2019.04.30 Apr
更新日時:2019.09.11 Wed
業者任せはNG!野立て太陽光発電の「架台」について徹底解説
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太陽光パネルやパワーコンディショナは、性能や設置方位が発電量に直接影響を与えるため業者の方に注文や意向を伝えることが多いです。
しかしながら、架台は業者任せになっていないでしょうか? 確かに太陽光パネルやパワーコンディショナの性能も重要ですが、架台の設備設計が甘ければ、長期運用に設備が耐えきれずに故障や事故につながってしまいます。
架台について正しく理解をして、最適な架台設計をすることで、安定した発電事業の運用を行いましょう。本記事では、産業用太陽光で一般的な「野立て架台」について解説を進めていきたいと思います。
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目次
1.「野立て架台」は産業用太陽光における主流の設置方法
産業用太陽光で使用される架台にはいくつか種類がありますが、その中で最も一般的なものが「野立て架台」です。住宅用太陽光は、限られた面積の住宅屋根へ設置するため、太陽光パネルの枚数も限られてしまいます。
一方の産業用太陽光は、できるだけ多くの太陽光パネルを設置して発電量を増やしたいので、ある程度の面積を持った土地を用意して太陽光パネルを設置することが多いです。
ただ、太陽光パネルを干物のように地面に置くだけでは風で飛ばされてしまいますので、地上設置型の「野立て架台」を使って設置をします。野立て架台は、太陽光パネルに角度をつけて設置できるので、発電効率を上げられます。
「野立て架台」以外で産業用太陽光に使われる架台は、以下のようなものがあります。
野立て架台以外の架台一覧 | |
折板屋根架台 |
倉庫や工場などの屋根によく使われている「折板」という屋根材に対して、専用の金具を用いて太陽光パネルを設置します。 屋根面積が比較的広いため、太陽光パネルを多く設置できます。 |
陸屋根架台 |
マンションの屋上などのコンクリート屋根に太陽光パネルを設置する際には、陸屋根架台を使用します。 基本的な構造は野立て架台と近いですが、建物に設置するために軽量化や耐風圧を考慮した専用設計になっています。 設置位置が高いところになるので、構造物の多い市街地でも影の影響を受けにくいというメリットがあります。 |
水上設置架台 |
貯め池などへ太陽光パネルを設置する際に用いられ、水上に浮く架台です。 水上のため、太陽光パネル冷却効果を見込め発電効率が高くなります。 |
野立て架台に比べると、上記のような設置方法はユースケースが少なくなります。
(1) 野立て架台は大きく分けて2つから構成されている
野立て架台は、大きく分けて2つの部材で構成されています。1つが「架台」本体、そしてもう1つが「基礎」です。
野立て架台の設備設計においては、この架台本体と基礎の選定が非常に重要なポイントとなります。架台本体は、棒状の金属部材を縦と横に組み合わせて構成されます。
こうした特徴を持っていることから、この金属部材のことを「縦レール・横レール」「縦桟・横桟」ともいいます。野立て架台は完成した状態で納品されるわけではなく、この「縦レール・横レール」といった部材単位で納品されるのです。
そのため、現地でボルトや接続金具を用いてレールを組み立て、野立て架台を作り上げていきます。そして、「架台」本体において何より重要なのは「材質」です。
もう1つの構成部材の「基礎」は、架台本体を地上に固定することを目的とした部材です。基礎については、後の章で詳しく解説していきます。
(2)野立て太陽光発電における架台本体の材質は3種類
太陽光発電は、屋外で運用する構造物です。その運用期間は、20年以上にもなります。つまり、野立て架台は20年以上もの長期間、野ざらしで風雨や雪、砂塵などの自然環境にさらされ続けるのです。
そのため、架台に用いられる材料は必然的に長期的な耐久性に優れる金属になります。さらに金属材料の中でも、架台本体によく使われている材料は主に以下の3種類です。
- スチール
- ステンレス
- アルミニウム
金属であるがゆえに、天敵となるのは「錆び」です。
そこで、それぞれの材質の特徴を錆びへの強さ(耐食性)と費用面の観点で、1つずつ見ていきましょう。
①スチール
いわゆる「鉄」です。3つの材料の中で、最も価格が安いのが特徴です。一方で、強度は強いものの耐食性がないため、3つの材料の中では最も錆びやすい材料となっています。
錆びの発生を抑えるために、溶融亜鉛めっきやZAMといった表面処理を行って耐食性を高めることが多いです。
②ステンレス
正式名称は「ステンレススチール」で、「SUS(サス)」と略されることもあります。日本語でいうと「鋼」や「鋼鉄」です。
英語の意味がステンレス(錆びない)スチール(鉄)であるように、スチールに別の元素を加えて優れた耐食性を持たせた材料です。水筒やキッチンや自動車のエンジンなど、耐食性や耐久性を求められるものに広く使われています。
ただしその分、コストは高くなります。
③アルミニウム
「アルミ」と略されることもあります。身近なところでは、1円玉やジャンボジェットなどに使われており、優れた耐食性と軽量であることが特徴の材料です。スチールやステンレスに比べても圧倒的な軽さを持つため、現地での施工性に優れています。
また、材料を溶かせば再利用できるので、撤去費用を抑えられます。費用は、スチールよりも高くなります。
以下の表は、材質ごとの特徴をまとめたものです。
材質 | スチール | ステンレス | アルミニウム |
強度 | ★★★ | ★★★ | ★★ |
耐食性 | ★ | ★★★ | ★★★ |
重量 | ★ | ★ | ★★★ |
コスト | ★★★ | ★ | ★★ |
どの材質を選ぶかは費用との相談になりますが、長期間安定した発電を行う上では耐食性に優れ、錆びにくいステンレスやアルミニウムをおすすめします。
2.基礎工法によって費用と強度に差が出る
「基礎」が担う役割は、架台本体を地面に固定することです。基礎がなければ、地面の揺れや風が吹いて力が加わるだけで架台は倒れたり、パネルが飛んでいってしまう事故を引き起こします。
いってみれば基礎は、架台本体と地面を離れないようにするための画鋲と思っていただければ良いでしょう。意外と知られていませんが、実は住宅にも野立て架台と同じように基礎があります。
住宅も地面に建設をしていきますが、工程は建設前の基礎工事から始まります。まさしく家造りの土台となるのが、基礎なのです。
太陽光発電においても、基礎は野立て架台の土台となる重要な要素です。「基礎」には、大きく分けて以下の2つがあります。
野立て架台の基礎2タイプ |
コンクリート基礎 |
杭打ち基礎 |
この2つの基礎の中でも、いくつかの工法があります。どの基礎工法にするかによって、かかる費用はもちろん、設備の強度も変わってきます。
それぞれの「基礎」工法について、その特徴を解説していきます。
(1) コンクリート基礎
コンクリート基礎とは、その名の通りコンクリートを用いた基礎です。優れた強度と耐久性を持ち合わせていますが、一方でコストが高くなります。また、現地でコンクリートを固めて施工をする必要があるため、基礎工事に時間を要します。
主要なコンクリート基礎の工法は、以下の3種類があります。
コンクリート基礎の工法 3種類 |
布基礎 |
ベタ基礎 |
置き基礎 |
基本的にどの工法も、コンクリートブロックにアンカーボルトという金具を用いて、架台をコンクリート基礎に接続・固定していくことになります。3つの工法で大きく異なる点は、使うコンクリートの量です。
①コンクリート基礎の工法:布基礎
布基礎は、凸字形状のコンクリートが地面に埋め込まれた状態になる基礎のことです。「独立基礎」ともいいます。
施工方法は、まず地面を掘って作った空間に生コンクリートを流し込み土台を作ります。その土台の上に型枠を作って、さらに生コンクリートを流し込むことで凸字形状の基礎が完成します。
イメージ的には、弓矢の矢じりが近いかもしれません。矢じりの返しのように、抜こうとしても最初の土台部分が土地に引っかかり抜けにくくなります。布基礎はコンクリートの量を抑えながら、ある程度の強度と重量を確保できる工法なので、コンクリート基礎の中で最も多く採用されている工法です。
②コンクリート基礎の工法:ベタ基礎
ベタ基礎は、完全に1枚もののコンクリートで基礎全体を作る基礎のことです。「連続基礎」ともいいます。
施工方法は単純で、必要な面積の型枠を用意して生コンクリートを流し込むだけです。基礎全面がコンクリートで十分な重量があるので、布基礎よりも大幅に安定性が増します。
一方で、使用するコンクリートの量が多くなるので費用はかなり高くなります。
③コンクリート基礎の工法:置き基礎
置き基礎は、既成品のコンクリートブロックに架台を固定して設置する工法です。「サイコロ基礎」ともいいます。
既成品を調達するだけですので、工事にかかる時間や費用を大幅に抑えられます。また、撤去時にも設置以前の状態へ復元しやすいというメリットもあります。
一方で、重量を稼ぐことが難しいため、安定性には懸念が残る工法です。
(2)杭打ち基礎
杭打ち基礎とは、棒状の金属部材を杭として用いる基礎のことです。ただ単に、杭基礎と呼ぶこともあります。
イメージ的に近いのは、画鋲やテントのペグではないでしょうか。対象物を下地に打ち付けることで固定ができます。コンクリート基礎と比べて、比較的安価で設置前の状態に戻すことが容易です。
一方で、強度的にはベタ基礎には及びません。主要な杭打ち基礎は、以下の2種類です。
杭打ち基礎の工法 2種類 |
単管杭 |
スクリュー杭 |
単管杭とスクリュー杭では、杭を打ち込む方法が異なります。
①杭打ち基礎の工法:単管杭
単管杭は、単管形状の杭を地面に打ち込むことで架台を組み立てます。
単管パイプ架台という、単管杭自体を杭だけでなく架台本体としても使う架台もあります。
今回紹介する基礎の中で、最も安価に済ませることができる基礎です。単管パイプ架台であれば、農地でのソーラーシェアリングなどに適しているでしょう。
しかしながら、強度面では最も弱い基礎ですので、あまりオススメできません。
②杭打ち基礎の工法:スクリュー杭
スクリュー杭とは、ネジ付きの単管杭を基礎として使う工法です。グランドスクリュー杭と呼ばれることもあります。ネジやボルトをイメージしてみると、わかりやすいかもしれません。
ネジやボルトでドライバーが必要なように、スクリュー杭は専用の重機を使わなければ打ち込めないという制約条件がありますが、ねじ込んで設置されるため優れた強度を有します。
ただ、地盤の弱い土地には設置しにくいので注意が必要です。
3.基礎は土地と架台をつなぎとめる重要な部材
野立て架台の強度設計は、架台本体と基礎の両輪で成り立っています。架台本体がどれだけ優れた強度を有していようとも、基礎の強度が十分でなければ太陽光発電設備の故障や事故につながります。
ではなぜ、基礎の強度が重要なのでしょうか。その答えが、基礎が土地と架台をつなぐ部材だという点にあります。
(1) 基礎で大切な指標は「引き抜き強度」
架台本体の強度設計で重要なのは、パネルの重量に耐える強度であることと、パネルが強風で飛ばされないよう架台に固定することです。
一方で、基礎の強度設計で重要なのは、強風で基礎が抜けることにより架台が壊れるのを防ぐことなのです。野立て架台は、角度をつけて太陽光パネルを一面に設置します。
そのため、野立て架台の下には空間ができ、強風が吹くと以下の図のようにその空間へ入り込みます。
そして、一面に敷き詰められた太陽光パネルが風の受ける面となり、上方向に強い力が働きます。このとき、基礎に十分な重量がある、もしくは地面を強く捉えていれば架台は飛んでいきません。
強風への耐性のことを耐風圧といいますが、この耐風圧の性能は基礎がどれだけ地面から抜けにくいか、に依存しています。この地面から抜けにくさを表した指標が、基礎の「引き抜き強度」です。
正月に飛ばすタコと同じ要領です。強い風が吹くと、タコが上に引っ張られる力が強くなります。
それを、手から紐が抜けないように力を込めます。この手に込める力こそが、基礎の「引き抜き強度」です。野立て架台では、太陽光パネルの重量を架台本体で支えながら、強風でも基礎が抜けないような強度設計が必要になります。
(2)引き抜き強度は「地盤の強さ」に依存する
引き抜き強度は、地盤をどれだけ捕まえておけるかが重要になります。逆にいうと、地盤にある程度の強さがなければ引き抜き強度を確保できません。
ケーキにろうそくを刺すときに、生クリーム部分に差しても倒れてしまうのと同じで、基礎もしっかりとした地面に設置する必要があります。地盤の強さを正確に確認するためには、専門の業者に依頼して地盤調査をする必要があります。
地盤調査には、「スウェーデン式サウンディング(SS)試験」や「引き抜き試験」があります。土地探しをしているときに、不動産業者へ周辺地域の地盤の強さについて確認しておいても良いでしょう。
また、地盤調査は地盤沈下のリスクについても把握できるというメリットもあります。太陽光発電設備自体の重量で地盤が沈下し、架台が倒れてしまったという事例もありますので、合わせて確認することをオススメします。
4.野立て架台で注意すべき3つのポイント
野立て架台の設備設計では架台の材質と基礎選びが重要ですが、それ以外にも注意すべきポイントが3つあります。
注意すべきポイント3つ |
雑草 |
積雪 |
施工不良 |
それぞれが及ぼす影響と、その対策を見ていきましょう。
(1)太陽光発電所周りの「雑草」は定期的なメンテナンスで防ぐ
地面に直接設置する野立て架台は、雑草による影響が小さくありません。雑草を放置すると、伸びた雑草が太陽光パネルへ影を作って発電量を低下させたり、配線へ絡みついてショートさせるなどの問題を招きます。
このような雑草による悪影響を防ぐためには、定期的なメンテナンスを行い雑草を除去していく必要があります。主なメンテナンス手法としては、草刈りや除草剤の散布、除草シートの設置などがあります。あるメガソーラーでは、除草対策としてヤギを放牧して雑草を食べてもらうというユニークな例もありました。
また、架台の設備設計でも雑草対策を取ることができます。たとえば、基礎工法をベタ基礎にして架台下をコンクリートで覆う、野立て架台の柱を高くすることで雑草から遠ざけるといった工夫を施すことで、雑草による影響を受けにくくすることができます。
関連記事:草刈りを怠ると発生する6つの問題!どう対処すべき?
(2)「積雪」はアレイ角度と柱高さを意識して回避する
降雪量の多いエリアに設置する場合は、積雪による影響も考慮に入れなければなりません。積雪によって引き起こされる主な影響は、太陽光パネルが雪で覆われることによって発電量が低下すること、そして架台が雪の重さに耐えられずに潰れてしまうことです。
その最大の対策は、なるべく太陽光パネルに雪が積もらないようにすることです。具体的には、アレイ角度をつけることで降り積もる雪を地上に落とします。少なくとも15°〜20°、可能であれば30°〜40°程度の角度をつけることで、太陽光パネルへの積雪を防げます。
実は、積雪対策でもう1点注意すべきなのが柱高さです。パネルから滑り落ちた雪は、パネル下にどんどん積もっていきます。すると、その雪がパネルの最下部まで到達してしまって、パネルから雪を落とすことができなくなってしまいます。そうならないためには、架台の柱高さを上げておく必要があるのです。
降雪エリアの施工業者であれば、このような積雪対策に慣れていますので、相談をしながら進めていきましょう。
(3)「施工不良」は現地立会いで目を配る
施工業者はプロですが、施工品質には業者によって大きくバラつきがあります。産業用太陽光は設置場所が遠方になることが多いため、どうしても目が届きにくくなり、手抜き施工などで施工不良が発生することがあるのです。また、ケーブルの配線など、引き渡し後に細かい部分が気になることもあるでしょう。
そのため、定期的に現地立会いをして、施工の様子を見守ることをオススメします。オーナーの目があれば、業者も手を抜きにくくなります。相手はプロなので、あまり施工に関して口を出しすぎるのは良くありませんが、施工の様子を見守ることで安心感も得られます。
5.長持ちする野立て架台は材質と基礎選びから!
「架台」は、太陽光パネルを設置するときには欠かせないものです。しかし、太陽光パネルやパワーコンディショナの影に隠れて、架台は二の次になりやすい傾向にあります。
そのため、どうしても設備設計は業者任せにしてしまうことが多いでしょう。もちろん、専門性の高い強度設計や施工法などはメーカーや業者にお任せする必要があります。
しかしながら、野立て架台においては架台の材質や基礎選びなどオーナーが意思を持って選択すべき要素もあります。
どれだけ効率の良い太陽光パネルやパワーコンディショナを揃えようとも、架台の強度が足りなければ太陽光発電設備は長期運用に耐えきれません。縁の下の力持ちとして、野立て架台に安定した発電を支えてもらえるような設備設計を行いましょう。
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