事前の対策必須!野立て太陽光発電に関するトラブル一覧

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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太陽光発電投資を検討するにあたって、利益がでるかどうかが最も重要なポイントですが、その他にも思いがけないリスクがあることを知っておく必要があります。


太陽光発電設置の際に予想外のリスクとなるのが、近隣住民とのトラブルです。これは、あらかじめ予想されるトラブルに対処しておくことで、そのリスクを避けられます。


とくに野立て太陽光発電は、近隣住民への配慮が欠かせません。


今回は、野立て太陽光発電のトラブルの事例、そして対処法をご紹介していきます。

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1.野立て太陽光発電の景観に対する近隣住民からの苦情

パネル

まず、近隣住民からの苦情の代表的なものは、太陽光発電設備の景観に対する苦情です。自宅の屋根に乗せる程度であれば、普段は目に留まることもなく気にならない人も多いでしょう。

しかし、野立て太陽光発電の場合は、更地や休眠農地、使途の決まっていない宅地などを利用して土地に直接設置されます。比較的規模も大きくなる傾向にあり、嫌でも視界に入ります。その景観自体を不快に思う人もいるということです。

どんなケースがあるのか具体的に見ていきましょう。

(1)景観が野立て太陽光発電所により破壊される

郊外の山林地、農業地帯、自然が豊かな田舎の土地では、四季折々の美しい自然が地域を彩っています。それら自然が繰り広げる美しい景観を、心から慣れ親しみ愛する人も多いでしょう。

そんな地域にて、ある日突然、大量の太陽光発電設備が山や畑、紅葉や花々の美しい景観を妨害したとすれば、近隣住民にとって衝撃的な事態となり得ます。これは、近隣住民の立場に立ってみれば実に共感できる話です。

しかし、自然エネルギーである太陽光発電が人々に与える恩恵は大きいことも事実で、ここに今後の課題ともいえるある種のジレンマが存在するのです。その地域にて、太陽光発電設備がどのような影響を周囲に与えるのか事前に考慮することが欠かせません。

現段階では、特にこのような問題を規制する法律はなく、どちらとも正しい立場にあるため判断できかねる状況です。自治体も含め、近隣住民との事前の相談が重要なポイントとなるでしょう。

参考:ソーラージャーナル「景観破壊か融和か 太陽光発電と近隣住民の関係は?

(2)メンテナンスを怠ることが問題となる場合もある

景観に対するトラブルとして、太陽光発電を設置した土地のメンテナンスを怠ることで生じるケースもあります。雑草などが生い茂ったり、雪や雨の影響から泥水や枯れ木などが溜まってしまったりと景観に害を与える場合です。

これらのケースであれば、単純に土地のメンテナンスを定期的に行うことで、周囲への悪影響も緩和できるでしょう。

(3)太陽光パネルの反射による光害

また、太陽光発電の反射光がトラブルの原因となる場合もあります。ここで、太陽光パネルの反射による光害について理解しておきましょう。

太陽光パネルから反射する光は、直視できないほど非常に眩しく熱いため、周囲からのクレームになる場合があります。

  • カーテンを日中でも開けられない
  • 部屋の温度が異常に高くなった
  • 反射光が眩しすぎて、車の運転に支障がある
  • 反射光から熱中症や眼科系の病気になった

実際にこのような反射光光害が原因で、姫路のメガソーラーを対象とした裁判沙汰が起きたケースもある程です。日経XTECHでは、当時の訴訟について詳しく解説しています。

参考:日経×TECH「「メガソーラーの反射光で熱中症!?」、姫路訴訟のてん末

そこで事前に知っておきたいことは、設置された太陽光パネルすべてから反射光が生じるわけではないということです。パネルの向きや角度、周囲の環境などに大きく左右されるため、あらかじめパネルを設置する前に、試験的なシミュレーションが必要になります。

(4)野立て太陽光発電所が発する「電磁波」が悪影響だと指摘される

次にトラブルになりがちな要素とは、太陽光パネルから発生する電磁波です。電磁波は一般的には健康によくないものとして、中には電磁波を異常に嫌う人もいます。

電磁波とは、電気が流れるもの(電気を使うもの)から発生される、目には見えないエネルギー波のことです。大まかに3つのレベルに分かれています。

  • 静電磁界→全く電磁界がない状態
  • 低周波電磁界→周波数が低い状態
  • 高周波電磁界→周波数が非常に高い状態

電磁波とは正確には電磁界と呼ばれるもので、詳しくは以下のように分類されています。

電磁波

出所:JEIC電磁界情報センター

確かに、高周波の電磁波になると人体に悪い影響を与える可能性はあるのですが、反対に全く電磁波がない状態も人体に害を及ぼすことが実証されています。

例えば、人が生きていくために必要不可欠な太陽の光にも、電磁波は含まれているのです。そして、人体に安全とされる電磁波の周波数はガイドラインによって規定されており、すべての機器や設備はこの規定に沿って測定されています。

つまり、ガイドラインの規定値よりもはるかに低い周波数の電気設備、電気製品しか製造・販売できないようになっているのです。電磁界情報センターが公表する資料「太陽光発電システムから発生する静磁界及び商用周波数磁界」からも、ICNIRPのガイドラインによる規定を超える電磁波は、太陽光発電所から検出されていないと分かります。

2.近隣住民による野立て太陽光発電のトラブルを防ぐには?

それでは、実際に野立て太陽光発電で投資を行う際に、近隣住民とのトラブルを防ぐにはどのような方法があるでしょうか。

(1)野立て太陽光発電のトラブルのパターンを把握しておく

まず、最も大切なことは、設置を行うオーナー自身がどのようなトラブルの可能性があるかを熟知しておくことです。そして、そのトラブルに対して、論理的にかつ誠意をもって対処できるよう、知識や倫理観が必要となります。

(2)野立て太陽光発電所を建てるエリアの事前調査も重要

次に大切なことは事前調査です。設置前に、その地域にて近隣住民からの賛同が得られるかどうかを調査することで、未然にトラブルを防ぐことになります。そのためにできることは、近所へのあいさつ回りです。

(3)野立て太陽光発電所のメンテナンスを怠らない

そして、もう1つのトラブル予防策は、設備の敷地内の定期的なメンテナンスを怠らないことです。

太陽光発電投資を検討する際には、利回りや購入するメーカーなどを第一に重視してしまいます。いざ、設置後にトラブルにあって初めて、メンテナンスや周囲への影響をほとんど考えていなかったと後悔する人が多いようです。

しかし、一般的には素人にできる判断・対策には限界があります。そこで必要となるのが太陽光発電業者の存在です。

(4)野立て太陽光発電所のトラブル予防は業者選びが重要

長年の実績と経験を有する業者であれば、近隣住民によってどのようなトラブルが生じやすいかを十分に把握しています。

トラブルの原因となる要素を理解している業者であれば、設置前に事前に自治体へ確認したり、近隣住民へ挨拶をしたり、周囲に迷惑をかけない最適な設置方法を考案したりと手抜かりがありません。

事前に考えられるリスクをきちんと説明してくれる業者を選びましょう。また、設置後のメンテナンスや万が一のサポートも、そのような業者であれば安心です。

太陽光発電には、決して少なくない資金がかかります。多額の資金を払うからこそ、長い目で信頼して任せていける業者選びが欠かせないのです。

3.災害による野立て太陽光発電のトラブル一覧

太陽光発電投資を始める際には、近隣住民によるクレームだけではなく、災害によるトラブルも考慮しておくことが大切です。災害による設備のダイレクトな被害だけでなく、その被害から近隣住民の不満を加速させてしまう場合もあります。

平成30年度の西日本豪雨や台風、北海道東部地震の際に、太陽光発電の事故報告は計48件でした。台風21号の被害が最も多く23件、次に豪雨による被害が19件ありました。

では、実際に災害による野立て太陽光発電のトラブルにはどのような種類があるのか、具体的に見ていきましょう。

(1)豪雨による土砂崩れで野立て太陽光発電所が大破

豪雨時には、浸水や土砂崩れによるパネルやパワーコンディショナの損傷が多く挙げられています。

下記の情報は、平成30年度7月の姫路市における、豪雨に伴う事故例です。

土砂崩れ

出所:経済産業省「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について

①事故の原因

姫路市における豪雨時の降水量は、2日間で平均降水量の約2倍となっていました。さらに、数日前から継続していた降雨により土壌に雨水が流れ込み、崩壊しやすい状態となっていたことが原因だとされています。

しかし、もともと施工前の現地調査にて、湧き水が確認されるなど極めて不安定な状態であったことが確認されています。そこで、排水施設を設置したり、大型ブロックを施工するなど対策が施されていました。

②事故後の対策

設備の崩落後、パネルの飛散対策を行ったことで、台風を複数回経験しながらも2次災害へは至らなかったようです。

現状では、パワーコンディショナとパネルは土砂に埋まったままで、復旧に際して複数の業者へ適切な対処法を確認している段階です。

もしかすると、地理的な要素に無理があったのではないかとも考えられています。

(2)台風による暴風で野立て太陽光発電所が損壊・発火

もう1つ、大阪市の台風21号に伴う事故の事例を見ておきましょう。沿岸部は特に強風によってパネルが飛散、またその他の飛散物によってパネルが破損するケースが多く見られています。

台風

出所:経済産業省「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について

①事故の原因

台風21号の被害に関しては、強風が設計上の最大風速を大幅に超過したことが最大の原因だといわれています。つまり、自然災害はときとして予測を遥かに超える強大な破壊力を持つ場合もあるのです。

一概に過去のデータだけで推測することは不可能でしょう。

②事故後の対策

まずは応急処置として飛散したパネルの撤去、パワーコンディショナを解列し、全面的に運転が停止されました。現在でも撤去作業は完全には終了していません。

パネル、架台などの取り換え工事は、風圧対策を取ったうえでの復旧が重要だと判断されています。

しかし、自然災害が相手となれば、予防対策にも限界があるのは否めないでしょう。

(3)災害による野立て太陽光発電のトラブルを防ぐためには?

これまで紹介したように、自然災害が起きた場合は人間の力ではどうすることもできない場合も考えられるのです。

ただ、土地によってはやはり災害時にも強い地形、弱い地形があります。

例えば、敷地内の法面が被害を受けた場合は、ほぼ等しく設備にも被害が出ている傾向にあります。法面とは設備を設置する基礎部分に隣接している傾斜面のことで、この部分に不安要素がある場合は注意が必要です。

図

表

出所:経済産業省「今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について

このように、万が一に備えて災害の被害を受けにくい土地を厳選していくことが重要なポイントになるでしょう。

①施工工事の技術

さらに注意しておきたいのは、施工をどの業者に任せるのかということです。

災害時にパネルやパワーコンディショナが強風・豪雨などから影響を受けたとしても、施工工事が高度な技術によって施されている場合は、被害も最小限に抑えることが可能になります。

②サポートが充実した業者を選ぶ

問題があって初めてわかることでもありますが、被害を受けた際のサポートが充実している業者かどうかの見極めも肝心です。

また、メーカー保証が通常はついていますが、自然災害に対応できないものが多くなります。保証期間、保証内容についても必ず事前に確認するようにして下さい。

③損害保険への加入は必須

災害の被害から自身の資産壊滅や損害金から身を守る方法として、損害保険へ加入しておく方法があります。

太陽光発電設備を保証できる保険の種類は、以下の通りです。

  • 火災保険
  • 地震保険
  • 動産総合保険
  • 賠償責任保険
  • 休業補償保険

万が一のときに備えておけば安心もできます。それぞれの保険会社や保険プランによって補償内容も様々ですので、各自の状況に合ったものを選ぶことが大切です。

4.悪徳業者による野立て太陽光発電のトラブル一覧

詐欺

ここまでご説明してきたように、近隣住民とのトラブルや災害時のトラブルを考慮するならば、業者選びが重要であることが分かりました。とくに、悪徳業者には注意する必要があります。どんなに注意していても、つい言葉巧みに悪徳業者に騙されてしまう人も少なくありません。

では、悪徳業者によるトラブルにはどのようなケースがあるのか確認しておきましょう。

(1)高価格な売電権利を販売するも未着工が続く

最近では、すでに設置済の太陽光発電が売買されることも多くなっています。物件によっては、売電価格が40円ぐらいの高価格で契約できるものもあります。基本的にこのような物件は、土地や設備だけでなく売電権利も含めて取引きされることになります。

しかし、利益を期待して売電権を購入したのに、蓋を開けてみると問題だらけだったという場合もあり得るのです。

その売電価格ならと慌てて購入したところ、いつまでたっても稼働工事が着手されない、その土地が放置されたまま雑草が生い茂っている、災害時に破損された立地条件の悪い物件が出回るなどのケースが挙げられています。産経新聞でも、太陽光発電、売電権の売買におけるトラブルが多数報告されているので、参考までにどのようなケースがあるのか見ておきましょう。

参考:産経新聞「工事が中断…手付金を払えど施設はできず 完成物件も問題続々

(2)実体のない太陽光発電所の所有権を分割販売

また、実体のない太陽光発電所の所有権を分割販売する悪徳業者もいます。このような業者の手口としては、来年から稼働を開始する太陽光発電があり、分割にてその設備の所有権や売電権を購入しないか、といったものです。

パネル1枚単位で購入することが可能で、比較的に低額でも購入できることから、購入者の数も拡大しやすい傾向にあります。

しかし、実際にはその業者がいうような太陽光発電設備は存在しないのです。つまり架空の太陽光発電所の所有権を購入したに過ぎないわけです。当然、予定されていたキャッシュバックや分配金などは入ってきません。連絡がこちらから取れないことや、稼働予定の発電所であるというのが悪徳業者の大きな特徴となっています。

平成26年度には、このような手口を使った「株式会社アイコン」について注意喚起する記事が公開されています。

参考:消費者庁「設備認定を受けただけで実体のない太陽光発電所の所有権を分割販売する「株式会社アイコン」に関する注意喚起

(3)悪徳業者による野立て太陽光発電のトラブルを防ぐためには?

では、悪徳業者による野立て太陽光発電のトラブルを防ぐには、どのようにすればいいのでしょうか。

悪徳業者に対する予防策をいくつかご紹介します。

①業者の所在地・実績を確認

まずは基本的なことになりますが、その業者の所在地・実績を調べることが第1段階です。住所、電話番号、代表者名、そして、どのような実績を持つ業者なのかを正確に調べましょう。

今は会社のHP、法人登記情報、Googleマップなどで、業者の実体や実績を簡単に調べられます。どんなに検索しても情報が提示されない業者には注意しましょう。また、詐欺の疑いがある口コミが投稿されていないかも調べておきましょう。

②見積りや物件情報に不明点が多い

悪徳業者の特徴として多いのが、見積り内容や物件の情報が曖昧であるという点です。何にいくらの費用がかかるのか、どのような太陽光発電所なのか、詳細を必ず確認するようにして下さい。不明点が多い業者は注意する必要があります。

他にも注意すべき点をまとめておきましたので、参考にして下さい。

  • 太陽光発電の基本的な仕組みを理解しておく→怪しい業者の説明が見破れる
  • 固定買取価格の仕組みを理解しておく→怪しい売電価格が見破れる
  • 設備にかかる費用相場を理解しておく→無料でできるわけがない
  • 業者やメーカーは複数を比較する→今だけ、モニター価格、割引に惑わされない
  • 目で見て確認する→基本的に稼働予定物件は避けるようにする
  • 太陽光発電に適した土地を理解しておく→条件の悪い物件が回避できる

関連記事:5パターン!太陽光発電投資をやめた方がいいのはどんな人?

5.原因や傾向を知れば太陽光発電のトラブルは怖くない

今回は近隣住民によるトラブルを始め、野立て太陽光発電に関するトラブルをいくつか解説していきました。思いがけないリスクがあることを不安に思った人もいるのではないでしょうか。

自然災害や悪徳業者、近隣住民とのトラブルがあったとしても、共通していえることは事前に対処しておくことで、たいていのトラブルは軽減または回避が可能だということです。

最も恐ろしいことは、事前知識が皆無の状態で太陽光発電投資を始めることです。知らないままでいると、トラブルを招きやすい物件を自ら購入してしまう可能性も高くなります。考えられるトラブルの種類、傾向や原因さえあらかじめ把握しておけば、万が一の時でも怖れずに落ち着いて対処できます。

しかし、実際には素人が判断・対処していくには限界があることも事実です。そのことからも、業者選びはとても重要なポイントになります。

ぜひ、今回の記事を野立て太陽光発電投資を行う際に参考にして頂ければ幸いです。

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