクトを与えています。

電力は人命にも影響する、まさに現代社会のライフラインです。電力会社にとって停電は、避けなければいけない最も重大なミッションなのです。

(2)太陽光発電の出力抑制が行われる流れ【3プロセス】

出力抑制は、電力会社が太陽光発電事業者に対して実施の要請をするところから始まります。太陽光発電はその要請を受けて、発電量を抑制・制御します。

出力抑制が実施されるまでの具体的な流れをまとめると、以下のイラストのようになります。

出力制御

まずは電力会社のサーバーからインターネット経由で、対象の太陽光発電所に命令を送ります。太陽光発電はその命令を受信ユニットで受け取り、パワーコンディショナへ命令を伝達します。(受信ユニットは、出力抑制ユニットとも呼ばれます)

すると、パワーコンディショナは命令された出力に発電量を抑制して、系統へ流す電流を調節するのです。抑制命令は1%−100%までありますので、完全に発電を停止する必要がある場合もあります。

①太陽光発電をする事業者が出力抑制に対応したパワーコンディショナを設置

出力抑制のルールとして、対象エリアでは出力抑制の受信ユニットと、出力抑制対応のパワーコンディショナの設置が義務付けられています。そして、太陽光発電事業者は電力会社からの出力抑制要請を拒否することはできません。

出力抑制に同意しなければ、最初の売電契約時に売電自体が認可されないためです。そのため、売電をしたい太陽光事業者は出力抑制を甘んじて受け入れる以外の選択肢はありません。

また、太陽光発電だけではなく発電所全体の話になりますが、出力抑制がかかるのは太陽光発電だけではありません。実は出力抑制は、太陽光発電を含めた電力会社の保有する、すべての発電所が対象となっています。

そのため、発電所の種類とその特性によって出力抑制をかける優先順位が設定されています。これを「優先給電ルール」といいます。

②優先給電ルールにおける太陽光発電の位置づけ

優先給電ルール
1.火力
2.揚力
3.大型バイオマス
4.太陽光・風力
5.原子力・水力・地熱(長期固定電源)

このルールから見て取れるように、太陽光発電は火力発電など他の発電所の出力が抑制された後に抑制対象となるのです。優先順位は、発電量の調節をしやすい電源から順に設定されています。

電力の需要は、天候等の状況に合わせて時間とともに刻々と変化していきます。需給のバランスを保つためには、需要に急激な増減があっても対応できるような発電状況を保持しておく必要があります。

そのため、発電所の特性に合わせた発電所の稼働設計が必要なのです。

③再稼働が容易な電力から優先的に出力抑制が適用される

例えば原子力・水力・地熱は、一度発電量を下げてしまうと再稼働まで時間がかかるという特性を持った電源です。そのため、原子力発電の停止後に急激な需要の増加があると、原子力発電の再稼働が間に合わず電力不足に陥ってしまいます。

このような事態を避けるため、原子力・水力・地熱は一定の発電量をキープするベース電源(長期間固定電源)としての役割を果たしているのです。逆に、火力は比較的短時間で出力を調整することができるので、最初に出力抑制をかけます。

太陽光や風力も出力抑制によって短時間で出力調整ができますが、日本が再生可能エネルギーを推進する方針であるために、優先順位が低く設定されています。出力抑制をかけずに、再生可能エネルギーを最大限活用できるよう配慮しているのです。

コントロール

出所:資源エネルギー庁「再エネの発電量を抑える「出力制御」、より多くの再エネを導入するために

(3)出力抑制が起こりやすい状況の特徴

出力抑制が起こるのは、需要<供給となる供給過多の電力状況時です。そのため、「需要が減る+供給が多い」という状況で出力抑制は起こりやすくなります。

つまり、太陽光発電で出力抑制が起こりやすいのは、最も発電する晴れた日中かつ需要が少なくなるタイミングです。

実際に2019年1月3日に九州電力で実施された出力抑制でも、以下のような供給過多の電力状況が予測されていました。

  • 供給が多い:好天が続き発電量が増加予測&午前9時〜午後4時の日中
  • 需要が減る:正月三が日で電力消費の大きい工場の多くが運転停止

この他にも、供給が多くなる要因として時期的なものもあります。太陽光発電の発電量は、気温が高すぎず日射が多い5月ころに最も多くなるのです。

逆に、エリア的には人口が少ない電力消費が少ないところ、また季節外れの気温で冷房や暖房が使われない休日などが、需要が少なくなる傾向にあります。

このように出力抑制は、天候や気温、休日等などの要因で起こりやすくなるのです。

原因

出所:資源エネルギー庁「なぜ、太陽光などの「出力制御」が必要になるのか?~再エネを大量に導入するために

2.出力抑制は太陽光投資にどのような影響をもたらすの?

出力抑制は、停電を起こさないために非常に重要な制度であることがわかりました。しかしながら、一太陽光投資家にとっては投資対効果が最重要です。

出力抑制が太陽光投資において、どのような影響をもたらすのか詳しく見ていきましょう。

(1)売電不能により太陽光発電の利益率を低下させる

出力抑制が起こると、太陽光発電の発電量が下がる=売電量が減ります。つまり、出力抑制によって売電収入が減ります。100%の出力抑制がかかれば、売電不能という事態が起こってしまうのです。

出力抑制のルールでは、1年間で出力抑制を実施する上限時間が設定されている場合があります。それが、「360時間ルール」です。1年間で最大360時間まで、つまり1日1時間は売電不能になる可能性があります。

①出力抑制による太陽光発電の停止は電力会社からの補償がない

この間は出力抑制で売電できなかったとしても、電力会社から一切補償はありません。

エリアによっては360時間の上限がなく、無制限無補償のルールになっている場合もあります。(後ほど解説します)

実際にどの程度の売電損失になるのか、例として50kWの太陽光発電システムで考えてみましょう。

②50kWの太陽光発電システムを想定して出力抑制をシミュレーション

出力抑制は、360時間の間に抑制率100%でかかったと仮定します。年間の発電量は、出力の1100倍が目安なのでおおよそ55,000kWh程度です。太陽光発電が毎日午前9:00〜午後4:00の、7時間発電すると仮定します。

出力抑制がかかるのは1日1時間なので、年間発電量の1/7の約7,900kWhだけ売電不能となる電力損失が発生。売電単価を18円(2018年)したときの売電収入は、出力抑制がなければ100万円だったところ、年間14万円の損失で86万円まで下がります。

損失割合は14%にもなり、20年間では約280万円も損失が積み上があります。

とはいえ、現状の出力抑制の実施状況を見ると、実際に360時間まで売電不能になることはありません。しかしながら、今後も再生可能エネルギーの導入が増えることを考えれば、最大でこれだけのリスクがあるものであるということは心に留めておきましょう。

関連記事:太陽光投資の利回りの罠!失敗しないために押さえる7つのこと

(2)出力抑制の存在は融資時にネガティブなイメージもたらす

上述したように、出力抑制は売電収入を減少させる要因になります。そのため、出力抑制の存在は融資を受ける金融機関に、ネガティブなイメージを与えてしまいます。

太陽光投資を始めるとき、多くの方は自己資産で足りない部分を金融機関からの融資で補うでしょう。融資を受ける際には、もちろん金融機関の審査があります。

金融機関は、事業者から提出される太陽光投資の事業計画から投資回収が成り立つかどうかを検討し、最終的に融資するかどうかを判断します。

このときに、出力抑制は売電収入を減少させ、収益性を悪化させる懸念材料と判断される可能性は高いです。そのため、融資担当から出力抑制によるリスクを聞かれた際に、納得のいく説明ができるように準備しておくことをおすすめします。

3.各エリアの太陽光発電における出力抑制の状況

出力抑制は、電力会社と設備規模によって実施状況が異なるため、太陽光発電の電力契約をしている管轄エリアの実施状況を確認する必要があります。

各エリアにおける出力抑制の状況をまとめると、以下の表のようになります。

電力会社 10kW未満 10kW−50kW 50kW以上
北海道電力

10kW以上と同様だが、10kW以上の出力抑制後に行う(優先的な扱い)

出力抑制あり

(年間360時間を超えても無補償)

東北電力

10kW以上と同様だが、10kW以上の出力抑制後に行う(優先的な扱い)

出力抑制あり

(年間360時間を超えても無補償)

東京電力 対象外 出力抑制あり

(年間360時間までは無補償)

中部電力 対象外 出力抑制あり

(年間360時間までは無補償)

北陸電力 出力抑制あり(年間360時間を超えても無補償)
関西電力 対象外 出力抑制あり

(年間360時間までは無補償)

中国電力

10kW以上と同様だが、10kW以上の出力抑制後に行う(優先的な扱い)

出力抑制あり

(年間360時間を超えても無補償)

四国電力

出力抑制あり(年間360時間を超えても無補償)

九州電力 出力抑制あり(年間360時間を超えても無補償)
沖縄電力 出力抑制あり(年間360時間までは無補償)

※平成30年7月12日以降に接続申し込みを受付けられた物件

2019年3月現在、設備規模が50kW以上であれば、すべての電力会社が実施対象となっています。ただし、設備の出力が50kW未満の場合は、東京電力、中部電力、関西電力では実施対象外になっています。

東京電力、中部電力、関西電力の50kW未満の設備が対象外になっているのは、人口が多く電力の需要が多いためです。仮に供給過多になりそうな電力状況になったとしても、火力発電等の発電所+50kW以上の太陽光発電の出力抑制があれば、十分に対応できるのです。

太陽光発電の発電量が多くても、それを吸収できるだけの電力需要があるということです。また、太陽光発電の接続申込みをするタイミングによって出力抑制のルールは異なります。

(1)出力抑制における旧ルール・指定ルール・新ルールの違い

制度がスタートした当初の「旧ルール」では、500kWを超える大型物件のみが対象でした。しかし、太陽光発電設備の増加と需給バランスの変化から、2015年のFIT法改正を皮切りに、現在では対象範囲が50kW以上の設備すべてに拡大しています。

上記の表は、平成30年7月12日以降に設置した場合の実施状況をまとめています。これを「指定ルール」といい、出力抑制による損失が360時間を超えても無補償になる制度です。

東京電力、中部電力、関西電力を除く、すべての電力会社で指定ルールが適用されています。

そして、旧ルールと指定ルールの間にあったのが、新ルール=360時間ルールです。このように、接続申込みのタイミングと電力会社ごとに適用されるルールが異なりますので、各電力会社のホームページで実施状況を確認しましょう。

(2)九州では2019年10月までに56日もの出力抑制を実施

太陽光投資において、出力抑制は利益率の低下に直結することを説明しました。そうなると、やはりどのくらいの頻度で出力抑制が実施されるのかが気になるところです。

そこで、実際にどの程度の頻度で出力抑制が実施されているのかを確認してみます。

①出力抑制の回数は九州電力が1年間で56日と最多

最も回数が多く出力抑制が実施されているのは、九州電力です。2019年10月現在で、合計56日実施されています。

②50kWの容量で出力抑制を想定してシミュレーション

先ほどの例と同様に、容量50kWで年間発電量が55,000kWhの太陽光発電システムで考えてみましょう。

年間で損失する発電量は、以下の計算から約8,400kWhとなります。

1日の発電量 (55,000kWh÷365日) × 56日間 = 約8,400kWh

2019年の買取価格14円で計算すると、年間の損失額は117,600円となります。ざっくり20年間で235万円ほどの損失になるので、影響は少なくありません。

4.今後は出力抑制と「上手く付き合う」意識が求められる

仮に出力抑制が起こったとしてもそのリスクを正しく理解して、上手に付き合っていく意識が重要です。

そこで、出力抑制に対してどのようなリスクヘッジができるのかを以下にまとめました。

(1)売電不能時の損失を補う「出力抑制保険」を活用する

出力抑制が起こると売電不能になるため、出力抑制のかかった時間だけ売電収入に損失を与えます。そして、売電収入の損失は新ルールなら年間360時間まで、指定ルールでは360時間を超えても補填がされることはありませんでした。

ですが、その売電収入の損失を補填してくれる保険が存在します。それが「出力抑制保険」です。「出力抑制補償」と表現されることもあります。

「出力抑制保険」は、免責時間や免責抑制率を超えた出力抑制で生じた売電収入の損失分を補填してくれます。免責時間が20時間であれば、20時間を超えた出力抑制時間分の損失額を補填してくれます。

例えば、年間の出力抑制時間が140時間(20日間、1日7時間)のとき、120時間分の損失額を補填してくれるのです。免責時間や免責抑制率は、設備規模によって変わることがあります。

補填

この他にも「出力抑制保険」は、提供会社によってさまざまな条件が付加されていることがあるのです。例えば、自然災害補償やメンテナンスサービスのオプションプランとして用意されていることも多く、そのようなサービスへの加入が申込みの必須条件となっている場合もあります。

また、補償金額に上限が設定されている場合もあります。このような補償条件や保険費用を整理して、補填金額のシミュレーションを行いましょう。

十分に費用対効果が見込めて安定収入につながるのであれば、出力抑制保険の活用を積極的に検討してみるのも良いでしょう。

(2)出力抑制の対象エリア内にある太陽光発電所は狙い目

出力抑制対象の設備は、常に売電不能のリスクがつきまといます。そのため、普通に考えると太陽光投資を始めたいと思っている購入者側からすれば、出力抑制の対象設備を積極的に購入しようとは思いません。

出力抑制対象外の案件と比較してしまうと、どうしても出力抑制の懸念があるため買い手がつきにくくなります。逆にいえば、買い手がつきにくい=売れ残る可能性があるということです。

これを逆手に取って、売れ残った掘り出し物の割安案件を狙うという選択肢が出てきます。すると、途端に出力抑制の対象設備は狙い目の案件になります。

初期投資が割安で済むので、出力抑制による売電損失のリスクを考慮しても、十分に高い利益率をキープできるでしょう。

関連記事:太陽光投資は超かんたん!?何も知らないド素人でも投資家になれた話

5.国も積極的に太陽光発電の出力抑制対策を検討している

日本は、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーを最大限活用しようという方針を打ち出しています。そのため国としても、出力抑制の頻度をできる限り抑えて、再生可能エネルギーを導入する機運を高めようと積極的な取り組みをしています。

検討されている出力抑制対策は、以下のようなものがあります。

検討されている出力抑制対策
蓄電池の併設による夜間売電の認可
地域間連系線の活用
火力発電所等の最低出力引き下げ

(1)太陽光発電所に「蓄電池を併設して夜間売電する行為」の認可

蓄電池を活用することで、出力抑制による損失をヘッジしようとする動きが最近注目されています。

本来は出力抑制によって損失するはずだった電流を、併設した蓄電池に充電して夕方以降に売電しようというモデルです。現状のルールでは、このように太陽光発電設備の設置後に蓄電池を併設、充電した電力を売電することは認められていません。

しかしながらこのモデルを採用すれば、これまで実質的に捨てられていた日中の発電した電気を、上手に有効活用することができます。再生可能エネルギーの最大限活用・導入に寄与するということもあって、このようなモデルを認可する向きで検討が進められています。

(2)地域間連系線の活用

例えば東京電力管内で電力が足りない、もしくは出力抑制まで十分余裕があるときに、東北電力で余っている電力を融通することができれば、東北電力で出力抑制をかけずに済みます。これが、「地域間連系線」の活用です。

これまで電力会社管轄内で発電した電気は、技術的な課題によって基本的にその管轄内でしか消費することができませんでした。そのため、需給のバランスが崩れても電力会社間で電力を融通し合うようなことはできなかったのです。

しかしながら、この技術的な課題がクリアになってきたことで「地域間連系線」の活用して、両電力会社間での電力融通をすることができるようになってきました。

①九州電力はすでに積極的に活用中

実際に九州電力では、この「地域間連系線」の活用を2017年以降から積極的に進めています。その効果によって、再生可能エネルギーの送電可能量がもともと45万kWだったところ、2018年度末までに135万kWと約3倍まで増加できる見込みが立っています。

これだけ送電可能量が増えれば、出力抑制を相当程度削減できると期待されています。

(3)火力発電所等の最低出力引き下げ

出力抑制は、優先給電ルールに従って火力発電所から順次抑制がかかります。太陽光発電は、火力発電等の発電所の出力抑制で対応しきれない場合に出力抑制の順番が回ってきます。

しかしながら、先行で出力抑制のかかる火力発電等の電源でも最低出力が最大出力の50%〜80%と、いまだに抑制率が低いのが現状です。この最低出力を引き下げれば出力の抑制幅が広がり、結果として太陽光発電の出力抑制の頻度を抑えられます。

九州電力では、複数の発電所で30%以下までの引き下げを計画しており、今後は他の電力会社でも同様の検討が始まるでしょう。

6.太陽光投資を始めるなら「出力抑制」の状況確認は必須

「出力抑制」は、需給のバランスを保って停電を発生させないために必要な制度でした。しかしながら、太陽光投資においては売電不能による利益率の悪化を招く要因となります。エリアや設備規模によって実施状況が異なり、今後もその状況が変わる可能性は十分にあり得ます。

太陽光投資を始めるにあたっては、必ず出力抑制の最新状況を確認して、のちのち後悔しないよう十分なリスク把握と適切な準備をしておきましょう。

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