専門家に丸投げしない!太陽光投資家も「杭打ち」について学ぼう

今野 彰久

著者 今野 彰久

スマートエネルギー事業部の部長です。
自身でも太陽光投資をしているため、投資する方の目線でのご紹介を得意としています。

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投資家の方の中には「杭打ちの基礎は本当に20年間、大丈夫なのか?コンクリ基礎のほうが安心なのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。


こういうことは専門的な分野なので、ほとんどの場合は企画・販売会社や施工会社にお任せしがちです。しかし、投資家自身に知識があれば、こういった一抹の不安が解消され、自信を持って購入・運用ができます。


このページでは、現在の主流となっている「スクリュー杭」による杭打ち基礎にスポットを当てて、詳しく解説をします。

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1.太陽光発電施設における建設の主流となった「杭打ち基礎」

パネル

太陽光発電による固定買取制度がはじまった当初では、コンクリートの基礎に支柱架台を固定する方法がもっぱらでした。それからほどなく、スチール(鉄)製の大きなドリルのような杭打ち基礎の発電施設をあちこちで見かけるようになりました。

そして、太陽光発電が活況を迎えた今日では、この「杭打ち基礎」が野立て太陽光発電の主流となり、全国に広く普及しています。これほどの普及率を見る限り、かなりメリットがある資材だと捉えても良いでしょう。

しかし、いくらスクリュー杭を使った基礎工事が主流といえど、粗悪な杭や適さない土地で使用すると、後々のメンテナンスに膨大な費用がかかってしまう恐れがあります。

そのような事態を回避するためにも、購入前に基本的な知識を理解しておくことは、投資家にとって大事な務めだといえるでしょう。

2.太陽光発電施設に使われる杭の種類・特徴

スチール製の杭にはいくつかの種類があり、太陽光発電建設のピークが過ぎたといわれている今でも、国内外の資材メーカーが新製品の販促を進めています。

そんな中、主に使用されている杭資材は、大きく「スクリュー杭」「鋼管杭」「H鋼杭」の3種類に分けられます。

(1)太陽光発電施設に最も使用される「スクリュー杭」

現在、野立ての太陽光発電施設で最も使用されている杭資材。別名「グランドスクリュー杭」とも呼ばれます。

杭の先端からドリルのようなツバが加工されており、地表に押さえながら回転させれば地中に刺し込むことができます。杭の全長はメーカーにもよりますが、120~300cmまでと幅広く、土地の形状や土質にあわせることが可能です。

全長の約半分がスクリュー加工されており、防錆対策として全体に亜鉛メッキが施されています。

(2)スクリュー杭では対応できないとき利用される「鋼管杭」

丸鋼管を架台として使用する場合に用いられるスチール製の杭。

筒状のロケット型で杭の頭を手打ちハンマーや、バックホウ専用のアタッチメントで強打し、地中に垂直に打ち込みます。全長60cm~4mまでのラインナップ(主に受注生産)があり、太陽光発電だけでなく幅広い用途に使用されています。

引き抜き強度は、丸鋼管を打ち込んだ時の強度と比べ約2.5倍と高く、スクリューが差し込めないような難地盤でも打ち込めるのが特徴です。

(3)最も頑丈だが高コストな「H鋼杭」

大型建築物の小柱や梁などに用いられるH型鋼を、太陽光発電の杭基礎として利用するものです。専用のアタッチメントを設置した大型のバックホウでH鋼を垂直に打ち込みます。

H鋼そのものが肉厚で重量もあるため、頑丈さでは3種類の中では一番ですが、材料費や施工費のコストが高いことがウィークポイントです。

3.良いスクリュー杭・悪いスクリュー杭の見分け方

では、野立て用の杭打ち基礎として、最も利用されているスクリュー杭に焦点を絞り、詳しく見ていきましょう。

全国的に出回っているスクリュー杭の大半は、中国で生産されたものです。中国製だからといえど、国産に劣らず高いクオリティの製品ばかりです。しかし中には粗悪なものもあり、仕入れ業者や施工会社を困らせているといった話もよくあります。

そこで、高品質なスクリュー杭と粗悪なスクリュー杭を見分ける主なポイントを挙げてみました。

(1)杭の肉厚は重要なチェックポイント

筒状のスクリュー杭は、その厚みが厚ければ厚いほど強度がアップします。一般的なスクリュー杭の厚みは、外径が76Φのものであれば、およそ2.5~3mmです。この範囲の厚さがあれば、ほとんどの場所で十分な強度が保持できるのです。

しかし、中には仕様書で2.6mmと記載してあるにもかかわらず、2mm以下のものが納品され、地中に打ち込む際の抵抗に耐え切れずに引きちぎれてしまうケースもあります。

そのようなトラブル防止のためにも、少々面倒ですが、納品されたスクリュー杭はできる限り検品することをお勧めします。

(2)しっかりと溶融亜鉛メッキが施されているか?

ほとんどの場合、施工後のスクリュー杭の約3分の2は土中に埋まっている状態です。スチール製である以上、腐食による劣化は免れません。特に地表との境目の部分は腐食しやすいため、もし何らかの防食措置が施されていなければ、錆によってボロボロになり強度不足になってしまいます。

そこでチェックしたいのが、杭全体にしっかりと溶融亜鉛メッキ(通称ドブメッキ)が施されているかということです。たっぷりとメッキ加工されているものであれば安心です。

稀に、一部メッキが剥がれている場合もあります。そんな時は、市販されているエポキシ系の防錆塗料を塗るなどの対応をすると良いでしょう。

(3)杭が変形したりスクリューのツバが欠けていないか?

よく見られる粗悪品に、微妙に変形した杭や、スクリュー部分のツバが欠けているものがあります。目視では分かりにくい変形でも、回転させながら打ち込むと容易に発見できます。くれぐれも施工会社には、そのような杭は使用しないように確認しておきましょう。

また、スクリュー部分のツバが欠けているものも使用は控えるべきです。多少のツバ欠けで打ち込み作業に支障がなくても、引き抜き強度に大きく影響するためです。

4.スクリュー杭のメリットとデメリット

杭打ち基礎にスクリュー杭をチョイスすることで、得られるメリットはたくさんあります。

しかし、その反面ではデメリットも。メリットとデメリットをきちんと理解した上で、採用もしくは不採用を決定すれば、長期的な運用もきっとうまくいきます。

比較

(1)スクリュー杭のメリット

スクリュー杭には、以下のようなメリットがあります。

①材料や施工コストが安価

国産のスクリュー杭はやや割高。中国製であれば、他の基礎資材に比べてかなりコストが抑えられます。また容易に施工できるため、他の工法と比較すると工事費も安価です。

②施工スケジュールが短縮できる

例えば、コンクリート基礎と比較した場合、スクリュー杭を用いた杭打ち工事は、約1/3の工期で済みます。

③土地の造成コストを抑えられる

たとえ用地に多少のデコボコした起伏があっても、まっ平らに造成する必要はありません。なぜなら、杭の打ち込み深度を調整することで、天端のレベル(水平)がとれるからです。

④撤去作業が容易でリサイクルが可能

売電期間が終了した後も逆回転すれば容易に撤去できます。また、オールスチール素材なのでリサイクルが可能。廃棄コストが大幅に削減できます。

(2)スクリュー杭のデメリット

汎用性が高く一見すると万能に思えるスクリュー杭にも、以下のようなデメリットがあります。

①地中に障害物があると打ち込めない

地中に大きな石や岩、木の根っこなどがある場所には、スクリューが入っていかないため打ち込めません。その場合は障害物を取り除くか、杭打ちの位置を変えなければなりません。

②砂状やぬかるんだ土地ではNG

真砂土のようなサラサラした砂状の土地や、ぬかるんだような軟弱地盤。または地下に坑道など空洞があるような土地では、十分な引き抜き強度が保持できないため使用できません。

③腐食が進行しやすい

オールスチール製なので、錆による腐食は免れません。特に沿岸部などでは、塩害が懸念されるため、採用に対して慎重になるようです。

5.杭打ち基礎に適した太陽光用地とは?

メリットを見る限り、スクリュー杭の杭打ち基礎はすべてに勝るような印象を受けますが、一方でデメリットも気になります。デメリットの要素はどれも土地に絡む内容です。スクリュー杭の特徴や施工方法を考慮すると必然的に適した用地が見えてきます。

以下に、スクリュー杭を使った杭打ち基礎に適した土地をまとめてみました。

  1. 赤土や粘土質などの土地で土壌がしっかり締まった土地
  2. 障害物(岩・砂利・瓦礫・木の根など)が埋設されていない土地
  3. 坑道などの空洞がない土地
  4. 水はけが良い土地
  5. なるべく沿岸から離れた土地

(1)太陽光用地の地盤調査は必須

適した用地に刺したスクリュー杭は、地中のツバによって引張強度が保持されており、逆回転させなければ容易に引き抜くことはできません。しかし、緩い地質に刺し込んでしまうと引き抜き強度が十分に保持できず、最悪の場合は杭ごと架台が倒壊してしまう恐れがあります。

そのため、スクリュー杭に適した土地であるかを確認するために、専門の調査会社に地盤調査を依頼することが必須となります。調査会社は、その土地の土質や引き抜き強度をボーリング機を用いて検査します。

調査する地点数は多いほど良いですが、通常50kWの発電所の面積であれば4地点程度が目安です。強度は「N値」と呼ばれる単位で報告され、N値が4~7がスクリュー杭に適した用地とされています。

(2)傾斜地でも杭基礎は可能なのか?

スクリュー杭は、平坦な土地ばかりでなく傾斜地においても多くの施工実績があります。今は、支柱架台との接合部にも様々な種類があり、容易に施工できるように工夫されています。

関連記事:「太陽光用地」とは?太陽光投資に向いている場所選びのポイント4つ

6.杭打ち工事に必要な道具と施工方法について

スクリュー杭を地中に打ち込むには、特殊な道具が必要です。

また、基礎の施工精度が低いと、架台やパネルの設置にも影響をおよぼしてしまいます。見栄えが悪くなるだけでなく、後々のメンテナンスにも響いてしまうため、設計や施工には高度な技術が求められます。

オーガ

出所:E-テックス「滋賀県高島市 産業用太陽光発電所を建設中(造成⇒スクリュー杭打ち)」

(1)専用アタッチメント「オーガ」

スクリュー杭の打ち込みには、「オーガ」と呼ばれるバックホウ専用のアタッチメントが必要です。オーガにセットしたスクリュー杭を地表に対して垂直に立て、回転速度に合わせてゆっくりと押し込みながら打ち込みます。

(2)測量機を使った墨(位置)出し作業

杭打ち工事を開始する前には、必ず杭を打ち込み位置をすべて出さなければなりません。この作業を「墨出し」、もしくは「位置出し」と言います。

トランシットと呼ばれる測量機を使い、設計図通りの打ち込み位置にマーキングしていくのです。杭打ち施工の段取りにおいてもっとも大切な作業です。

(3)重機での打ち込み工事

バックホウに取り付けられたオーガにスクリュー杭をセットして、押し回転させながらゆっくりと刺し込んでいきます。途中で何度か垂直を確認しながら進めていきます。

土質や打ち込み深度にもよりますが、施工時間は1本あたり数分程度。慣れた職人であれば1日に100本以上の施工も可能です。

(4)正確に天端の高さを合わせて仕上げる

スクリュー杭の打ち込み深度は、通常「オートレベル」と呼ばれる測量機を使って決めていきます。

オートレベルを使うと、杭の天端を一定に揃えることができるため、起伏がある土地でもキレイに仕上げることができるのです。杭の天端がキレイに揃うと、ずらりと並んだパネルのラインが波打たずに、一直線に通って見えます。

7.太陽光発電にもちいるスクリュー杭の耐用年数は?

速度表

出所:亜鉛めっき鋼構造物研究会

スクリュー杭の耐用年数は、溶融亜鉛メッキの膜厚と、杭を打ち込んだ土壌の条件によって変化するので一概にはいえません。ただ、ほとんどのスクリュー杭はJIS規格「2種55」という種類の溶融亜鉛メッキが施されています。

実は「2種55」は、塩害が心配されるような過酷な環境下でも耐えうる高品質のメッキ。「亜鉛めっき鋼構造物研究会」によると、海岸地域で使用した場合の耐用年数が45年と公式に発表されています。

8.初期投資を低コストで抑えるならスクリュー杭の選択は欠かせない

野立て太陽光発電において、基礎工事における常識とさえいわれるまでに普及しているスクリュー杭。初期投資をできるだけ抑えたい投資家にとっては、ありがたい基礎資材です。コスト以外にも多くのメリットがあるので、優先的に検討することをオススメします。

ただし、土地の条件次第では不向きな資材であることを、くれぐれも念頭に置いておきましょう。

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