2019.06.29 Jun
更新日時:2019.09.13 Fri
太陽光発電の定期点検はどうして必要なの?役割や費用感を解説
------------------------------------------------------------------------------------------------
太陽光発電設備を稼働させるうえで、定期点検は必須となっています。定期点検をしないと、売電収入が低下したり、大きな損失を出すリスクが生じたり、設備認定を取り消されてしまうことすらあるのです。
今回は、なぜ定期点検をしないと、このような事態が起こるのかについて説明していきます。あわせて、定期点検のチェック項目や点検するときの注意点、便利な遠隔監視システムなどについても紹介していきます。
目次
1.太陽光発電の定期点検はどうして必要なの?
太陽光発電設備に定期点検が必要な理由は、以下3点あります。
- FIT法で義務付けられているため
- 発電量を維持するため
- 災害などによる事故を防ぐため
ここでは、それぞれの理由について、詳しく説明していきます。
「太陽光発電所のメンテナンス・運用経費は、どのくらいかかるのだろう?」という疑問は、シミュレーションシートを使えば一目で分かります。
「物件を探す」から価格・利回り・立地を入力すれば、各物件のシミュレーションを閲覧できるので、本記事とあわせてご参照ください。
[su_button url=”https://sma-ene.jp/property_search/” target=”blank” style=”soft” background=”#ef8585″ size=”10″ center=”yes” icon=”icon: check-square-o” onclick=”‘ga(‘send’, ‘event’, ‘search_click’, ‘contents’, ‘type1’);'”]スマエネで物件を見てみる[/su_button]
(1)FIT法により定期点検が義務付けられているから
定期点検が必要な一つ目の理由は、「FIT法(固定価格買取制度)」によって義務付けられているからです。FIT法により、設備認定を受けた太陽光発電設備は、発電した電気を電力会社に固定価格で買い取ってもらえます。
FIT法が制定されたのは2012年ですが、当初は定期点検が義務付けられていませんでした。当時は、太陽光発電はメンテナンスの手間があまりかからないという認識だったのです。しかし、実際にはメンテナンスをしないことが原因で、発電量が下がったり、事故が起こるなどの報告が多数寄せられるようになりました。
これを受けて、2017年にFIT法が改正されました。改正FIT法では、太陽光発電事業者に、事業計画の提出と保守点検の義務が課せられています。太陽光発電の事業者は、設備の保守点検や維持管理にかかわる事業計画を策定し、提出しなければなりません。
これは、改正FIT法が施行される前に太陽光発電投資をしていた事業者も同様です。事業計画を提出しなかった事業者は、設備認定を取り消されます。認定を受けた後でも、適切な保守点検がされていないと見なされれば、設備認定を取り消されるおそれがあります。
また、太陽光発電事業者は設備の保守点検や維持管理の事業計画を保管し、求めに応じて点検のレポートも提出しなければなりません。
(2)長期的に太陽光発電所の発電量を維持するため
先ほど説明したとおり、定期点検は太陽光発電事業者の義務です。しかし、仮に義務がなかったとしても、定期点検は太陽光発電事業者にとって必須だといえます。なぜなら、定期点検をしないと、肝心の発電量が減ってしまうからです。
例えば、太陽光パネルに何か問題が起こった場合、その部分は発電ができなくなるため、発電量が落ちてしまいます。定期点検をしていればパネルの問題にすぐ気付けますが、何もしていなければ問題が発生したことにも気付けません。気付くまでの期間が長ければ長いほど、損失額も大きくなってしまいます。
そのため、義務の有無にかかわらず、定期点検は必要なのです。
(3)火災や暴風によるパネル飛散を防ぐため
太陽光発電設備の点検が必要な理由は、まだあります。それは、災害などによる被害を最小限に抑えるためです。
2018年には、西日本豪雨や台風21号など、大規模な災害が複数発生しました。これらの災害によって被害を受けた太陽光発電設備の数は、50以上にものぼります。被害を受けた施設のなかには、10,000枚以上の太陽光パネルが破損したところもあります。
台風などの災害が起きた際に起こり得るのが、太陽光パネルの飛散です。暴風によってパネルが架台から引き剥がされ、飛んでいってしまうことがあるのです。飛散したパネルは民家に直撃したり、最悪の場合、人に当たってしまうことも考えられます。通常、災害が原因なら、飛散した太陽光パネルが人や物に被害を与えても、損害賠償が認められることはありません。
ただし、それは太陽光発電設備に問題がなかった場合の話です。点検やメンテナンスが不十分で、もともとパネルが架台から外れやすい状態になっていたのなら、災害によって第三者に被害が及んだ場合も、損害賠償を請求される確率は高いといえるでしょう。
何より、点検とメンテナンスをしっかり行えば、災害によって事故が起きても、設備や第三者への被害を最小限に抑えられます。
①定期点検を怠ると火災発生のリスクも
屋外に設置されている太陽光パネルには、ホコリや落ち葉、鳥の糞や虫の死骸など、様々な汚れがつきます。こうした汚れを発見し、パネルを清掃するのも定期点検をするべき理由です。
パネルについた汚れをそのまま放置していると、発電量の低下やパネルの故障、最悪の場合はホットスポットによる火災をも引き起こします。
汚れが付着した太陽光パネルは、発電ができなくなります。さらに送電もできなくなるため、その部分は電気抵抗となってしまうのです。電気抵抗となった部分は発熱し、パネルの故障や火災の原因になります。
そうならないためにも、太陽光発電事業者は設備の定期点検をして、汚れたパネルを清掃する必要があります。
関連記事:ホットスポットが太陽光施設に与える問題とは?どうすれば事故を阻止できるの?
2.太陽光発電の定期点検でチェックする項目
定期点検の必要性が分かったところで、実際のチェック項目や点検要領について見ていきましょう。定期点検のやり方は厳密に決まっているわけではありませんが、「一般社団法人電機工業会」と「太陽光発電協会」から、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」が出ています。
ここでは、このガイドラインに沿って、各箇所の点検項目について説明していきます。
(1)太陽電池アレイ、架台
「太陽電池アレイ」とは、太陽光パネルを直列、または並列に複数枚並べて架台に取り付けたものをいいます。太陽電池アレイと架台の点検項目は、以下のとおりです。
- 太陽電池モジュールの汚れ及び破損
- 太陽電池モジュールフレームの破損及び変形
- 架台・基礎の状態
- 太陽電池モジュール及び架台固定
- 周囲の状況
- 太陽電池モジュール及び架台の接地
- 防水処理
- 屋根葺材の破損
- 配線及び電線管の損傷
「太陽電池モジュール」は、太陽光パネルと同じ意味です。これらの点検は目視で行い、太陽光パネルに汚れや破損、変形などがないかチェックします。
また、架台の基礎がしっかりしているか、架台に変形や傷、さびや腐食などがないかも見ていきましょう。この部分がしっかりしていないと、災害時に架台ごと崩れてしまう危険があります。
災害時に飛散しないよう、架台と太陽光パネルがしっかり固定されているかもチェックしましょう。
(2)接続箱、集電箱
「接続箱」は、複数の太陽電池アレイが発電した電気を1つにまとめるための装置です。「集電箱」は、設備要領が数100kW以上の大規模な太陽光発電設備に設置される装置です。集電箱は、接続箱から送られてきた電気を集約して、パワーコンディショナに送る役割を持ちます。
接続箱と集電箱の点検項目は、以下のとおりです。
- 外箱の腐食及び破損
- 扉の開閉及び施錠
- 外箱の内部の状態
- 設置状況
- 配線の損傷
- 防水処理
- 内部機器の脱落
- 電線管の破損
- 端子台、内部機器のねじ緩み
- 開閉器の状態
- 接地の確認
- 対雷対策の確認(対策がある場合)
- 絶縁抵抗(太陽電池モジュール―接地間)
- 絶縁抵抗(接続箱出力端子―接地間)
- 接地抵抗
- 開放電圧
- I-V 曲線
接続箱や集電箱の点検は、目視および操作によって行います。外箱だけでなく、内部や配線まで、しっかり確認しておきましょう。
(3)PCS
「PCS」は「Power Conditioning System」の頭文字をとったもので、パワーコンディショナのことです。PCSの点検項目は、目視するものと測定するものに分かれます。それぞれの項目は、以下のとおりです。
①目視
- 外箱の腐食及び破損
- 設置状況
- 防水処理(屋外用の場合)
- 部品の落下
- 外部配線の損傷及び接続端子の緩み
- 接地線の損傷及び接続端子の緩み
- 電線管の破損
- 通気確認(通気孔・換気フィルタなど)
- 異常音など
②測定
- 絶縁抵抗(PCS 入出力端子―接地間)
- 接地抵抗
- 系統電圧の測定
各種測定については、知識がないとできないので、業者などに相談して行うといいでしょう。
(4)その他
太陽電池アレイや接続箱、PCS以外の箇所も点検が必要です。点検項目は、以下のとおりです。
- 機器の破損
- じんあい、油などの付着
- 操作部の状態
- 機器の過熱
- 設置状況
- 配線の損傷
- 端子台、内部機器のねじ緩み
これらはいずれも、目視と操作によって点検します。太陽光発電設備は、問題があるのが一部だけでも全体に大きな影響を及ぼします。そのため、細かい部分もしっかり点検しておきましょう。
(5)運転・停止
太陽光発電設備の各部分だけでなく、運転や停止がされるかの点検も必要です。運転・停止に関する点検項目は、以下のとおりです。
- 運転
- 停止
- 停電時の動作確認及び投入阻止、時限タイマー動作試験
- 自立運転
- 表示部の動作確認
これらの項目も、いずれも目視と操作によって点検します。細かい点検方法は太陽光発電システム保守点検ガイドラインの点検要領に記載してあるので、ガイドラインを読みながら点検を進めるといいでしょう。
(6)発電電力
売電時は、発電電力についてもチェックしましょう。発電電力の点検は、電力量計のメーターが正しく動作しているか目視するだけです。
3.太陽光発電の点検業務にかかる費用はどのくらい?
ここまでの説明で分かるとおり、太陽光発電設備の点検は非常に手間がかかります。さらに、太陽光発電設備が自宅から離れた場所にある場合、点検をしに行くのも大変です。
しかし、太陽光発電設備の点検は専門業者に外注することも可能です。点検を外注すればお金はかかりますが、手間がかからず不労所得のような形で売電収入が得られます。実際に、太陽光発電事業者のなかには、点検を外注している人もたくさんいます。
これから太陽光発電投資を始める方のなかにも、点検を外注しようと思っている方は多いでしょう。そこで気になるのが、点検費用がいくらかかるのかという点ではないでしょうか?
点検費用は業者によって違いますが、おおよその年間費用の相場としては「パネル容量×1,000円」ほどです。パネル容量100kWの太陽光発電設備なら、年間のメンテナンス費用は10万円ほどになると予想すれば良いでしょう。
4.オーナー自身が点検をするときの注意点
太陽光発電の定期点検を外注した場合も、不測の事態が起これば、自身で目視点検に行くこともあるでしょう。例えば、地震や台風などの直後は、設備が壊れていないか気になる人は多いはずです。
しかし、このような状況下で、何も知らずに点検に向かうのは危険だといえます。なぜなら、災害を受けた直後の太陽光発電施設には危険が多く、大けがを負ってしまうリスクもあるからです。
そこで、ここでは災害直後などにオーナー自身が点検をするとき、身の安全を守るために注意すべきポイントについて説明していきます。
(1)ヘルメットを着用する
台風などの後に太陽光発電設備の点検をする際は、必ずヘルメットを着用しましょう。まだ強風が吹いている場合、太陽光パネルが自分に向かって飛んでくる危険があります。
また、すでに風がやんでいても、引き剥がされたパネルが架台の上に残っていて、何かの拍子に降ってくるかもしれません。このように、災害後に太陽光発電設備を点検する際は、頭にパネルが直撃するという最悪のケースも想定して、ヘルメットを着用しておきましょう。
(2)絶縁性のある手袋を身に付ける
災害後に太陽光発電設備を点検する場合、ヘルメットだけでなく、絶縁性のある手袋も付けておきましょう。
先ほども説明したとおり、台風などの後は、太陽光パネルが架台から引き剥がされ、飛散する場合があります。パネルが敷地内に散らばっている場合には、自分で拾うこともあるかもしれません。
太陽光パネルは架台から外れても、太陽の光が当たれば発電します。つまり、飛散したパネルには電気が通っている可能性があるのです。
通電しているパネルにそのまま触れれば、感電してしまいます。そうならないためにも、絶縁性の手袋は必須です。
(3)作業をするときは2人以上で赴く
災害発生時以外でも、点検作業を自分でする場合、現地には2人以上で行くようにしましょう。点検のついでに芝刈り機を使って除草する場合は、なおさらです。
芝刈り機は素人が使うと、うっかり自分の足を切ってしまう危険があります。基本的に、太陽光用地には誰も入ってこないため、助けを呼んでくれる人がいなければ危険な状況になってしまいます。
そのため、1人だけで作業をしに行くのは控えたほうが賢明です。
5.異常を発見できる遠隔監視システムの導入も要検討
太陽光発電設備が問題なく稼働しているかどうかチェックするには、「遠隔監視システム」の利用が便利です。
遠隔監視システムとは、パソコンやスマホなどを使って、24時間365日、離れた場所から太陽光発電設備の発電量をチェックできるシステムです。遠隔監視システムは、急に発電量が下落したなどの異常が発生した際、メールで知らせてくれるので、事業者は迅速な対処が可能になります。
先ほども説明したとおり、設備に問題が起きたとき、すぐに気付けなければ、損失額がどんどん大きくなってしまいます。こうした損失を防ぐためにも、遠隔監視システムは、太陽光発電投資に必須だといえるでしょう。
遠隔監視システムの導入には、本体代金と運用費用がかかります。遠隔監視システムの本体代金は、システムや販売店によって異なりますが、20~30万円程度です。
年間の運用費用は非公開のところも多いのですが、代表的なサービスである「みえるーぷ」は年間30,000円、「ひだまりeyes」は年間36,000円(2019年6月執筆時点)となっています。
6.産業用太陽光発電を運用するなら定期点検は必須
太陽光発電投資をする事業者は、しっかり定期点検をしないと、以下の事態が起こり得ます。
- 発電量と売電収入の低下
- 災害発生時の設備の被害拡大
- 設備認定の取り消し
これらは、どれも太陽光発電投資をするうえで、避けねばならない問題です。特に、設備認定を取り消されてしまったら売電ができないため、投資を始めた意味がなくなってしまいます。
そればかりか、設備の設置や購入に使った費用が無駄になり、大きな損失を負ってしまいかねません。そうならないためにも、太陽光発電投資を始める方は事業者としての責任を持って、定期点検はしっかりと行うようにしましょう。
新着物件
太陽光のプロに無料で相談!
ご検討は「何でも」お気軽にお問い合わせください
太陽光発電投資に関心を持っている方でこれからはじめようか検討している方にオススメの太陽光発電の完全マニュアルです!
・他の投資との比較
・なぜ投資会社は自分で買わないの?
・太陽光投資のメリットデメリット
・太陽光投資の流れ など
率直で、わかりやすいコトバで太陽光発電の基礎をしっかり理解して、お客様のより良い投資ライフにお役立てください!
物件のことならおまかせください!