2019.04.07 Apr
更新日時:2020.02.23 Sun
日射量から発電量を算出!太陽光発電のセルフシミュレーション法
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太陽光投資を始めるときには、投資案件の比較や収益性の有無を判断するために、必ずシミュレーションを行うことになります。事前に考慮すべき項目は、発電量と収益の2つです。
発電シミュレーションは年間の発電量を算出する作業を指します。
一方で、収益シミュレーションは売電収益と費用からどの程度の利回りになるのかを算出します。
では、なぜ自分でシュミレーションをすることが重要なのでしょうか?
1つ目に、業者が算出する利回りの見積もりが甘いことがあるからです。シュミレーションで用いるパラメーターの1つに損失係数というものがあります。損失係数とは太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換される際のロスの程度を示します。この値は定数ではなく、条件によって変化するため、甘い見積もりでは比較的高く設定されています。妥当性の高いシュミレーション結果を得るために、ご自身でも計算できることが大切です。
2つ目に、リスクについて把握するためです。日射量は月や年によって変動することがあるため、理想的な運用ができた場合だけでなく、日射量が少ないケースでの運用結果を把握することが大切です。業者の算出では前者ばかりが強調されていることもあるので、予想通りに行かない可能性がどのくらいあるのかを知っておくことは不可欠と言えるでしょう。 本記事では、読了後にご自身でシミュレーションを行えるようになっていただくことを目指して、計算の手順や考慮すべき事柄を解説します。
目次
1.日射量から太陽光の年間発電量を求める計算式
太陽光発電の発電シミュレーションは複雑で難しそうだと思っていませんか?
実は、発電シミュレーションは意外と単純で簡単です。たった3つの基本となる数値を押さえれば、発電量を計算できます。
その基本となる数値は、以下の通りです。
シミュレーションに必要な3つの要素 |
システム容量 |
日射量 |
損失係数 |
この3つの数値を掛け合わせるだけで、1日の発電量を簡単に計算することができます。年間発電量を求めるためには、以下のような計算式になります。
「システム容量 × 日射量 × 損失係数 × 365 = 年間発電量」
システム容量とは「発電設備の最大出力」を指します。例えば、ある発電所のシステム容量は、それを構成するパネルの出力の理論値の合計になります。
日射量は「特定の地点における光の強さ」を示します。この値は過去の観測データを元に算出されます。
損失係数は「エネルギー変換の過程で生じるロスの程度」を表します。太陽光発電施設は、光をすべて電気に変えられるわけではありません。必ずロスがあります。数値は温度などの条件によっても変動しますが、平均するとおおむね73%程度と考えられています。
この3つの数値の中で、特に大きく変動するのは日射量です。北海道など緯度の高い地域は日照時間が短いため日射量は少なく、逆に鹿児島など緯度の低い地域では日射量は多くなるのです。つまり、日射量を正しく把握することが、収益性を正しく算出するために非常に重要なります。
一方で、日射量は地域によって数値が大きく変わります。北海道など緯度の高い地域は日照時間が短いため日射量は少なく、逆に鹿児島など緯度の低い地域では日射量は多くなるのです。
そのため、年間発電量は日射量によって大きく左右されることになります。そして、この年間発電量とFITの買取価格を掛け合わせることで、年間の売電収入額を算出することができます。
つまり、日射量を正しく把握することが、収益性を正しく算出するために非常に重要になってくるのです。
年間発電量がわかれば、あとは下記の計算式にあてはめることで、年間の売電収入額を算出することができます。
(年間発電量)×(買取価格)–(運用費用)=(収益)
ただし、ここで得られた収益に対して所得税がかかるほか、発電所を開発した土地にも固定資産税がかかる場合があるため、実際の利益はここからさらに税金が引かれた額となることに注意してください。
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2.日射量から太陽光の発電量を求める2ステップ
実際に、NEDOのサイトから日射量をもとめ、発電量を算出するまでのステップをご紹介していきます。
(1)NEDOのデータベースで対象地域の日射量を算出
日射量の算出には、NEDOの日射量データベース閲覧システムを使います。NEDOとは、新エネルギー・産業技術総合開発機構のことで、国立研究開発法人の1つです。
再生可能エネルギーを始めとした、さまざまなエネルギーに関する研究開発がNEDOで行われています。では早速、システムにアクセスしてみましょう。すると、日本地図の画面が表示されます。
まずはじめに、この画面で日射量を算出したいエリアを選択していきます。エリア選択は、日本地図をクリックして絞り込むこともできますし、日本地図の右側のエリアのリストから選択することもできます。
また、日本地図の下にある「住所検索」や「施設・地名検索」ボタンで選択することもできます。この3通りのいずれかの方法から、エリアを選択しましょう。
エリアが選択できたら、画面右下の「この地点のグラフを表示」ボタンをクリックしましょう。すると、グラフの画面が表示されます。
このグラフは、1か月あたりの日射量しか表示されていません。1日あたりの日射量を出すためには、より細かく指定を行う必要があります。
(2)1日あたりの日射量の算出と正確な年間日射量の算出
まずは「表示データ選択」のボックスで、「角度指定」を選択します。
すると、その下の「角度指定データの表示種類」ボックスがアクティブになります。「任意の指定」を選択して、設置する傾斜角と方位角を選びましょう。
方位角は、その下にある「傾斜角、方位角操作盤」ボックスでも変更することもできます。
ここまで入力すると、グラフの形状が以下のように変わっています。
グラフ中に、1年間の日射量を平均したときの1日あたりの日射量がプロットされており、この値に365をかけることで、選択したエリアの年間日射量を算出することができます。
一連の画像:NEDO「日射量データベース閲覧システム」から引用
【補足】発電ロスを求めて発電量の精度を高めよう
太陽光発電において発電ロスはつきものです。そのため発電シミュレーションを行う際には、損失係数を用いて発電ロスによる発電量の低下を考慮する必要があります。
太陽光発電における発電ロスには、以下のようなものがあります。
- パネルの温度上昇による変換効率低下
- パワーコンディショナの変換ロスや配線ケーブルの伝達ロス
①太陽光パネルの温度上昇による発電効率の低下
一般に発電に最適なパネル温度は25℃で、1℃上昇するごとに出力が0.5%低下すると言われています。そのため、太陽光発電が最も発電するのは夏季ではなく、日射量が多く比較的涼しい5月前後です。
太陽光発電協会JPEAの表示ガイドラインでは、結晶系シリコンの補正係数は以下のような参考値が示されています。これを見れば、気温の影響を受けるため季節ごとに補正係数が変わっていることがわかります。
出所:JPEA「表示ガイドライン」
②パワーコンディショナでの変換ロス・ケーブルでの伝達ロス
太陽光パネルで発電した直流電流をパワーコンディショナで交流電流に変換する際にも、変換ロスが発生します。近年のパワーコンディショナでは95%前後の変換効率の製品が多いため、これにより5%前後の損失があることになります。
また、発電した電気が配線ケーブルを流れる際にも、電気が熱として逃げることで少しずつロスが発生してしまうのです。
この他にも、パネルの汚れや影の影響など、発電ロスに繋がる要素はさまざまなものがあります。そのようなロスすべてをまとめて、太陽光発電協会JPEAの表示ガイドラインでは、およそ70%〜80%の発電量になると明示されています。
このような発電ロスをシミュレーションに反映することで、精度をより高めることができます。
3.実例を元に計算!太陽光の発電量シミュレーション
それでは、実際に具体例を挙げつつ、発電量を算出してみましょう。
<モデルケース>
所在地 | 宮崎県宮崎市 |
システム容量 | 48kW |
データ観測地点 | 宮崎県宮崎 |
アレイ傾斜角 | 30° |
方位角 | 真南 (0) |
売電価格 | 18円/kWh (税抜き、2018年度) |
損失係数 | 0.75 (75%) |
まず、データ観測地点とアレイの傾斜角、そして方位角の条件をNEDOの日射量データベースに入力します。すると、年平均の1日あたりの日射量は4.36kWh/㎡となりました。
出所:NEDO「日射量データベース閲覧システム」
損失係数は、JPEAのガイドラインから0.75とすることにします。これで、発電量を算出するために必要な3つの数値がすべて揃いました。年間発電量を求めるためには、以下の計算式を使用します。
損失係数は、JPEAのガイドラインから0.75とすることにします。これで発電量を算出するために必要な3つの数値がすべて揃いました。年間発電量を求めるためには、先ほどご紹介した、以下の計算式を使用します。
(システム容量)×(日射量)×(損失係数)× 365 =(年間発電量)
計算式に3つの数値を当てはめると
(システム容量 48kW)×(日射量 4.36)×(損失係数 0.75)× 365 = 57290.4kWh
年間発電量を、57290.4kWhと求めることができました。このときの年間の売電収入は、売電価格18円を掛けた103万1,227.2円、消費税分をプラスすると113万4,349.9円になります。
これで、ここから費用を差し引いたものが利益になります。もし設置するエリアを変える場合は、日射量の数値を変更するだけです。
経済産業省「平成 31 年度以降の調達価格等に関する意見(案)」によると、2018年における10-50kWのシステム費用の平均値が28.7万円/kWであるため、今回のモデルケースの設置費用は、システム容量48kw×28.7=1377.6万円となります。
FIT制度終了以降も同水準の売電価格で推移すると仮定した場合、費用の1377.6万円を年間利益の113.4万円で割ると12.1となり、約12年で全ての設備代を回収することができるとわかります。
関連記事:【太陽光投資Q&A】曇り・雨天など悪天候時の発電量はどうなの?
4.運用を始めたあとの日射量計測方法
実際に太陽光発電設備を稼働させ運用を始めたあとは、日射計という計測装置を使って日射量を計測することができます。
日射計には、全天日射計、直達日射計、散乱日射計の3種類があります。
(1)全天日射計
装置の上面にあるガラス窓がドーム状になっており、降り注ぐ光を180°に渡って取り込むことができます。取り込んだ先に、熱電素子や光電素子を用いた受光部で日射量を計測します。
全天日射計は日射量の合計を測定できるというメリットがあるため、最も一般的に使用されています。デメリットとしては、太陽の角度や方位による誤差を生じることがある点です。10万円から40万円程度で販売されています。
(2)直達日射計
細長い筒状の装置で、中心にある穴の内部を通過した太陽光を熱電素子などで計測します。装置は直線的に太陽光を捉える必要があるため、太陽の追尾機能を備えています。そのため、全天日射計よりも高価かつ大きな装置です。
メリットは太陽から来る日射のみを観測できる点です。一方、デメリットはパネルに入射する合計の日射量を見積もることができない点です。20万円から50万円程度で販売されています。
(3)散乱日射計
全天日射計に、遮蔽ボールや直達日射計を組み合わせた日射計です。散乱日射計では180°から入ってくる光量に対して、太陽から直線的に入射する光量を引いた値を測定することができます。つまり、太陽の方向以外から入ってくる光量を見積もることができます。
日射量を正確に計測するためには、太陽光パネルに同じ角度で設置することが望ましいです。このとき、日射計の影が太陽光パネルにかからないように配慮する必要があります。
また発電量はパネルの状態によっても変化します。発電量をキープするために定期的なメンテナンスを心がけるようにしましょう。
散乱日射計のメリットは太陽の方向以外からの光の影響を測定できることです。一方、デメリットはパネルに入射する合計の日射量を見積もることができない点です。価格は直達日射計と同じく、20万円から50万円程度で販売されています。
5.太陽光発電投資を始めるなら一度はセルフチェックを
ご自身でのセルフチェックを通じて、適切な検証を行いましょう。
スマエネでは、実際の事例紹介やセミナーの開催を通じて、太陽光発電投資の利回りや収支計算についての知識を発信しています。
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